邦画ブラボー

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「雲ながるる果てに」

2006年04月11日 | ★人生色々な映画
桜の季節に「同期の桜」を聞いた。

特攻隊基地で出撃を待つ学徒兵たちの姿を描く。

50年に松竹を退社したのち、
独立プロを設立した家城巳代治監督の作品。

国を思う気持ちでいっぱいの若き特攻隊員は純粋でいいやつばかり。
上官たち(岡田英次・神田隆)は心無く冷たい人間として描かれている。

「今日はどのくらいの的中率かな」「あいつらは腕が未熟だからな」
「なあに。特攻はいくらでもいるさ」

そんな台詞を端正な顔で悠々と喋る岡田英次を
これほど憎たらしいと思ったことは
私の映画鑑賞人生にはなかった!

天候不順のために、心ならずも隊員たちは
しばしの猶予が与えられる。

「雨降って 今日一日を生きのびる」

深見中尉(木村功)は腕を負傷したため
笠原中尉(沼田曜一)ら仲間を見送り
心中はおだやかではなかった。

台詞のひとつひとつが耳につきささってくる。

「なあ俺たちは地獄に行くのかな、それとも天国か」
「お国のために死ぬんだから天国だろう」
「いや、人を殺して死ぬんだから地獄だ」「俺は絶対天国に行くぞ」

木村功が雪の降る故郷の思い出を語ると
(小さな時計屋の居間。優しい母親山田五十鈴が餅を焼いている)
あたり一面粉雪が舞い降りてくるようだ。

回想シーンをはさむなんて酷い。

親友の大瀧中尉(鶴田浩二)もまっすぐな眼をした男の中の男だ。
両親や幼馴染が面会に来ると聞いて子供のように喜び、庭駆け回るのだが、
汽車が着く直前に出撃命令が下ってしまうのだった・・

歓喜から絶望へ。急転直下。
絶句するほどのメリハリの利かせ方もまた酷い。

便所に行ってくると言って部屋を出た大瀧は
林の中で慟哭したあと、湖に飛び込み水しぶきをあげて泳ぐ。
深い悲しみと生命の輝き、若さの爆発が感じられていい場面だった。

その一部始終をひとり見ていた深見(木村功)は
包帯をかなぐり捨て自分も出撃させてくれと上官に頼み込む。

出撃の用意をし始めた深見の様子をいぶかった仲間、
「お前何をしてるんだ!」
「俺もみんなと一緒に死にたいんだ」
「やめろ、死ぬのは俺たちにまかせろ」「俺も貴様たちと死にたいんだ」

カツゼツが良すぎて哀しすぎるぞ木村功と鶴田浩二!
見つめ合う瞳が美しすぎるぞ~~!

絶妙なタイミングで流れる「同期の桜」
もはや私の涙は防波堤突破!怒涛のように流れるにまかせる。

間に合わなかった両親への手紙を読む大瀧の声でこの映画は終わる。

「お父さん、お母さんあと一時間の命です・・・・・・
いつまでも長生きしてください・・
身長・・何尺何寸、体重何貫目!大瀧中尉、きわめて健康!」
きわめて健康ったって・・アンタ・・

日付は昭和20年4月16日。

これほどまでに痛ましく残酷な映画もなかなかない。

そういえば石原慎太郎さん脚本、
特攻の母を題材にした映画がクランクインしたと聞いた。
気にはなるが、もう泣くのは嫌だ~。

監督 : 家城巳代治 脚本 : 八木保太郎 家城巳代治 直居欽哉
撮影 : 中尾駿一郎
美術 : 五所福之助 

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