日曜日に、緊急訪問したのは、フットワークがいいのに仙骨部に褥瘡が出来ているSさん。
この前は、戦争のお話しをしてくれたばかりです。
ほとんど上皮化して良くなっっていた褥創ですが、ヘルパーさんが訪問すると、何故がガムテープがべったり貼ってあって、はがすと出血しているとか・・。
「モイスキンパットもガーゼももうなくなっています。」
と言う事で、急きょ訪問しました。
Sさんは、いつものように「やあやあ御苦労さま。お尻見るの?」って、見せてくれました。
せっかく上皮化していた皮膚は、再び擦り剥けて、血がにじんでいますし、周囲はガムテープでかぶれています。
以前どうしてもガーゼやフィルム材やデュオアクティブや、何を貼ってはがしてしまうおばちゃんがいましたが、フィルム材って私たちが思うより、違和感があるんでしょうか?
便器に座った時に、滑りが悪いのか、端がはがれてくるとペラペラして気になるのか・・・?
ヘルパーさんは、『前の処置(モイスキンパットにスキナゲートでの保護)のほうが、いじらないみたいです。』とのこと。
結局もとに戻しました。
ガムテープを付けたのは、やはり認知の妻。
愛をこめて、ティッシュのカスごとよれたガーゼの上から、ガムテープでばっちり固定してありました。
「ところで、Sさんその顔どうしたの?」
右耳から右の頬前面が赤紫になっています。
触ると熱感があり「痛いよ。」と言います。
ヘルパーさんから、「おととい、耳が痛いからって、いつもの内科の先生のところに行って、薬もらってきてましたよ。」
「耳?どれどれ?」
あらら、耳の後ろに何度も掻き壊して肥厚したカサブタがあります。
そしてそこから耳全体が腫れ、頬まで全部膨隆しています。
鼻はなんともなく、境界は鮮明。
カサブタから感染したことは間違いありません。
なにかな?蜂窩織炎?・・・って顔もなるのかな??
内科の先生に行ったときには、まだ耳だけだったみたいですが、「朝起きたらこんなになってて、びっくりしたよ~。触ると痛いんだよ~」と言います。
とりあえず、クラビットの処方を受けていたので、明日どうするか相談することとしました。
で、内科の主治医に、皮膚症状の拡大を報告して、皮膚科の受診の許可を得て、いつも的確に診断して下さる増田先生に電話をしました。
「丹毒ですね。昼過ぎに連れてきてね。」とのことで、ヘルパーさんにお願いしました。
結果は、やはり丹毒。褥創は今の処置でOKとのこと。
丹毒・・て何だっけ。前にもあったけど、蜂窩織炎みたいなものだったと思うんだけど・・・
もちろん、ケアマネさんもヘルパーさんも「え?なんですか?聞いたことないんですけど・・」って。
調べてみました。
丹毒:溶連菌が大小の傷口を通して侵入、真皮のリンパ管を侵し、菌の侵入後3~7日して発生します。顔面、頭部、耳介や外傷を受けやすい手足、臍部(さいぶ)、陰部などに生じやすく、皮膚病変の境界は鮮明で、赤みが強く、時に水ぶくれ(水疱〈すいほう〉)や小さなうみ(膿疱〈のうほう〉)がみられることがあります。焼けるような強い痛みがあり、しばしば発熱などの全身症状がみられます。
そうか、溶連菌感染症でした。たしかに境界鮮明です。
蜂窩織炎:主として黄色ブドウ球菌が小さな傷から直接、あるいは他の皮膚病変から2次的に菌が真皮に感染し、赤く腫れ上がります。病変は次第に拡大し、赤みが強くなり、硬くしこりを触れるようになります。また病変部は熱をもち、触ると強い痛みを感じるようになります。しかし丹毒と異なり、境界は不鮮明です。治療を受けないと病気が進行し、しこりの中心部の組織が死んで(壊死〈えし〉)腐ったようになると、しこりの中心部が軟らかくなり、うみ(膿)が一部の表皮を破って出てきて、潰瘍(かいよう)となることもあります。発熱などの全身症状を伴うこともありますが、丹毒よりはまれで、その程度も軽度です。しばしばリンパ管やリンパ節にも感染が波及し、リンパ管炎やリンパ節炎を起こします。下肢、とくに足の蜂巣炎の頻度が多く、その大部分は足の指の間に生じた水虫(足白癬〈はくせん〉)による傷口から細菌が侵入して生じたものです。
黄色ブドウ球菌、固いしこり、境界不鮮明・・・そうそう、足などカチカチになって、全体に赤くはれ上がりますよね。
発熱もよくあります。
蜂窩織炎は、在宅でもけっこうみられますので、早めの対応が出来ますが、丹毒は昔あったような気がしますが、今回勉強になりました。
ここで写真を載せる事はできませんが、明日はスタッフに良く説明して、ちゃんと判断して専門医に早くつなげられるようにしたいと思います。
ちなみに、本当は細菌培養で確定診断すべきところですが、培養待ってるとひどくなっちゃうので、臨床症状から判断して早期から適切な薬を所お包しなければなりません。
今回、クラビットから、ペニシリン系の抗生剤に変更になりました。
最近時々テレビなどでも話題になる、壊死性筋膜炎は、A群溶連菌などでもっと深部の感染をおこし、どんどん悪化して壊死を起こしていきます。
菌が嫌気性菌などで、ガスを発生させるものをガス壊疽と言って、とても危険な状況になり、命の危機にさらされます。
すごく昔、私が大学病院の整形外科にいたころ、このガス壊疽菌に感染した青年がいました。
彼は、雨の高速道路でスリップし、車の底が抜け片足をアスファルトに引きずった状態で数メートル回転して止まりました。
下肢は複雑骨折で開放創。足はあらぬ方向を向いていました。
救急搬送後、ゴールデンアワーと言われる6時間以内の創洗浄も行い、創外固定をされましたが、翌日くらいら皮下気腫のようなものが出現し、悪臭と共に創が壊死を始めました。
やがて、あっという間にそれは広がり、ガス壊疽と診断されました。
先生方も、実際に見た人は一人くらいしかいませんでしたし、減張切開を繰り返しながら、酸素のチューブを通したりしましたが(高圧酸素室は無かったので)効果なくせまりくる壊死の進行を止めるには、切断しかありませんでした。
この時の匂いは、一生忘れることは無いと思います。
病室から数メートル内は、この強烈な刺激臭で充満し、処置後などは部屋を出るなり嘔吐を我慢するように走り去るスタッフもいたほどです。
と、話がそれましたが、在宅でも早く気がつけば大事に至らない事はたくさんあります。
蜂窩織炎だって、丹毒だって、ひどくなれば入院して点滴治療が必要な事もなりますし、敗血症になる可能性だってありますので、介護職、医療職の皆様も、ご利用者さんや患者さんのお身体は、ちゃんとすみずみ監察しましょうね。
この前は、戦争のお話しをしてくれたばかりです。
ほとんど上皮化して良くなっっていた褥創ですが、ヘルパーさんが訪問すると、何故がガムテープがべったり貼ってあって、はがすと出血しているとか・・。
「モイスキンパットもガーゼももうなくなっています。」
と言う事で、急きょ訪問しました。
Sさんは、いつものように「やあやあ御苦労さま。お尻見るの?」って、見せてくれました。
せっかく上皮化していた皮膚は、再び擦り剥けて、血がにじんでいますし、周囲はガムテープでかぶれています。
以前どうしてもガーゼやフィルム材やデュオアクティブや、何を貼ってはがしてしまうおばちゃんがいましたが、フィルム材って私たちが思うより、違和感があるんでしょうか?
便器に座った時に、滑りが悪いのか、端がはがれてくるとペラペラして気になるのか・・・?
ヘルパーさんは、『前の処置(モイスキンパットにスキナゲートでの保護)のほうが、いじらないみたいです。』とのこと。
結局もとに戻しました。
ガムテープを付けたのは、やはり認知の妻。
愛をこめて、ティッシュのカスごとよれたガーゼの上から、ガムテープでばっちり固定してありました。
「ところで、Sさんその顔どうしたの?」
右耳から右の頬前面が赤紫になっています。
触ると熱感があり「痛いよ。」と言います。
ヘルパーさんから、「おととい、耳が痛いからって、いつもの内科の先生のところに行って、薬もらってきてましたよ。」
「耳?どれどれ?」
あらら、耳の後ろに何度も掻き壊して肥厚したカサブタがあります。
そしてそこから耳全体が腫れ、頬まで全部膨隆しています。
鼻はなんともなく、境界は鮮明。
カサブタから感染したことは間違いありません。
なにかな?蜂窩織炎?・・・って顔もなるのかな??
内科の先生に行ったときには、まだ耳だけだったみたいですが、「朝起きたらこんなになってて、びっくりしたよ~。触ると痛いんだよ~」と言います。
とりあえず、クラビットの処方を受けていたので、明日どうするか相談することとしました。
で、内科の主治医に、皮膚症状の拡大を報告して、皮膚科の受診の許可を得て、いつも的確に診断して下さる増田先生に電話をしました。
「丹毒ですね。昼過ぎに連れてきてね。」とのことで、ヘルパーさんにお願いしました。
結果は、やはり丹毒。褥創は今の処置でOKとのこと。
丹毒・・て何だっけ。前にもあったけど、蜂窩織炎みたいなものだったと思うんだけど・・・
もちろん、ケアマネさんもヘルパーさんも「え?なんですか?聞いたことないんですけど・・」って。
調べてみました。
丹毒:溶連菌が大小の傷口を通して侵入、真皮のリンパ管を侵し、菌の侵入後3~7日して発生します。顔面、頭部、耳介や外傷を受けやすい手足、臍部(さいぶ)、陰部などに生じやすく、皮膚病変の境界は鮮明で、赤みが強く、時に水ぶくれ(水疱〈すいほう〉)や小さなうみ(膿疱〈のうほう〉)がみられることがあります。焼けるような強い痛みがあり、しばしば発熱などの全身症状がみられます。
そうか、溶連菌感染症でした。たしかに境界鮮明です。
蜂窩織炎:主として黄色ブドウ球菌が小さな傷から直接、あるいは他の皮膚病変から2次的に菌が真皮に感染し、赤く腫れ上がります。病変は次第に拡大し、赤みが強くなり、硬くしこりを触れるようになります。また病変部は熱をもち、触ると強い痛みを感じるようになります。しかし丹毒と異なり、境界は不鮮明です。治療を受けないと病気が進行し、しこりの中心部の組織が死んで(壊死〈えし〉)腐ったようになると、しこりの中心部が軟らかくなり、うみ(膿)が一部の表皮を破って出てきて、潰瘍(かいよう)となることもあります。発熱などの全身症状を伴うこともありますが、丹毒よりはまれで、その程度も軽度です。しばしばリンパ管やリンパ節にも感染が波及し、リンパ管炎やリンパ節炎を起こします。下肢、とくに足の蜂巣炎の頻度が多く、その大部分は足の指の間に生じた水虫(足白癬〈はくせん〉)による傷口から細菌が侵入して生じたものです。
黄色ブドウ球菌、固いしこり、境界不鮮明・・・そうそう、足などカチカチになって、全体に赤くはれ上がりますよね。
発熱もよくあります。
蜂窩織炎は、在宅でもけっこうみられますので、早めの対応が出来ますが、丹毒は昔あったような気がしますが、今回勉強になりました。
ここで写真を載せる事はできませんが、明日はスタッフに良く説明して、ちゃんと判断して専門医に早くつなげられるようにしたいと思います。
ちなみに、本当は細菌培養で確定診断すべきところですが、培養待ってるとひどくなっちゃうので、臨床症状から判断して早期から適切な薬を所お包しなければなりません。
今回、クラビットから、ペニシリン系の抗生剤に変更になりました。
最近時々テレビなどでも話題になる、壊死性筋膜炎は、A群溶連菌などでもっと深部の感染をおこし、どんどん悪化して壊死を起こしていきます。
菌が嫌気性菌などで、ガスを発生させるものをガス壊疽と言って、とても危険な状況になり、命の危機にさらされます。
すごく昔、私が大学病院の整形外科にいたころ、このガス壊疽菌に感染した青年がいました。
彼は、雨の高速道路でスリップし、車の底が抜け片足をアスファルトに引きずった状態で数メートル回転して止まりました。
下肢は複雑骨折で開放創。足はあらぬ方向を向いていました。
救急搬送後、ゴールデンアワーと言われる6時間以内の創洗浄も行い、創外固定をされましたが、翌日くらいら皮下気腫のようなものが出現し、悪臭と共に創が壊死を始めました。
やがて、あっという間にそれは広がり、ガス壊疽と診断されました。
先生方も、実際に見た人は一人くらいしかいませんでしたし、減張切開を繰り返しながら、酸素のチューブを通したりしましたが(高圧酸素室は無かったので)効果なくせまりくる壊死の進行を止めるには、切断しかありませんでした。
この時の匂いは、一生忘れることは無いと思います。
病室から数メートル内は、この強烈な刺激臭で充満し、処置後などは部屋を出るなり嘔吐を我慢するように走り去るスタッフもいたほどです。
と、話がそれましたが、在宅でも早く気がつけば大事に至らない事はたくさんあります。
蜂窩織炎だって、丹毒だって、ひどくなれば入院して点滴治療が必要な事もなりますし、敗血症になる可能性だってありますので、介護職、医療職の皆様も、ご利用者さんや患者さんのお身体は、ちゃんとすみずみ監察しましょうね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます