昨日の朝日新聞の報道によりますと、関電高浜原発3、4号機の再稼働をめぐり、福井地裁の樋口英明裁判長は14日、住民らの訴えを認め、運転を禁じる仮処分決定を出した。原発再稼働の可否を決める新規制基準は「緩やかにすぎ、合理性を欠く」と指摘し、新基準を満たしても安全性は確保されないと判断したとのことです。
私自身は、元々原発推進派でしたし、今でもそうです。原発のおかげでご飯を食べさせていただいた時期もありました。人類にとって技術の選択肢は多い方が良いし、そのための研究開発は(妥当な予算の範囲で)継続した方が良いと思っています。原発の根源的な問題は、高レベル放射性廃棄物の社会的に合意が得られる安全な処分方法が未確立なことです。どんな技術でもそうですが、技術的な隘路が解決されなければ市場で実用に供されることはありえません。1954年に世界で初めて定期運航を始めた英国のジェット旅客機コメットは、わずか3か月の間に立て続けに地中海と大西洋に墜落し、乗客乗員合計56人全員が死亡する深刻な事故を引き起こしました。コメットの運用は直ちに停止され、4年間の徹底した原因究明と改善が行われ運行を再開しました。原発も同じことだと思うのです。少なくとも高レベル放射性廃棄物の社会的合意が得られる安全な処分法が確立するまでは、原発の運用は停止すべきであると思います。停止している限りは、これ以上高レベル放射性廃棄物は増えないからです。この問題が解決し天災への備えが十分改善されたら再稼働すべきでしょう。したがって、今最も優先度の高い研究課題は高レベル放射性廃棄物の安全で社会的合意の得られる処分法ということになると考えます。
今のまま状況を放置しておけば、捨て場のない高レベル放射性廃棄物は原発の敷地内に積み上げておくしかなくなります。いずれ青森の六ヶ所村や英仏の再処理会社に委託中の高レベル放射性廃棄物も発注元の原発に戻って来ます。次に各電力会社がすることは原発の敷地を大拡張して高レベル放射性廃棄物の置き場を作る…そこらへんがありうる落としどころになってしまうでしょう。
ここで皆さんに想像していただきたいのは、そのような広大な「高レベル放射性廃棄物置き場」が、仮想敵国のミサイル攻撃を受けたらどうなるでしょうか。原発の敷地自体が巨大な「汚い爆弾(dirty bomb ダーティー・ボム 熱や衝撃波ではなく放射能汚染を主目的とした、ものすごくたちの悪い核兵器)」になってしまうのです。我が国の安全保障にとって致命的ですね。