邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「彼奴を逃がすな」

2006年04月03日 | ★ハードボイルドな映画
偶然殺人事件の犯人を目撃してしまったことから
若い夫婦の恐怖の毎日が始まる。

と、筋はいたってシンプルながら、
巧みな演出によって
最後まではらはらどきどきしながら見入ってしまう。

小さな洋裁店兼ラヂオ修理屋さんを開いている木村功と津島恵子夫婦。
ある晩、木村は店を仕舞う寸前に怪しい男の影を見る。
あくる日、向かいの店で殺人事件が起こったことを知るのだが・・

恐怖におののく夫婦を上手い二人が演じてリアリティがあった。
昭和30年代の商店街のたたずまい、
質素ながら
暖かい交流がある人々の暮らしが等身大に描かれていた。

チンドン屋が店の前をしつこくうろつくシーンが不気味。
ピエロってしばしば映画に出てくるけど
表情を掴めないだけに恐怖心をあおりますね。

宮口精二が冷酷な犯人役で土屋嘉男と志村喬が刑事役。
なんだか「七人の侍」を思い出して妙な気分だった。

細かな目の動きをとらえるカメラ、一瞬も目が離せない場面の連続。
終盤はドキドキが最高潮に達する。
面白かった!

1956年 鈴木英夫監督 脚本: 村田武雄 鈴木英夫
 撮影 :三浦光雄 音楽 :芥川也寸志  美術 :小川一男


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新藤兼人の「狼」

2006年04月01日 | ★人生色々な映画
身もふたも無い話を撮らせたら(書かせたら)
右に出るものがいない新藤節がここでも炸裂。

保険会社の外交員募集会場には様々な事情により
職にあぶれ、生活に困った男女が集まっていた。

原(浜村淳)、三川(殿山泰司)、
矢野(乙羽信子)、藤林(高杉早苗)、吉川(菅井一郎)もその中にいた。

会社のお偉方(東野英次郎・三島雅夫・小沢栄太郎)
の猛々しい訓示をおずおずと聞き、
昼食として支給された卵丼を遠慮がちにたいらげる・・・

「親類縁者に頼ってでも、石にかじりついてでも!
一軒でも多く契約をとりつけてきてください!」

彼らが向かうのは、高い保険に加入済みの裕福層ではなく、
新規契約が見込まれる一般の商店やサラリーマン家庭である。
生活は豊かではないので門前払いの連続だ。
契約成立は困難を極め・・にわか外交員たちはひとり減り二人減りしていく。

途方に暮れる5人の男と女はそれぞれに問題を抱えていた。

一件も契約を取り付けられず、切羽詰った彼らはとうとう、、、
「強盗でもやりますか」
夏のじりじり暑い昼間、ついに決行!

新藤監督の容赦ない演出でひとりひとりの不幸が
「これでもか!これでも足らんか!」とばかりに暴かれていく。

全員共通しているのは極貧の生活環境なのだが、
一番悲惨なのは障害を持つ息子の手術費のために加わる乙羽信子だ。
貧しい家で一人健気に留守番し、回らない舌で唄う息子。むせび泣く母。

くく・・・暗すぎるよう。

最悪の経済状況ではこんなに善良な人たちも
悪事を働かざるを得なかったのか!とまで、
観客を有無を言わさずひっぱっていく。(おいおい・・)

とことんまで行くのが新藤兼人なのである。

心ならずも悪事を働き、
つかの間の金持ちになった彼らがその夜取った行動は
見るものの涙を絞りつくすだろう。
あまりのことに開いた口がふさがらないかもしれないが。
とにかく、とことんいくのです。

羊のように弱い彼らが、集団で狩をする「狼」と
報道されてしまうのも皮肉であった。

結末も追い討ちをかけるように激辛です。
菅井一郎が演じるのは元売れっ子の脚本家。
新藤自身を投影しているのかも。

哀れすぎる話に、
もうやめて~と思いながら最後まで見てしまうのはなぜだろう。

1955年 監督 :新藤兼人 脚本:新藤兼人 撮影:伊藤武夫 
音楽:伊福部昭 美術: 丸茂孝

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おかげさまでじりじりと・・ありがとうございます