こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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後悔する?しない?

2012-06-04 22:30:13 | 訪問看護、緩和ケア
生きていく中でも、人はよく「あの時、ああすればよかったのに。」「いや、あれはあれでよかったのだ。」なんてことを思案することがよくあります。

この仕事をする中でも、時々自分の対応に「あれで良かったのかな??」と自問自答することがあります。

何と言っても、人の命に関わる仕事なので、本当に考え込んでしまう事もありますが、どの方向から見るかによって、考え方は180度ひっくり返ってしまうので、結果としてプラス思考でとらえるようにはしています。
そうじゃないと、自分がこの仕事に向き合えなくなるからです。

たとえば、緊急電話がかかってきたときに、内容によって電話対応だけでよいのか、出動したほうがよいのか、その場で決めなければなりませんよね。

状況を電話口でよく確認することはもちろんですが、それでも思案することは多くあります。

たとえば
「退院後初めて高熱が出ました。
座薬を入れたけれど、これで様子を見ていいでしょうか?」と、ご家族から不安げな電話があったとします。
ベースの疾患にもよりますが、休日で病院はお休み、本人は動きたくないと言っています。
風邪症状はなく、とりたててほかに感染の兆候はありません。
熱以外は、変わらないとご家族も言います。

実際、易感染性はあるものの、外傷やポート、バルンなどもなく、排泄も順調で自覚症状がないとしたら、座薬で様子をみてもらうことにします。

病院に電話をかければ「じゃあ、病院まで来てください。救急外来で診ます。」と言われるのはわかっていますが、在宅療養をしていて、すぐに来てくださいといわれて、すぐに飛んで行けるひとは少ないのが現状です。
行ったはいいけれど、何時間も待たされて、へたをすると「なんで来たの?これくらいで。」とか言われたりすることもあって、簡単に病院に行ってくださいとは言えない場面が多くあるのです。
緊急訪問しても、訪問となればお金がかかりますから、そこを確認して訪問するかどうかも、判断する必要がります。

独居や介護力が低ければ、とりあえず伺う事が多いけれど、介護者がしっかりしていれば様相を見てもらう事が多いですね。

それでも、ベースの疾患によっては、翌日確認するまでちょっとハラハラすることがあります。

そして在宅によくある話として、本人の意思がはっきりしていて「病院は行かない!苦しくなくて痛くなければ、別に死んでも構わないんだ。」という場合です。
ヘルパーさんからは、「朝から」下血をしています。今回はこの前よりかなり量が多いです。」という連絡があったとします。
でも本人は「お腹も痛くない。気分も悪くない。平気だからこのままでいい!。」と、病院を頑として拒否します。
しかも、独居です。

強引に説得して、何が何でも救急車に乗せるか。
訪問やヘルパーを増やして、長時間誰かが滞在するか。
本人の意思に添って、様子を見るか。

貧血もかなり進んでいそうだし、下血が多ければショック状態にもなりまねません。
出来れば救急対応がベストでしょうが、ご本人が強い意志を持って「このままでいい。」と断言したら、さてどうしましょうか。

意識レベルは保たれていて、バイタルも安定、なにより本人の強い主張あるならば、やはり私は様子を見るほうを選んでしまいます。

フレッシュな下血で、原因がわからない不安があり、量が増えれば失血死の可能性も否定できないとしても、定期巡回のヘルパーさんに安否確認をお願いするしかないと思います。

でも、翌日の訪問まで下血が続き、いよいよショック症状が出始めると、さすがに病院に行く事を了承する事態になり、緊急入院、輸血となってしまったとしたら、様子を見たことに対して、後悔しますか?

私は、本人の強い意思に添ったこと。
ぎりぎりまで来ないと、本人は納得しない性格であること。
万が一の覚悟を、本人が持っていること。
などを考え、これで良かったのだと思います。

でも、これって誰がどこで考えるかにもよるのでしょうね。

こんな感じで、現場はいつも決断を余儀なくされるのです。
その重責は、時に訪問看護と言う職種を避けられる理由にもなります。

「あなたが、そうしろと言ったから!」「あなたの判断ミスでしょう?」

そう言われてもおかしくない、命の現場では多くのリスクを背負って考えなくてはならないのです。

自分の判断。
自信を持って言いきれますか?

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
訴訟 (Yamamoto)
2012-06-06 15:46:18
アルコール性肝障害の患者に、
禁酒を勧めたけど本人が守らず肝硬変へ移行。
本人家族から訴訟を起こされ、
もっと強く禁酒を勧められたら止められた。
止められれば肝硬変にはならなかったと訴訟。
結局医療サイドは負け、7000万円の損害賠償。
正しかったかどうかとは別に、
訴訟問題も絡んでくる難しい時代になりました(--;
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倫理上どうなのか・・・が指標です。 (ふわり)
2012-06-06 16:44:32
以前いた緩和ケア病棟では、患者さんが「死んでもいいから・・・」「これができないなら死んだほうがマシ・・」のご希望とそれをかなえるためには・・・スタッフのマンパワー・患者さんの安全を守る義務との折り合いをつける摺合せが日常でした。その中で、患者さんは「死んでも・・・」と言っていても、ご家族は同じようには思っていないことが多く、まれに実際に危険にさらされたときにトラブルになったこともありました。患者さんの気持ちに寄り添うことは大前提であるものの、私たちの身も守り、傷つかないようにしていくことも同じくらい大事なことであると実感しています。世知辛いようですが、必ずご家族にも同席してもらい、患者さんのご希望を自分の口で話してもらい、そのリスクがあっても・・・ということをご家族も同意しているのかを確認するようにしています。ただ、あまりにもリスキーなことは、いくらご希望でも看護の大原則である「安全」が守れないことは倫理上どうなのかと・・・立ち返るようにしています。それが難しいのですが・・・
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怖いですね、実際。 (こぶた部屋の住人)
2012-06-06 23:13:19
本当に、毎回摺合せに、苦慮します。
本人の意思、家族の意思、倫理的な視点からも、緩和ケアの視点からも考えながら、それでもどれが正しいかなんて、わからないことが多いですね。
それにしても、肝硬変の患者さんの例は、ひどいですね・・。(-_-;)
そんなの、どの病気にでも適応できそうで、医療者は怖くて、臨床なんてできなくなりますね。
小児科医や産科医が減っているのも、そういうことが原因と聴きましたが・・。

それを思うと、毎日が駆け引きです。
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