鷺池で何かが跳ねた。
きっどさん達は
「河童がでたか?!」
とびびっていたけど、
柱の隅で、変わらず我々の存在を無視する高校生カップルは、
そんな事はおかまいなしに、自分たちの世界に浸っている。。。
よく遊ぶ近所の広い公園が、フェンスで囲まれた。
野球やサッカーをしていると車道にボールが転がって危ない、という近隣住民や保護者の声で、二週間前くらいに作り始めたものだ。
実は最終的な決め手になったのは、ボールを追い掛けて車道に飛び出し、事故で亡くなった子供がいたからだとか。
真新しいフェンスは黒塗りの鉄線を菱形状に編んだよく見かける形で、高さは隣の団地の2階ほどである。
工事が昨日終わったばかりで、完成後にこの公園を使うのは僕達が最初なわけだ。
長らく公園が使えなかったこともあって、今日は多くの同級生が集まったので野球をすることになった。
日が暮れ始め、試合も9回表。
その日1ヒット打った子がファールボールを打ち上げた。
打球は放物線を描き、フェンスの向こうの道路に落ちた。
公園の出入口以外フェンスで囲まれているので、ボールを取りに行くにはかなり遠回りしなければいけない。
皆して面倒だなぁ、などとぼやいていると、ちょうど子供がボールの傍を通った。
キャッチャーが金網越しにボールを投げてくれるようお願いすると、その子は静かに頷きボールを投げた。
その子の投げた速球は真っ直ぐグラブに飛び込み、快音を響かせた。
ん……?直球……?
試合に戻ろうとした僕は気付いて、慌ててフェンスの方を向いたがその子はいなかった。
僕の様子を見た同級生も違和感に気付いたらしい。
フェンスの高さは人の身長を遥かに越えている。
道路側から返球するには、弧を描くように投げない限り不可能なのだ。
再度試合を中断し、先程返球した球が通り抜けたであろう金網に集まった。
そこには、ボール二個分の大きさの穴が開いていた。
なんだ、この穴を通して返球したのか。
みんなホッとして、再び試合に戻った。