その男、特大につき。
彼の名前は宮川大輝、弟の名はショウキ、すなわち帰納的に考えれば父の名は特大キとなる。実に面白い。
彼がマネージャーリーダーを務めることによりマネージャーの学生コーチ、クルーコーチとしての確かな威厳を護り部の秩序を正している。
普段はニコニコしており、どんなにくだらないうえに不愉快なギャグが蔓延していても怒ることはない。みんなが頼りにしている。
マネージャーなのに部員が足りないという理由で新人戦に後輩のために出るという男気を見せつけたこともある。その時には、ブレードを180度のまま水中に入れるという物理的にありえないことをしでかしていた革命児でもある。
遠征の時、ローヤー達が寝静まった頃、明日の準備に追われていた彼は慌ただしく準備をしながらも音を立てないようにそっと動いていた。
当たり前のことかもしれないがこのような些細だが大きな気遣いが出来るということもみんなの頼りにされる要因だろうか。
いかんせん、私はこれを見て彼の素敵さを垣間見た。
怪我をしている者が練習をしていたら、怪我をしているのによく頑張っているな、とかいうぬるい言葉などかけずに叱る。故障者の仕事はまずそれを治すことである、という当たり前のことを教えてくれる。
なるほど、慕われる理由が分かる。
どんなクルーでも手なづけてきた男は、最後に異端なフォアメンバーをまとめ上げ彼らに勝ちを教えてくれるはずだ。
この男が見ている以上、誰も舐めた漕ぎなど出来やしない。
大輝が特大輝になる時だ。