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北太平洋公海のサンマ資源管理などを話し合う北太平洋漁業委員会(NPFC)が23日〜25日までウェブ会議で開かれ、前年合意した公海のサンマTAC33万㌧を受け、日本側が提案し継続協議となっている国別割当量の設定が焦点となる。この会議は本来、昨年6月に開かれる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大で延期されていた。
1月下旬に開かれた科学委員会(ISC)では、2020年のサンマ漁獲量は日本、ロシア、台湾、韓国、中国の5カ国で約13万7千㌧と前年実績の約7割に止まり、各漁場で過去最低となったことが報告された。資源状況は1980年以来の最低レベルに低下し、持続的生産を行うFmsyを上回る漁獲(F)となっている。
2年前の12月、臨時国会であっという間に決まった漁業法改正は、水産庁による「水産政策の改革」の根幹を成す。ついに施行まで秒読み状態となったが、一体何が変わるのか、この間の議論の割にはいま一つ現場の理解が深まったとは言えない印象が強い。
現場が70年ぶりの法制度の根本改革の全体像を理解するには、時間がかかることは致し方ないだろう。海洋環境の変化、資源構造の変化、新型コロナ感染拡大といった切羽詰まった問題がどんどん漁業を襲い、とても立ち止まって未来の成長産業化とか新たな資源管理システムなどを考える余裕はない。新型コロナで全国の学校が休校し、社会経済活動がストップしたのだから、この議論も「水入り」をして、コロナが収まった時点で、じっくりとやった方がいいのでは?
極端なグローバル化と格差社会を放置したことが、このたびの新型コロナ問題を深刻化させ、冬に向かって北海道のみならず、全国、全世界をウイルスが襲っている。インバウンドも外国人技能実習生も吹っ飛び、営業自粛や時短を求められている飲食店はもはや限界(外食需要は戻らない)で、生鮮水産物を扱う流通場面では企業の倒産も広がっていく可能性が出ている。
さて水産業の成長化とか、新しい資源管理システムとか、バランスのとれた就業構造とか漁業所得の向上とか、そういった課題を考える余裕は現状では悪いけれど、役人とか研究者しかないと思われる。MSY(最大持続生産量)レベル達成に向け資源の管理目標を設定し、漁獲シナリオ(TAC)を考えることは大事でしょう。フツーの場合は。今は非常時ではないですか?「将来の資源のために、いま生活している漁業者を殺すような施策は受け入れられない」というのが当たり前の論理で、10年後に実現できる方法の確率を示して選択を迫るようなやり方は止めた方がいいでしょう。世界で5千万人が感染するような新型コロナのパンデミックに直面している現在、10年後の資源状況なんか誰が切実に受け止めるのですか?
すべて架空のコンピュータゲームから目を覚まし、水産庁や水産研究・教育機構の人たちは、地道な漁業調整とか200海里内の操業確保とか、基礎データの収集とかに汗を流した方が身のため、世のためです。
お題に戻れば、制度は運用してみないと本当の効果はわからないでしょう。このたびのようなむちゃくちゃな改革だとなおさらわからない。しかし、法制度の理念はこれほど筋の通った改革はないと言える。要するに空き家になっている漁場を開けさせ、企業的な漁業に効率的に使ってもらう。沖合・沿岸の漁船漁業はTACを消化でき、個別割当も十分対応できる大型階層を中心に任せる。漁業権管理にこだわる零細な「漁業権管理組合」はこの際、合併統合して退場してもらうというストーリーは容易に想像できる。
今年12月14日までに施行される改正漁業法(2018年12月成立)の肝と言える「海面利用ガイドライン」を水産庁は、4月11日までパブコメで意見を募集した。それに対し、首相直属の諮問機関である規制改革推進会議が4月9日に書面で「提言」を決定。全国の漁協系統、業界関係者とコンセンサスを得ていたガイドラインの内容にちゃぶ台返しを見舞った。この結果、水産庁はガイドラインの書き直しを全面的に受け入れ「丸呑み」する形で、修正を行う方針だという。
この動きには、この間、多数の説明会で水産庁幹部による改正漁業法の施行に関する説明を聞き、一定のコンセンサスをつくってきた現場の関係者が強い危機感をもっている。ここで信頼関係が崩れると、今後の施行に向けた説明会では再び混乱が生じ、水産庁が意図する「資源管理と成長産業化を両立する改革」が機能するのか、大きな疑問が持たれる。
そもそも政省令や告示などと異なり、ガイドラインに関してはパブコメをする予定がなかった水産庁が実施に踏み切ったのは、規制改革推進会議の農林水産WGの一部委員からの強い要請があったためで、改正漁業法の精神を現場の隅々に浸透させるには、ガイドラインを「国民」に開示し、内容を吟味しなければならないという強い改革の意志が働いた。
つまり、沿岸の漁協管理漁業権を抑制し、企業による養殖参入を促し、漁船漁業における零細経営の淘汰と企業的経営の強化を図るとの狙いを実現することが求められた。免許更新や競願については生産性の高い経営を優先し、漁場の「適正かつ有効な活用」の判断に「稼ぎ」の尺度を入れて整理するという論理である。
全体として漁協の漁場管理、例えば特定区画漁業権の廃止と「団体漁業権」の設定に関してなるべくその関与を抑制するのが改正漁業法の狙いで、その意味での規制緩和を貫徹するのが法律の施行面で担保する。こうした現状の漁場利用秩序の破壊は、「解釈」の違いを超えて法制度として完成されつつあるというのが現状の認識であり、現場で声をあげ、反対するしかこの流れは止められないし、その方向で漁協系統は結束すべきと考える。
年末閣議決定された31年度予算と30年度補正予算は、漁協系統・水産団体にとってどんな評価だったのだろうか?
11月〜12月にかけての臨時国会で、改正漁業法が成立した。水産庁が策定し、政府が認めた「水産政策の改革」にほとんど沿った中身で法案を国会で通した。強行採決こそなかったが、それに近い荒っぽい国会運営に終始し、衆参の農林水産委員会ではとても十分な審議が尽くされたとは言いがたい。
改正漁業法は、資源の数量管理を強化するTAC魚種の拡大、IQ(船別割当)の導入、沿岸漁場への民間参入を促す漁業権の優先順位および漁協が管理する特定区画漁業権の廃止、海区漁業調整委員を公選制から任命制に変えるなど、かつてない法制度の転換が行われる。首相が標榜する戦後レジームから脱却する70年ぶりの大改革が断行される。
漁業法から「民主化」の文字は消え、立法事実(法改正をする必要、現実的な背景)は明確化しなかった。水産庁は、詳細はすべて今後2年かけて整備する政省令で決めると何度も説明した。既存の漁業権を「適切かつ有効に活用」している漁協組合員には引き続き漁業権は安堵されると約束した。
これだけの法的な権利の後退を飲んだ漁協系統は、まさに断腸の思いだった。その代わり、概算要求で水産庁が出した3千億円は絶対に確保してほしいというのが本音だったと思う。
結果はどうだったのだろうか?当初(2,167億円)と補正(877億円)を合わせた水産予算規模は3,045億円。これに「既存基金の活用拡充分や他局計上の水産関係予算」を加えた総額で3,200億円と発表されている。前年度の30年度当初と29年度補正の合計は2,327億円だ。正規の予算3,045億円はそれに比べ1.3倍にすぎない。実は前年度の倍率も当初(1,772億円)と補正(TPP対策関連555億円)の合計は同じだった。
漁協系統は「騙された」のか?当初予算対比では2割程度増えたので、全く成果がなかったとは言えないが、補正はあくまで補正で、次年度にどうなるかはわからない。トランプ大統領の暴走で、株価、為替は乱高下し、燃油価格も上昇している。消費税を10月に増税した場合、景気対策でまた補正が組まれるかもしれない。しかし、当初予算で3千億円を確保し、改正漁業法の影響が続く今後半世紀くらいは、それ以上の予算規模を続ける。お金で換算すれば、それくらいの価値に相当する譲歩だったはずである。
沿岸漁場の将来を安く売ったツケが、新たな漁業の担い手に重くのしかからないよう改正漁業法の政省令はしっかり疑念を解決し、浜の意見が反映されるような歯止めをかける必要がある。