睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

樹木希林さんによせて

2018-09-23 07:35:00 | 逝ける人々
2018年9月15日(75歳没)狂気の人がまたひとり泉下に旅だった。 彼女は自分の中の狂気をいたわり慈しみながら天然を装い何事もないように逝った。 内田裕也氏が云う「見事な人」というのがしっくりくる。彼が求めて求めてやまないモノを希林さんは持っていた。そんな気がする。 この二人はあの世に行っても切れない縁(えにし)希求と拒絶を繰り返す赤い糸。 ある意味うらやましい。希林さんは誰と結婚しても . . . 本文を読む

白提灯と麻雀エレジー

2018-07-08 15:30:00 | 逝ける人々
土曜日午後2時に雀友の車を待っていた。アルファード乗りの友人が3人の家を順番に回って拾う最後がぼくの家だった。 4人揃ったところで白提灯を注文してある仏壇屋に向かった。7月13日~16日の新盆に間に合うタイミングが今日の集いになった。途中の和菓子屋で供物を買う者、仏壇屋で木箱入り線香にする者などそれぞれが用意した供物の熨斗に名前を書くのはぼくの役目なのだ。 店が用意した熨斗紙に持参した薄墨と小 . . . 本文を読む

桜桃忌によせて、太宰治との決別と愛しの文士たち

2018-05-24 10:05:15 | 逝ける人々
もうすぐ桜桃忌(6/19)。毎年5月の今頃になると今年は行こうか行くまいか迷う。距離的に三鷹は近いけど、心理的に遠いところ。 2011年9月半ば、古書店の店先で古い週刊誌を立ち読みしていた。「昭和23年太宰治と心中した山崎富栄の遺体」と題された表紙に視線が止まり、思わず買ってしまった週間朝日。 太宰治の心中相手がなぜ山崎富栄なのか、自殺未遂4回の太宰と知りながら岡惚れした山崎富栄は情死も辞さな . . . 本文を読む

夢の中で

2018-03-30 10:25:18 | 逝ける人々
田んぼのあぜ道でバッタやてんとう虫を捕っていた。草むらの中でネズミくらいの大きさの黒い影が動くはっとして草むらに手を突っ込んだらバスが出てきた。 バスといっても赤く錆つき窓ガラスも割れている。バスの横に回ると移動販売らしい大きな開口部があり、その隣に雨ざらしのノボリが斜めにかしいで立っていた。 "おいしいホットドッグとハンバーガー"と書いてある、しゃがみこんで時代錯誤なノボリの字を眺めてい . . . 本文を読む

ありがとうはその時に

2018-02-06 16:43:01 | 逝ける人々
その風貌とは似ても似つかない繊細な眼差しでジャケットを見つめる大将を偲んでKenny Gを聴いている。 今年の早春、まだ霜柱が立つころにキャンプに行く約束をした。彼が七輪セットと備長炭、名古屋コーチンに自宅栽培の長ネギを、おれはミニコンポと電源と椅子を2個、それと薪の束を。 行先は西湖のキャンプ場、まだ浅き春の極寒のなかで、人けのないキャンプ場で、好きなArtistのCDを心ゆくまで響かせ . . . 本文を読む

明かりが消えた赤提灯

2018-01-26 10:06:01 | 逝ける人々
行きつけの赤提灯は去年の暮れに閉店してしまった。ここ数年顔色に生気がなく動きが緩慢になっていた店主が意を決して病院に出向いた結果、膵臓がんStⅣオペ不可。 自宅療養している彼の見舞に行ったとき、青白く横たわる彼の横にある酸素ボンベや介護用品を見たとたん「セカオピ受けた?」などとはとうてい言えなかった。 薄く目を開けて「焼き鳥わりいなぁ.....」と、細く震える声でつぶやく彼の手をさすることしか . . . 本文を読む

親父part7(Last)

2010-12-20 18:23:52 | 逝ける人々
東の空に満月 201012/20 pm18:21 2000/09/24午前5時16分永眠。---看護士さんのエンゼルケアを受けた父はストレッチャーに乗せられ地下の霊安室に安置された。担当医と看護士の弔問を受けてほどなく葬儀社の車が迎えにきた。黒いワゴン車の後ろに父が乗り、かたわらに母が付き添った。自宅前で近所の方の出迎えを受け、父は1階の居間に安置された。線香がともり一膳飯が供えられた白木の . . . 本文を読む

親父part6

2010-12-19 09:29:18 | 逝ける人々
2000/09/08這えば立て、立てば歩めの親心赤ちゃんになった父も...歩め。明日がある陽は沈みまた昇り瞼が明かない朝はないはずだ屋根の上ヴァイオリンを弾く夢を...夢みむ。2000/09/09名鉄が自宅に介護ベッドを配達してくれた。梱包を解く日はくるのだろうか。意識あり、手が小刻みに震えてたうんうんと頷く密度の濃い視線。2000/09/10 ちりちりと皮下に死にゆく黒みみず 大根の茎かじりた . . . 本文を読む

白い雪と加川良の「下宿屋」

2010-12-16 03:39:26 | 逝ける人々
昨夜は前に住んでた隣家のおじいさんの通夜に行ってきた。浪々と漢詩を謡う鍛えられた声は壁を越え庭を越えわが家にまで聞こえてくる。元気なうちに詩吟をおしえてもらえばよかった。何度も誘われたのに、気後れがして、曖昧な返事を繰り返した。あの咳払いすら懐かしい。 仕事関係を含めると数え切れないほどの通夜・葬儀に参列した。ほんの義理で行くのもあれば、遠方まで車を駆って行くのもある。死は誰にも平等でありながら . . . 本文を読む

親父part5

2010-12-13 07:30:07 | 逝ける人々
2000/08/24そんなにすぐクタばるようなオヤシじゃない。葬式の準備をするくらいなら、奇跡を起こす。首根っこをひっつかんで現世に留めようオヤジ。 ド田舎の風習がもたらす目の回るような忙しさ。疲労困憊だが、できることはすべてやった。あとは、しばし眠りたい。2000/08/27  K大学病院とN病院の連携はスムーズで、医師間で最善の方法を検討してもらっている。K診療所に通院しながら血圧の治療を . . . 本文を読む