水産北海道ブログ

北の漁業と漁協がわかる情報満載です

2023秋サケ来遊状況(暫定値)道総研が総括 2,133万尾と前年の68%、4年魚主体・小型化

2023-12-05 16:02:07 | ニュース
 

 本道に来遊する秋サケは前中期を合わせ2,123万尾で、予測値の64%、前年同期の68%となった。前中期が前年同期を大きく下回り、平成30年並みの水準となり、5年魚が再び低下し、魚体は前年に次ぐ小型の水準だった。
 道連合海区漁業調整委員会で、今シーズンの秋サケ来遊状況の暫定値に基づく総括を道総研さけます・内水面水試さけます資源部の卜部浩一研究主幹が行い、
水産研究・教育機構水産資源研究所の吉光昇二資源増殖部長が全国の状況を報告した。
 卜部研究主幹によると、令和5(2023)年前中期の秋サケ来遊数(河川での捕獲数を含む)は2,123万尾で、予測値の64%、前年同期の68%となっている。河川捕獲は286万尾で、予測値の75%、前年同期の84%。年級別来遊数は、5年魚が496万尾で予測値の55%と下回ったが、前年同期の184%と大きく上回った。逆に4年魚は1,495万尾と全体の70%を占め、予測値の69%、前年同期の66%と大幅に下回った。3年魚は126万尾で予測値の51%、前年同期の21%にとどまった。
 年別・年級別来遊数は、前中期の来遊数は、昨年同期(を大きく下回り、概ね平成30年並みの水準となった。年級別来遊数は、平成13年級以降、減少傾向にあったが、平成30年級群では平成26年級を上回る水準に回復するとみられる。しかし、それ以降の年級群の減少がうかがわれる。年級別年齢割合の推移は、平成20年級以降、4年魚、3年魚の割合が増加する若齢化の傾向が続いてきた。5年魚の割合は低下を続け、平成28年級では増加に転じたが、平成29年級では再び減少し若齢化の傾向が強い。
魚体重は、小型で推移してきたが、中でも昨年(令和4年)は2.83㌔(近年最小)と著しく小型となった。令和5年の魚体重は、昨年に比べ5年魚の割合が高かったため、9月下旬までには平成30年(近年最2番目に小さい3.04㌔)を上回る水準で推移したが、10月上旬以降はその水準を下回り、10月下旬現在では3㌔以下の令和4年に次ぐ低い水準となった。
 また、水研さけます部門の吉光昇二資源増殖部長によると、11月10日現在の本州の来遊量は約9万9千尾で前年(約40万尾)に比べ25%と平成に入って以降最も少ない。本州各県は太平洋、日本海とも来遊数の低迷から種卵の確保に苦労し、大幅な不足が見込まれる。
 質疑では、岩田廣美委員が「オホーツク海の一部を除いて全道的に不漁で、このままではふ化放流事業に支障をきたす」と現状の打開を求めた。卜部研究主幹は「今年の海洋熱波で多くの秋サケが定置網に乗らない状態で死んだと考えられる。黒潮の勢力が過去に戻るまで、各地の実態に合わせた適期放流などの対策をする必要があり、夏から秋の高水温を避けるために中後期に帰る資源の重要性が高まる」とした。
 阿部国雄委員は「今後、渡島や胆振の増協が運営していけるのか心配で、漁業者の負担も上限に来ている。将来も増殖事業が可能なのかを見極め早め目に答えを出してほしい」。福原正純委員は「サケ不漁の理由をすべて気候変動に求めるのでなく、8月に回帰するサケのメカニズムを解明してほしい」、横内武久委員は「気候変化に対応した育種、高水温に強いサケの遺伝子を守ることが大切。他の生物の例からも学んで研究してほしい」といった要望意見が出された。藤原真さけます資源部長は「高水温の影響は大きく、本州のサケ大不振に加え、カラフトマスの来遊なども南から激減している。渡島、胆振のサケ資源の底上げは全道にもかかわる問題と危機感をもって取り組む」とし、卜部主幹は河川直行型の来遊について「沿岸水温が高い年は河川そ上率が高くなる。今年はその典型で、水温の低い沖合の深みで待機し、河川に直行した。沿岸に止まらないため網にかからなかった」と述べた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿