ニュースから
責任:テレビのニュースで,神戸大学の副学長が同学のバドミントン同好会の学生が働いた狼藉について,記者会見を開き,深々と頭を下げている映像が放映された。
わたしはこの映像に不快感に近い違和感を覚えた。
狼藉の実態は数十名が合宿していた旅館で羽目を外し,旅館の天井や障子を損壊したものだという。この同好会(あるいはサークルというのか)は,大学に届け出た組織ではなく,同好の学生が集まって作り,活動しているものだ。大学から予算や施設の供与を受ける運動部ではない。
この事件は,N大学の運動部の合宿であった大麻の保持や使用とは質を異にしていると思う。
大学生は年齢的に見ても独立した人格をもった個人である。自主的に自分たちの責任においてすることに,大学は干渉すべきではない。大学が管理し,教育活動の一環として行っていることで生じたことならば,大学の責任は当然問われる。
今回の学生団体の狼藉行為はもちろん許されることではない。彼らは彼らの責任においてその責めを負うべきである。
大学が所属する学生の自主的行為に見解を表明し,例えば親が子供の不始末を詫びるように,何らかの対応をするのは当たり前で,それ以上の責任は負えないし,負うべきでない。
わたしは大学の学生委員長だった時に,学生が無免許運転で傷害事故を起こし,そのことで,被害者と「代理人」と称する人物からかなり強面で,大学に賠償請求をされたことがある。学生の無免許運転については被害者に詫び,お見舞い申し上げ,当該学生には面談して注意はしたが,賠償要求については大学の責任ではないとお断りした。
今回の神戸大学の記者会見に,大学側の「卑屈さ」を感じ,もっと毅然として欲しいと感じたのは間違っているだろうか。
健康食品:紅麹菌を用いた「機能性食品」の腎疾患への影響が話題となっている。
因果関係等については調査中ということであるが,わたしは出るべきものが出たという感想を持っている。
天然物を用いたサプリメントや漢方薬には,有効成分以外に多様な物質が含まれている。したがって,その使用にあたっては,医師などの指導の下に十分な注意が必要である。
しかし,特にネット販売等に登場する「健康食品」や「機能性食品」にそのような注意が十分払われているかは疑問である。売らんがための誇大広告が目立ち,消費者庁から取り締まりを受けることもしばしばある。
「機能性表示食品制度」は,「アベノミクス」の目玉の一つとして2013年に提唱され,2015年から導入されてきた。企業が一定の根拠(論文など)に基づいて届け出れば,自社製品に「機能性食品」の表示をつけることができる。以来「健康食品」の販売額はうなぎのぼりとなっている。
この制度以前からあった特定保健用食品(特保)の審査基準は厳しく,薬品の認可より金がかかって難しいくらいだと言われている。わたしが関係したヤーコンの葉を原料とした「ヤーコン茶」も,食後血糖値を下げるという臨床データはありながら,慢性毒性についてのデータがないとして,認可が大変だった。
「機能性表示食品」の効用,安全性,品質管理などの不備については,かねてから識者や消費者団体から警鐘が鳴らされていた。今回の事件はその警鐘を裏打ちするものといっていいだろう。
わたしは「健康食品」や「機能性食品」と銘打たれたものからは,一歩隔たることにしている。
蛇足かもしれないが,経験から一つ付言したい。
現役時代に,農家が開発したという「農薬」がわたしのところに持ち込まれた。天然の材料を使っているから安全だと称していた。原料を見ると確かに天然の植物を素材にしているが,かなり有毒な成分をもつものがあり,人が飲んだり体につけたりしたら障害が出ると思われた。
持ち込まれた方には,然るべき機関で安全性については検定を受け,効用と使用上の注意を確かめてから用いることを勧めてお引き取り願った。
「自然」や「天然」は安全性の代名詞ではない。
STOP WAR!