クリーニング屋の見返りネコとアメショのお玉・オンナは化ける

クリーニング屋の看板ネコ

店の前を通りかかったら振り返って見つめられた

猫の目はいつもなにかを訴えている

お寺さんの外ネコは半眼で睨みつけながら

「おまえは誰だ？」と問うてくる。

そんなときはしゃがんで挨拶をする

「菩薩の使いできました」

キャットフードを少しだけ目の前に置く。

立ったままで話しかけたときはフギャーっとか

シャァーーだの威嚇されて、

そのたびにアメショのお玉がアタマに浮かぶ。

玄関エントランスのルームナンバーをぽちっと押す

間の抜けた「どぉーーぞーー」の声でオートロックが

解除され、EVがある通路に向かって歩く。

部屋のチャイムのキンコンカンは笑いを誘うが

玄関を開けると威嚇体制のお玉が待っている

すでに寄らば切るぞの勇ましさ。

婆さんがお玉の腹をよいしょと抱きかかえ

「いらっしゃい」とにこやかに迎えてくれる

両手両足をぶらんとさせたお玉はしおらしい。

ぼくがいるあいだ中ソファーの下やクローゼットの

かげに隠れて訪問者を見張っている番ネコお玉は、

ぼくを天敵と思っているふしがある。

最初のころ、婆さんに頼まれてお玉を動物病院に

連れて行ったのがよほど勘に触ったらしい。

婆さんはこの子は箱入り娘だからと慈愛の眼で言うが

お玉はタマタマを持つ精悍な男子なんだから。

現在の婆さんはお玉と一緒に岡山で暮らしている

婆さんの移転からひと月も経たずに品川暮らしに

なったから、これは神の啓示みたいに感じたよ。

オンナは化けるというがその典型を目の当たりに

したのが茶会に向かう気品ある婆さんの和服姿で

眼からウロコぐらいの衝撃でぼくを魅了した。

もう一度見たい、写真に収めたい。

逢いたい人がいても

おいそれと逢えない

思いのままにならないことが

多すぎて、もやもやするが、

それでいいのかもしれない

なんてさ。

顔を洗い

珈琲を入れて

今日がはじまる

Have a nice day!

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