邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「黒猫館に消えた男」

2006年11月13日 | ★恐怖!な映画
古びた洋館に光る稲妻!
嵐の夜、暗い階段に何者かの影が!

にゃ~~!!
黒猫の鳴き声と叫び声が轟き
お膳立ては揃ったところで登場したのが、
ガウン姿の益田喜頓

ホラー仕立ての
コメディばりばりか?・・と思ったら
宮城まり子が歌って踊る歌謡ショーでもあった。

叫び声を聞いて現れた白衣姿の宇津井健が喜頓を
「亡霊?気のせいですよ」となだめるが、
ビーカーやフラスコの中で色水(!)が
意味無く沸きたっている実験室に戻るや、
異様な気配を感じて今度は自分が必要以上に取り乱し
いきなり引き出しから取り出したピストルを発砲するのを見て
それからの波瀾の展開はある程度予想がついてしまった。

予感どおり
喋りながらいきなり卒倒する爺さんや
おどろおどろしい召使など次々奇人?が登場、
宇津井健はマントをかぶって神出鬼没の透明人間に変身するわ
そこへ宮城まり子の歌謡ショーがはさまるわで
しっちゃかめっちゃかの筋運びであった。

可笑しいのは、
ゴブラン織りのソファに気取って座った
宇津井健と益田喜頓の前に
謎の老婆が祈祷していたり、
宮城まり子が
フリルつきの着物を着て踊ってみたり、
芸者が乗り込んできたりするなど、
洋風の中にいわゆる「和風」がいやおう無しににじみ出てしまうところ
非日常と下世話な日常、よそ行きと普段着が
ごちゃごちゃに同居しているところ。

颯爽とした刑事役で若き丹波哲郎が出演している。

丹波さんといい、宇津井健といい、
こんな頃から芝居の世界にいたのだなあと
妙なところに感動してしまった。
だって、ちらりと映った東京の街はまだ土ほこりが舞い立つ有様。
自動車もまばらでまるで北●鮮のように
閑散としており、まことに隔世の感があったのです。

*映画の中のイイおんな*
宮城まり子:「ねむの木学園」の園長さんとして有名に
なったけど、歌って踊れる和製ミュージカルスターでもありました。
えくぼが印象的で、童女のようにも見え、
愛くるしいっていうんでしょうか?
独特の魅力がありますねえ。
吉行淳之介が惚れたのもわかるようなわからんような。

1956年 新東宝
監督  毛利正樹
脚本  村山俊郎 法勝寺三郎
撮影 友成達雄
音楽   渡辺浦人
美術 進藤誠吾

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木下恵介番組感想

2006年11月08日 | ★TV番組
木下恵介特集、
「二十四の瞳」「陸軍」
「日本の悲劇」「衝動殺人:息子よ」「この子を残して」が紹介され、
市井の人々の幸せを踏みにじる
「戦争」と「弱者への視点」というテーマでしたが・・

いち映画ファンとして
正直な感想を述べますと、

「全盛期を過ぎ一線を退いた木下監督が
晩年は雀を眺めながら隠遁生活、
「衝動殺人:息子よ」「この子を残して」で最後にメッセージを残した」という
一側面だけを強調した内容で、
確かに戦争への憎しみは木下作品を貫いているテーマではあったと思うが
ただ単に悲劇を描くだけではなく、作品の中では愛、
生命への賛歌も強く謳っていたのである。
そして痛烈な皮肉も!

ユーモアも、愛も、アイロニーも、
お洒落も、音楽も、実験的な映画手法も
全く紹介されなかったので、
初めて作品に触れようとしている人たちには
単に社会派、反戦派の監督としてしか捉えかねられない。
非常に片手落ちという印象でしたわ。

まあ国営放送の番組意図は
木下作品の紹介だけではなかったのかもしれないが。

久しぶりに木下監督のお顔を拝見できて、
映画への熱い思い、
売れてなんぼの映画界への憤りなども聞けたことは収穫だったけれども。
鳥が好きというところが私と同じで嬉しかったけれども。

あの素晴らしい音楽的な世界、
圧倒的な映像世界は何処へ???

な~んか一方的な編集の番組が
目立つ感じがするのは気のせいか。

せっかく木下忠司、楠田夫妻も出演されたのに
私は真面目に
木下忠司さんの作品のような美しく豊かな音楽教育が
今の世には必要なのでないかと思っていたので。
別の切り口も示して欲しかった。残念だ。

また違う木下研究番組を切に希望!
木下センスが爆発している「カルメン故郷に帰る」など
若い人にも見て欲しいものね。

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「肉体の野獣」

2006年11月05日 | ★愛!の映画
その意味は果たして?という疑問はさておいて
物語はいたってシンプルだった。

必要以上に色っぽい女(三原葉子)に裏切られた
青年医師、瀬川(川喜多雄二)が
失恋の痛手から一念発起し
手当たり次第に女をコマして復讐を図るというもの。

最初の女が三原葉子だったというのが
純情な医師にとってはすでに敗因だった。
ボロボロになり
出会う女すべてに粉をかけ、無理やり自分のものにして
棄てていく。

初対面の女性と話した途端に
邪悪な表情を浮かべる瀬川がえげつなくて最高!

黙っていてもなびいているのに
わざわざ乱暴する念の入れようだ。
次から次へと面白いほどひっかけていくが、
あくまでも目的は女全般に復讐するためなのである!

ふられた女、ルミ子(三原葉子)に
ヨリをもどしてくれと言われ、
元の鞘に収まるふりをして
金持ちの娘と腹いせに結婚してみせたり
さらにはその母親にまで色目を使う・

精一杯のあがきを
見せるのだが・・中盤で、はややせ我慢もほどほどにせい!と思ったのは私だけだろうか?

結局三原のことが一番好きだったことが最後に示される。
ええかげんにせんか!と思うが後の祭り。

男は嫉妬に狂った第三の女の凶弾に倒れるのであった!

構図が時々妙にスタイリッシュでハッとする。
最後のシーンなど「黒い十人の女」に似ているな~と思ったら
土屋監督は
市川崑に師事していたことがあったそうだ。

三原葉子の肉感的なプロポーションを堪能できるおまけ付というか、
それがメインか。

*この映画の教訓:自分の心に素直になろう。無理は禁物

*映画の中のイイおんな研究(新企画)
三原葉子:顔ぽっちゃりで美脚。ナイスバディを強調するような
ウエストを絞ったワンピース姿で
ヒモ男に責められるシーンもナカナカでした。

1960年
監督  土屋啓之助
脚本 土屋啓之助 金田光夫
撮影 平野好美
音楽   八木正生
美術   加藤雅俊

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「マタンゴ」

2006年11月04日 | ★恐怖!な映画
カルトムービーとして
超有名なこの映画を
一度で見終わるのが忍びなく
昨日、今日とわけて見る。
子供の頃、
大好物の三ツ矢サイダーをコップで飲むのがもったいなくて
おちょこでちびちび飲んでいたことを思い出した。

悪天候で難破し
無人島に流れ着いた七人の男女が奇怪な船を見つけ
るのですが
船室に入ってみると、ぺっぺっ!うえっうえっ!

おどろおどろしい船内の美術が素晴らしく
デジタル・リマスター版のビビッドな色彩がいやがおうにも目を刺す。

大学で心理学を教える村井(久保明)、恋人で教え子の明子、
会社社長の笠井(土屋嘉男)、その愛人お色気むんむんの麻美(水野久美)、
笠井の会社の社員作田(小泉博)、
作家の吉田(太刀川寛 )、そして仙造(佐原健二)。

平常では仲が良かった人間たちが
極限の状況下で
だんだん各々の欠点が増幅され
自滅し、仲たがいし、マタンゴと出会い、人間やめます

普通のサバイバルものでは
悪そうなヤツがまずやられるのが定番だが
この映画ではすべての登場人物が弱い部分をさらけ出していくのが興味深い。

巧みな演出と追い討ちをかけるような音楽で
じらしにじらして遂にマタンゴ王国!?が現れる後半は、圧巻だ。

ただ、マタンゴは美味そうだがキノコ人間は美味くなさそうである。

精巧なセットやミニチュアにロケを交えて
臨場感を出す手法はさすが!
特撮の王者本多猪四郎&円谷英二である。
「鳥もその島をよける・・」というシーンに使われた
「カモメ」も実は特撮だそうで、そんなこんなもすごいが
展開にひねりがあり、社会批判も伺える物語自体がとても面白い。

水野久美は餓死しそうになっても
ブルーのアイシャドーを崩さず、華がありましたしね。

マタンゴは
一種の踏み絵のようなものである。
人間やめてマタンゴ食いますか?
それとも人間らしく餓死しますか?と聞かれて
あなたはどちらを選ぶでしょうか?

根源的な問題を突きつけられたようでもあり
何かヤバイ、危険な香りもするような気もするのだが
ウオッホッホッホ・・・というマタンゴ人間の笑いが
すべての思いを吹き飛ばすほど、幻惑的なのであった。

追記:
*この映画の教訓:食いたいものは食いたい時に
食ったほうがクイが残らんかも?

*映画の中のイイ女研究:新企画

水野久美:まずは「化粧が濃い!」と感じさせるのも
ひとつの個性であろう。
派手な顔立ちに原色のドレスが映えます。
無人島に流れ着いてもケープがついた帽子を
かぶり続け、マタンゴを食べながら
妖艶に微笑む姿は「ジャングルのミューズ」のよう??!

監督
本多猪四郎

原作:」星新一福島正実
脚色:木村武
撮影:小泉一

SFX:有川貞昌 富岡素敬 渡辺明 岸田九一郎
特撮監督 円谷英二 音楽:別宮貞雄 美術:育野重一

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「病院坂の首縊りの家」

2006年11月02日 | ★人生色々な映画
横溝正史の小説を読むとき
人物の相関図を何度も見返さずに読了出来る人は
そういまい。

映画の中で複雑きわまる人間関係を
説明するのには「台詞」しかない。
あるときは主要人物が、
そして残りは金田一耕助が語る。

そういう意味で金田一がダイコンだと
シリアスな物語でもいっぺんで茶番になってしまうところだろうが、
さすが金田一耕助俳優と言われる?石坂浩二、
説得力も抜群でしかも温かみもあり
汚いなりであるのにもかかわらず清涼感も漂わせながら
大物女優と堂々と渡り合い、追い詰めていく。

一連の横溝映画でもそうであったように
美しい女性が悲しい復讐を遂げる物語。
いくつかの不幸な偶然も重なって
人間関係は複雑に入り組んでいる。

最後の見せ場である独白は
佐久間良子の面目躍如の熱演と美しさではあったが
さすがに
回想での「10代の娘姿」には無理があった!(撮影当時40歳)

他にも草刈正雄、桜田淳子のクセのある台詞まわし、ピーターの男役、
あおい輝彦のヒゲ面など、かなり違和感を感じる部分が多いにもかかわらず
全体にぱっとみてすぐにわかる市川トーンが貫かれており、
豪華な出演者の贅沢な使い方に加え
横溝正史夫妻ゲスト出演するなど、
内容はどろどろではありますが華やかでした。

個人的には入江たか子が出ているのが嬉しい。
市川監督は女優を実に美しく見せるなあ。

石坂浩二の金田一としては
1「犬神家の一族」
2「悪魔の手毬唄」
3「獄門島」
4「女王蜂」
に続いての第5作目。

つまり今度の「ニュー犬神家の一族」で、第6作目となる計算です。

登場人物をざっと書いておきます。

石坂浩二(金田一耕助)
佐久間良子(美夫人:法眼弥生)
桜田淳子(法眼由香利)
久富惟晴 (色エロオヤジ:五十嵐猛蔵)
河原裕昌 (五十嵐滋↑猛蔵の孫)
入江たか子(弥生の母:五十嵐千鶴 猛蔵の後妻)
三条美紀 (使用人田辺光枝:滋の母))
萩尾みどり (山内冬子(法眼琢也の愛人で実は弥生の娘))
あおい輝彦 (山内敏男(義理の息子:小雪を好いている))
桜田淳子 (山内小雪(冬子の娘:このあたり複雑)
加藤武 (言わずと知れた等々力警部)
大滝秀治(加納巡査)
岡本信人 (阪東刑事)
横溝正史 (老推理作家)
中井貴恵 (女子学生;坂口良子的役回り)
草刈正雄(日夏黙太郎:飛び入り)
小沢栄太郎 (本條徳兵衛(あくどい写真屋))
清水紘治 本條直吉(↑の息子))
小林昭二 (三之助(法眼家車夫:弥生を崇拝))
三木のり平 (野呂十次(いい味出してる古本屋))
白石加代子 (宮坂すみ(法眼鉄馬の愛人らしからぬ愛人))
草笛光子 (雨宮じゅん(汚れ役:産婆の娘))
ピーター (青年その一:死に方がちょっと・・)
林ゆたか (奈美悦子の元ダンナ)

*映画の中のイイおんな研究(新企画)
佐久間良子:いい着物をびしっと着こなした良家の奥様がよく似合う。
結い上げた髪に一筋白髪メッシュがお洒落であるが
乱れ髪もまた風情があった!

1979年市川崑 監督

原作横溝正史
脚本 日高真也 久里子亭 撮影 長谷川清
音楽 田辺信一 美術 阿久根巖

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