5時34分
デデッポに呼ばれてカーテンを開けた。
ぼくを見ているあの優しい目はひかりのなか。
昨日の午後12時38分にチャイムがなった。
声がぼそぼそでよく聞き取れないが、
モニターで見る風体は宅配のおっさん風だった。
玄関のピンポンにドアを開けると、一見して50代半ばに
見える風采の上がらないおっさんが立っていた。
黒いリュックを背負ったその人こそ待ち人だったのだ。
ベランダに案内する。
自慢じゃないけどうちのベランダの床はきれいだ。
掃除機は毎日かけているし一日おきに雑巾がけしている、
毎日裸足で歩いてるから足裏掃除も効いているはず。
ベランダの前で立ち止まったおっさんに
「そのままでどうぞ」
ぼくは彼より先に素足でベランダに立った。
意外にも軽装備なリュックから万能ドライバー、
クリップ外し、プライヤーの工具3点を取り出した。
まずは室外機の右側のカバーを外した。
上のコードは配線ボックスに繋がり下はフロンガスのバルブ、
これからが早かった。
あっというまに上と手前のカバーを外し中が丸見えになった。
右上に金属のBOXがありプリント配線基板に繋がる様々な
配線コードがここに集約されている。
彼はなんの迷いもなく次から次へと手際よくはずしていく。
BOXの下のぶ厚い不燃布を外すとガスボンベとコンプレッサー
高低圧のガスの配管などが見えてきた。
ここで声を掛けてみた。
「ガス漏れ?」
「そうです。もう原因がわかりましたから」
高圧パイプにあいたピンホールからガスが漏れていた。
冷媒ガス(C-32)が漏れると銅パイプに脂ぎったような色が
つくのですぐにガス漏れと分かるそうだ...なるほど。
彼はリュックから純正部品の銅パイプと小型パイプカッターと
トーチ(小型の酸素溶接機)を取り出した。
まずはパイプを真ん中で切断して取り回しをラクにする。
配管の根元のカシメ部分を酸素であぶって配管を外す。
新しい配管に替えカシメ部分を酸素でロウ付けして終了。
ビニール袋に入っているのが交換した部品。
あとはフロンガスを入れて冷房効果の確認をするだけ。
文字にあらわすと簡単に見える修理だけど
これは彼がゴットハンドの持ち主だからできること。
最初~最後まで30分で完了するとは優秀すぎて驚いた。
ぼくのリーマン時代は自動車部品の営業で、
自動車修理・工具・パーツと接するのが日々の仕事だった。
車好きが嵩じて今はなき家電メーカーから転職したのだが、
のちに天職と云えるほど好きな仕事になったのは幸いだった。
今回はいいものを見せてもらった。
会社は彼みたいな職人肌の優秀なサービスマンを
大事にしてほしいとつくづく思った。
時は金なり。
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