北欧スウェーデンの生き方、楽しみ方、生活・・・面白くつたえられたらいいな
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前回「氷のホテル」について書きましたが、その時の主目的はオーロラ見物。
だって、北欧に住んだら一度はオーロラを見たいと思うでしょ。
日本からのオーロラツアーは50万円以上するらしいし。
出発は、マルモ空港から火曜日の夜。
出発間際に空港の位置を地図で確認したら、思っていたより遠く間に合わないかもしれない。
そこで、地図上の最短距離の田舎道で行くことにしたのが、間違いだった。
スウェーデンの田舎道を甘く見てはいけない。
迷い込んだ挙句、最後には違法にすっ飛ばして、離陸10分前に空港に着いた。
あやうくチェックインできないところ。さすが、田舎の空港。乗せてくれましたけどね。
氷のホテルのあるキルナ空港に着くとすでに夜11時過ぎ。
流しのタクシーもない。レンタカーを借りてなかったら凍死していたかも。
氷のホテルを見物して、翌日、一路アビスコへ。
実は、事前に当時キルナのオーロラ研究所に勤務していた海老原さんからオーロラを見るならアビスコと聞いていたので、私たちは、予定を変更して、宿泊地をキルナからさらに100キロ離れたアビスコという町に変えていた。
そして、結果的にはそれが大正解だった。
オーロラを見るには、快晴と漆黒という条件がいる。
アビスコは、快晴率の高い地域なのだそうだ。
キルナはスウェーデン北部でも最大の街。
街の明かりの中ではオーロラは見えにくい。そのため郊外に移動して見学することになる。
そこへいくと、アビスコは王様の散歩道と呼ばれる国立公園に位置し、周りは何もないところである。
一番近い郵便局が100キロ離れたキルナと言うだけでもその様子が想像できるだろう。
夫の同僚のスウェーデン北部出身者が言うには、子供の頃、冬に隣町まで買い物に出かけるのが文字通り命がけだったのだそうだ。
何しろ隣町というのが何十キロも先。
ヘタをすると隣の家というのが20キロ先だったりする。
海老原さんにも、車の必需品として、シュラフ(寝袋)とアドバイスを受けていたくらいだ。
もし万一、車が故障でもしたものなら、凍え死ぬかもしれない。
携帯電話も必携だ。
事前の情報ではマイナス30度の中でオーロラを見るには、それ用の靴も必要と聞いていたのだが、衣類セットを貸し出してくれるのは犬ぞり体験者用だけだった。
つまり、犬ぞり見学料金に含まれる。
しかもアビスコではない。
我が家は車で移動だったので、外気に長い間立ち尽くすということがなかったが、もし、日本から来るのなら、足元はかなり厳重に固めた方がいい。
気温は低いが、風はないので、体感温度はそんなに厳しくない。
北極圏の人が、スコーネの風に当たると、寒くてたまらないと言うそうだ。
そして、ホットカイロ。シールで貼り付けるタイプを腰に貼っておくだけで、血行がよくなり暖かい。
日本ではホットカイロに感謝したことがなかったのだが、いやあ、今回はありがたさを痛感しました。
初日にぎっくり腰になったのに、ホカロン一晩で、翌日すっきり。
絶対にスウェーデンで商売になるよ。
さて、アビスコでは、アビスコツーリストというアウトドア愛好者用のユースホステルのような施設を利用した。
アビスコの宿泊所はここだけといってもいいかもしれない。
独立した2LDKのコテッジが当時は一泊6000円から8000円。
今は調べたら20000円ぐらいになっていた。
自炊になるが、快適。
個人だと、本館の宿泊施設も利用できる。
コテッジの相部屋という手もあるようだ。
ただし、料金は季節料金なので、夏はもっと高い。
なにしろ、釣りに山登りにトレッキングに最高のロケーションなのだ。
幸運にも初日の晩。満天の星空。
オーロラチェックに出かけた7歳の娘が、
「あまり星が多いので、宇宙にいるかと思っちゃった」
ぐらいである。
そして、北の空を見ると視野いっぱいに黄緑色の光のカーテンが。
オーロラである。
写真撮影には開放ができるカメラや三脚が必要ということで、最初から諦めていた。
オーロラって動くんですよ。(あ、知ってましたか)
パチパチと音がするというのは誤った情報だと海老原さんから。
ついでに寒くないと見られないというのも誤情報だそうだ。
寒い時でないと明るくて(北極圏だからね、陽が沈まない)見られないのは事実。
赤い色の時もある。
家族の感想
わたし「いやあ。感激。見られてよかった、普段の行いか」
むすこ「オーロラもいいけど、エルクを見た時の方が面白かった」
むすめ「ぼんやりとしていて、こんなもんかなあと思った」
夫「なあんだ、あんなもんか。あれなら、新宿のネオンの方がずっと綺麗だ」
この価値観の差。離婚は時間の問題かも。
4日目にもう一度、満天のオーロラを見て、我が家のオーロラ体験は終了した。
同じ頃にキルナに泊まっていた人は、見ることができなかったそうなので、やはり、プロのアドバイスどおりアビスコをお勧めします。
滞在中、道端でエルク(へらじか)の親子連れにも会った。
足を伸ばして100キロ先のノルウェーのナルビクまでもドライブした。
有意義な1週間だった。
北極圏の老年期の丸い山々の間を走っていくと、この厳しい環境の中でもここを動かずに生きている人たちの気持ちが少しわかるような気になる。
そのくらい綺麗です。
でも、やはり過疎化は進み、若い人たちはストックホルム方面へどんどん流出しているとのこと。
さて、これで終わったら我が家の旅行らしくない。もちろん最後のオチがある。
行きの飛行機で時間ギリギリでハラハラの思いをした私たち。さすがに学習した。
帰りは1時間の余裕を見て、アビスコを発った。
運悪く、その日だけ雪になった。
とはいえ、帰るだけだ。
国道で整備されている一本道。迷うことは絶対にない。
スピードを落として走れば大丈夫・・・なはずだった。
ところが、道の端に寄りすぎて、滑って路肩の斜面に突っ込んでしまった。
もちろん路肩は、深い雪。
とりあえず自力脱出を試みたが、前輪タイヤは、空回りするばかり。
助手席のドアは雪に阻まれ開けることさえできない。
飛行機の時間は迫る。
安売りチケットなので変更は聞かない。
焦る。
そうだ、携帯電話!
レンタカー会社に連絡しよう。
焦りのために押し間違いを繰り返したあとようやくかかった・・・と思ったら、テープの声が。
なんと、圏外なのだ。
さすが、北極圏・・・と感心している場合ではない。
どれだけ歩いたら人家があるかもわからないのだ。
とりあえず、夫婦二人で車を押してみる。
びくともしない。
言っても仕方ないと思いながら、口からは罵りの言葉が。
「だから、もっと、真ん中を走ってって言ったでしょ・・・」
結婚経験のある男性なら思い当たるだろうが、こういう時、妻って言っても無駄だとわかっていても、文句を言いたくなっちゃうのよね。って、え、私だけ???
空気は険悪。
その時、滅多に通らない北極圏の道路にかすかな振動が響いてきた。
あわてて、道路の中央に立ち大きく手を振る。
乗用車から降りてきた人たちは、どうやら軍人らしい3人組。
事情を話すとてきぱきと分担して動き始めた。
一人は走って道路を戻り、非常用の三角をおきに。
一人は牽引用の紐を取り出し。
一人はスコップを用意して、タイヤの周りの雪かき。
しかし、いかんせん深く雪にハマった車を動かすには、乗用車では無理だった。
と、そこへ、大型トラックが。
5人で手を振って止めると、彼も快く協力。
さらに、また一台の乗用車が。
その運転手も降りてきて、協力。
そして、無事、我がレンタカーは道路に戻ることができたのだった。
せっかく余裕を持って行動しても、最後には必ず焦る結果になるのは、もう、運命としか言いようがない。
しかし、スウェーデン人の暖かさが身に染みた。
道中、家族皆で
「もう、絶対にスウェーデン人の悪口は言ってはいけない」
と確認しあったのであった。
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