「教室の配置は日本ではどうなってるか?」「どう配置すれば学習効果はより上がるのか?」、「アドバイスをくれないか?」と校長先生のアピチャート氏は職員室の左側にある下級クラスの開き戸をあけながら教室に通してくれた。
硬いチーク材で作った二人掛けの机や一人用の机が教壇の方を向いて並べられている。これなら日本と同じです。私はこの点での知識がないので、よくわからない、と返答しておいた。余った机が南側に寄せられている。机の右上には紙の名札が張り付けてある。名前を覚えさせるためなのか、指定席で指導上の配慮なのかわからない。教室の中は壁は白く塗られているが窓は狭く、電燈もなく昼間から暗い。明暗よりも外気の温度や暑さを遮るための暗室のようである。床と床の隙間から光が差し込んでくる。
正面の壁には国王、軍人の写真が掲げられ、タイの三色旗の国旗も吊るされている。また、壁に限らず黒板の端、柱などに花の絵、世界の衣服、日本の絵葉書などが所狭しと飾られている。英単語がマジックで書かれた白い模造紙も張られている。田舎の十分な文明文化が行き届かない小学校での児童用のミュージアムのような機能を演出しているのだ。バケツで作った植木鉢もおいてある。壁にはスコップや鍬鍬、馬鍬、かごなども吊り下げてある。それぞれにタイ語でその名称が書かれている。あらゆる空間が様々な工夫を凝らしてあり、どうすれば児童生徒が知識理解を通して意欲を出すのか、学習効果があがるのアピチャート氏の精一杯の児童生徒への創意工夫に感服する。
職員室の右側には3,4年生の教室、そして保健室、図書館が共用する。保健室と言っても竹製のベット一個とカボック製の古汚い枕が置かれているだけだ。国連から寄付されたという医薬品が小さなビンに入れておいてある。図書館を観る。古ぼけてカバーのない書籍が2,30冊棚の上に積まれただけである。日本で読み捨てられた児童書、児童雑誌をぜひ機会があれば寄贈したいものだ。今は休校中だが、できれば一度授業も観てみたいものだと思った。
昼間であるが教室は異様に暗く異様な静けさであった。
ふと思った。田圃で水牛を追ったり、ニワトリやアヒルにエサをやったり、幼い赤んぼうを背負って家の世話をしている子ども達にとって、この学校こそがすべてもの広い視野を身につけ、社会に向かって世界に向かって準備する知識や技術を教わっていくセンターなのだ。この白いちっぽけな建物は、この辺りにとっては世界へいざなってくれるセンターなのだ。また、思った。教師たちは、どういう工夫や指導法でこうした子ども達に少しでも興味を持たせ効果の上がる授業をしているのか?
私はそうした授業風景に接することはできなかったが、あるアンケート調査を持参してきたのでアピチャート氏にお願いして実施してもらうことにした。(現在、手元にデーターを保管している)結果は別の機会に触れることにする。
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