流言が生まれる根底に、人々の「不安」があります。また、流言には人々の隠れた感情を表出させる側面があります。
では、それにはどんなパターンがあるのか。
- 不安に抗して、自分を肯定・守るパターン
縁起かつぎやジンクスなど。
自己のおこる不幸を予防したり起きてしまった災難の救済 - 他者を肯定・守るパターン
病気に対する不安 → 「癌の少年バディ君のために絵葉書を贈ろう」という流言が流れて山のような絵葉書が集まった事件など。 - 他者を否定するパターン
他者を否定することにより自己を守ろうというパターン。
人種・民族・エイズ患者に対する差別流言など。今回の新型インフルエンザでも「関西に行かない方がよい」などトンデモ流言流れた。 - 自分を否定するパターン
不安を恐怖として明示し表出。自分の受けた被害を誇大に伝えたり、起きそうな災難を確実に起きることとして伝える。不安亢進の結果、誇張ともなって起こる。「感染列島」の根底に流れるのはこれか。
噂を聞いたとき、聞いた話を誰かに伝えたいと思ったとき、こういったパターンに合ってないか、いまひととき考えてみる・・・というのは、真偽の鑑別に有用かもしれません。 あるいは、このパターンを見ながら、自分をちょっと振り返って見るのも良いでしょう。「○○の人は汚い!」と思ったとき、聞いたとき、単純に伝えてしまえばただそれだけのことになってしまいますが、「アレッ、どうしてこんな風な気持ちになるのかな?」と振り返り、「そうか、自分は不安なんだ。だから、○○の人をおとしめて安心を得ようとしているんだ」と自覚できる一瞬があれば、次の行動が変わってくるのかもしれません。
参考
早川洋行:流言の社会学ー形式社会学からの接近ー 68-73 青弓社