
6月24日付けの朝日新聞で「自民党広報のツイッターアカウントがダーウィンの進化論を誤用した言い回しを使って憲法改正の必要性を訴えたことへの批判が出ていることについて・・・(中略)・・・投稿は19日。「もやウィン」という架空のキャラクターが登場する4コママンガの形式を取っている。ダーウィンの進化論を引き合いに「最も強い者が生き残るのではなく 最も賢い者が生き延びるのでもない」「唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である」と説明。そのうえで、日本をより発展させるために改憲が必要だ、と主張している」という記事を見つけました。
その4コマ漫画が載っている自民党のツイッターはこちらです。⇒ https://www.jimin.jp/kenpou/manga/first/
朝日新聞の記事のソースはこちらです。⇒ https://digital.asahi.com/articles/DA3S14523878.html
既に多くの有識者が批判していますが、ダーウィンは「唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である」などと言っていませんし、そもそもダーウィンが唱えた自然選択説と思いっきり矛盾しているのでダーウィンがこんなことを言うはずがないのです。
人間からバクテリアまで地球上の生物の中で、自分の意志で自分自身の遺伝的な形質を変化させる能力を持っている生物などいません(注)。キリンの首が長いのは、キリンが何か努力をして自分の首を長く伸ばしたのではなく、たまたま首の長かったキリンの個体が高い木の葉を食べることができることによって自然界の中で生き残りやすくなり首の長い子孫を多く残した結果です。たまたま首の長いキリンが生まれたのはランダムな突然変異によるもので、全く偶然の結果であり個体の意志や努力は無関係なのです。例えば、がんばって筋トレに励んで筋肉ムキムキになったお父さんとお母さんから生まれた赤ちゃんが最初から筋肉ムキムキだなんてことはあり得ませんよね。それと同じことです。ただしダーウィン以前の18世紀のフランスの生物学者ラマルク(1744年~1829年)は個体が生涯の途中で獲得した形質が子孫に遺伝するとし、これが生物進化の原因だと考えました。しかし獲得した形質を遺伝子に伝える仕組みが見当たらないのでこの説は否定されました。
自民党の人々は18世紀のラマルクに先祖帰りしたのでしょうか?実はラマルクが1829年に世を去ってから100年後に、この獲得形質の遺伝という考え方を復活させた生物学者がいました。それが旧ソ連のトロフィム・デニソヴィチ・ルイセンコ(上の写真の人物です)です。(続く)
(注)人類はゲノム編集などの科学技術によって、地球上の生物の中で唯一そういう能力を持つことができつつあるとはいえます。