・1月10日
10時の予約だったので遅れないよう早めに家を出る。キャリーバッグのモカは、はっきりした声で鳴いている。
具合が悪くなってからは、普段だと鳴くこともほぼ無いモカ。やっぱり病院は嫌だよね。
そういえば年末までは、朝、ケージの布を取ろうと近寄ると、中から鳴いて呼んでいたが、年明け後は全く声を聞かない。
ケージの布を取って声をかけても、返事もせず横たわっている事が増えた。ドキドキしながら呼吸してるか確認する為に様子を伺うのが日課。
お腹が上下に動いているのを見て、毎朝ホッとしていた。
車で30分程で到着。モカが鳴いてたのは最初だけ。バッグの中に手を突っ込み、撫でながらの道中。やっぱりただ力なく横たわっている。
病院は夜間救急もやっていて、施設も立派な所だった。受付を済ませじっと待つ。
呼ばれて診察室へ。助手?の若手の先生による問診。色々聞かれたけど「多頭飼いか?」「嘔吐、下痢の有無」あたりの質問はFIPを疑ってのものな気がした。モカは実家の猫屋敷出身。兄弟の中で一番弱々しかった(だから貰ってきたんだけどね)けど実家の20匹、FIPを発症した子は誰もいない。
そして我が家だって多頭飼いだし。この時「FIPにしちゃ進行遅い気もするし、可能性は低いよなぁ」と心の中で思っていた。
次に偉い?先生が登場。やはり脳神経の疑いが高い事。MIRを撮らないと詳しい事は分からない事。等々説明を受ける。
こっちはMIR撮る気持ちを固めてきたので同意してモカを預ける。「頑張れっ!」って声をかけ、しばしお別れ。
麻酔が醒めて検査結果が出るのは午後。2~3時になるという。早めの昼ご飯を食べに外へ。気分どんよりで正直、食事も美味しくない。ただ
メシでもたべて一服でもしないと間がもたない。1時半頃には手持無沙汰で病院に戻り待つことに。
3時には呼ばれるかと思ったけど、なかなか呼ばれない。後から検査を受けたであろう子達が次々帰っていく。麻酔後の覚醒が遅いのか?それとも
画像診断が難しくて結論になかなかいけないのか?不安は募るばかり。
4時頃ようやく呼ばれる。診察室に入った瞬間、中の空気が重い。ひと呼吸置いて先生が言ったのは「脳腫瘍でした」だった。
「あぁ、やっぱり・・・」と私は思った。脳神経の疑いが出た時点で、素人なりにあれこれ調べた。「前庭神経炎」だったら治る見込みあるなぁと期待を持ったりしたが症状が出てから長すぎる。眼振あるけど斜頸になってないし・・・脳でも耳の奥周辺の問題だったら治る見込みがあるんじゃないか?
手術できる場所っぽいし。とか、ステロイド注射してからシャキッとしてる日があったし、ステロイドが効くタイプの腫瘍の可能性もあるし!とか
望みをつなぐように、なるべく良い方へ考えようとしてきた。ネットの情報に振り回されて泣いたり期待したり。そんな私を見てダンナは「あんまり色々と見ない方が良いんじゃないか?」と苦言を呈したこともあったっけ。
先生は画像を見て説明してくれる。素人目にもすぐ分かる大きな腫瘍。脳の深く。脳脊髄液が流れる所をど真ん中で腫瘍が塞いでいる。
そのせいで脳がパンパンに浮腫み脳みそのシワが無い状態。脳圧を下げる為に打っていたステロイドは「全く効いていない」と言われてしまった。
それどころか腫瘍に圧迫された小脳が大脳へ食い込み、押された脳が頸の方へはみ出てしまっていた。「脳ヘルニアをおこしています」との事だった。
先生によると「大きな腫瘍を抱えていて、人間じゃ考えられないような状態でも歩ける子がいたりもする」らしいのだが、モカはもう歩けない。
それだけ早期発見が難しい病気だと言いたかったのかな。
先生は間を置いて、いくつか治療方法をあげた
「外科手術」
モカの場合脳の深部であるため、仮に手術しても助かる可能性が低い事。おまけに脳の手術ができるクリーンルーム等、設備の整った病院は日本ではほとんど無い。手術自体、日本ではほとんど行われてないし、現実味がない。
「外科手術で頭に穴をあけ管を入れ、もう一方をお腹へ入れる。溜まった脳脊髄液をお腹に流すシャント術」
これで脳圧は下げる事ができる。けども感染症のリスクもあり管は3ヶ月(だったかな?)位で交換が必要。
なにより腫瘍はそのままなので延命にしかならない。
「放射線治療」
人間と同じように腫瘍に放射線を当てる治療だけども、少しでも動いたらだめなので毎回全身麻酔。これを週1~2回(だったかな?覚えてない)動物の放射線治療できる病院は限られてて関東に2、3か所。予約1ヶ月待ちとも。
先生は少ない選択肢の中、あえて上げてくれたんだろうけど、この時点で絶望的と理解した。したくないけど理解した。
シャント術やれば、延命はできるかもしれない。モカにとって辛い症状も一時は楽になるのかもしれない。でもそれも一時凌ぎにすぎないのだ。
放射線の予約待っている時間はないことくらい、とっくに分かってる。
「・・・もういいです。家でゆっくり過ごさせてあげたいです。」と言うのが精一杯。
ただ「少しでもモカの体がラクなように」したいと加えた。
すると「注射をしてゆっくり眠るように・・・という方法もあります」と暗に「安楽死」の提案。
・・・人によって色々な考えもあると思います。その子の症状にもよるだろうし、私は安楽死を否定はしません。
ただ、この時の私の心の声 「そうじゃなーくーてー!緩和ケアって意味でーーー!」
悲しいの通り越して、「いきなりソコに話いくかい!」と頭ん中で突っ込みを入れておりました。
日に日に弱っていく子。次々と違う症状が出てくる可能性だってある。ありとあらゆる痛みに襲われてるかと思うと可哀想で見ていられない。
それなら眠るように逝かせてあげるのも飼い主の務め。そう思う飼い主さんだっている。その選択は間違いじゃないと思う。
ただ、この時の私は、「モカが苦しくて辛くてに絶望しているか?」と問われたら「否」と答えていたと思う。この答えは今も変わらない。
2ヶ月あまり看病していてモカは「ただ、「今」を受け入れて、「今」を生きている」ように思えたから。
うーん、上手く言えないけど。人間みたく「どうして自分がこんな目に」とか「早く楽になりたい」とか思ってないと感じたからかなぁ。
そりゃ想像を絶する頭痛とか得体のしれないシビレとか、幻覚幻聴とかあるかもしれない。歩きたくても歩けないもどかしさも。
苦しくないわけない。ずっと看てるんだもん。キツい時だって分かってるつもり。
日に日に弱るモカを看てて「可哀想」と思う事もあるけども「たくましさ」を感じたり、「悟ったような瞳」を見て尊敬してしまう事があったくらい。
安楽死は、やんわりお断りして「痛みの緩和を考えつつ残された日を過ごす」事にしてモカに「もう病院はおしまいだよ。嫌な事はもうしないよ」と声をかけ家路についたのでした。
先生は「今週っぱいがヤマ」との事。
そういえば「インターフェロン投与」を提案されなかった所をみると、脳腫瘍には効かないとみて良いのか?
あ、ちなみにこれも遠回しにですが「献体」も提案されました。
猫の脳腫瘍っていうのは高齢の子に多いのでしょうか?MRI確定診断までいく数が少ないのかもしれません。
モカは若いし、きっちり診断が出たので今後の研究、治療の発展を考えれば亡くなった後に献体して役立てて貰うのも良いのかもしれない。
ただ、心情としては無理。生きてる子の前で、その子が死んだ後のこと。まして嫌いな病院で死んだ後にまで知らない人に頭切られるなんて
・・・さすがになんにも返答できずスルーしてしまった。
10時の予約だったので遅れないよう早めに家を出る。キャリーバッグのモカは、はっきりした声で鳴いている。
具合が悪くなってからは、普段だと鳴くこともほぼ無いモカ。やっぱり病院は嫌だよね。
そういえば年末までは、朝、ケージの布を取ろうと近寄ると、中から鳴いて呼んでいたが、年明け後は全く声を聞かない。
ケージの布を取って声をかけても、返事もせず横たわっている事が増えた。ドキドキしながら呼吸してるか確認する為に様子を伺うのが日課。
お腹が上下に動いているのを見て、毎朝ホッとしていた。
車で30分程で到着。モカが鳴いてたのは最初だけ。バッグの中に手を突っ込み、撫でながらの道中。やっぱりただ力なく横たわっている。
病院は夜間救急もやっていて、施設も立派な所だった。受付を済ませじっと待つ。
呼ばれて診察室へ。助手?の若手の先生による問診。色々聞かれたけど「多頭飼いか?」「嘔吐、下痢の有無」あたりの質問はFIPを疑ってのものな気がした。モカは実家の猫屋敷出身。兄弟の中で一番弱々しかった(だから貰ってきたんだけどね)けど実家の20匹、FIPを発症した子は誰もいない。
そして我が家だって多頭飼いだし。この時「FIPにしちゃ進行遅い気もするし、可能性は低いよなぁ」と心の中で思っていた。
次に偉い?先生が登場。やはり脳神経の疑いが高い事。MIRを撮らないと詳しい事は分からない事。等々説明を受ける。
こっちはMIR撮る気持ちを固めてきたので同意してモカを預ける。「頑張れっ!」って声をかけ、しばしお別れ。
麻酔が醒めて検査結果が出るのは午後。2~3時になるという。早めの昼ご飯を食べに外へ。気分どんよりで正直、食事も美味しくない。ただ
メシでもたべて一服でもしないと間がもたない。1時半頃には手持無沙汰で病院に戻り待つことに。
3時には呼ばれるかと思ったけど、なかなか呼ばれない。後から検査を受けたであろう子達が次々帰っていく。麻酔後の覚醒が遅いのか?それとも
画像診断が難しくて結論になかなかいけないのか?不安は募るばかり。
4時頃ようやく呼ばれる。診察室に入った瞬間、中の空気が重い。ひと呼吸置いて先生が言ったのは「脳腫瘍でした」だった。
「あぁ、やっぱり・・・」と私は思った。脳神経の疑いが出た時点で、素人なりにあれこれ調べた。「前庭神経炎」だったら治る見込みあるなぁと期待を持ったりしたが症状が出てから長すぎる。眼振あるけど斜頸になってないし・・・脳でも耳の奥周辺の問題だったら治る見込みがあるんじゃないか?
手術できる場所っぽいし。とか、ステロイド注射してからシャキッとしてる日があったし、ステロイドが効くタイプの腫瘍の可能性もあるし!とか
望みをつなぐように、なるべく良い方へ考えようとしてきた。ネットの情報に振り回されて泣いたり期待したり。そんな私を見てダンナは「あんまり色々と見ない方が良いんじゃないか?」と苦言を呈したこともあったっけ。
先生は画像を見て説明してくれる。素人目にもすぐ分かる大きな腫瘍。脳の深く。脳脊髄液が流れる所をど真ん中で腫瘍が塞いでいる。
そのせいで脳がパンパンに浮腫み脳みそのシワが無い状態。脳圧を下げる為に打っていたステロイドは「全く効いていない」と言われてしまった。
それどころか腫瘍に圧迫された小脳が大脳へ食い込み、押された脳が頸の方へはみ出てしまっていた。「脳ヘルニアをおこしています」との事だった。
先生によると「大きな腫瘍を抱えていて、人間じゃ考えられないような状態でも歩ける子がいたりもする」らしいのだが、モカはもう歩けない。
それだけ早期発見が難しい病気だと言いたかったのかな。
先生は間を置いて、いくつか治療方法をあげた
「外科手術」
モカの場合脳の深部であるため、仮に手術しても助かる可能性が低い事。おまけに脳の手術ができるクリーンルーム等、設備の整った病院は日本ではほとんど無い。手術自体、日本ではほとんど行われてないし、現実味がない。
「外科手術で頭に穴をあけ管を入れ、もう一方をお腹へ入れる。溜まった脳脊髄液をお腹に流すシャント術」
これで脳圧は下げる事ができる。けども感染症のリスクもあり管は3ヶ月(だったかな?)位で交換が必要。
なにより腫瘍はそのままなので延命にしかならない。
「放射線治療」
人間と同じように腫瘍に放射線を当てる治療だけども、少しでも動いたらだめなので毎回全身麻酔。これを週1~2回(だったかな?覚えてない)動物の放射線治療できる病院は限られてて関東に2、3か所。予約1ヶ月待ちとも。
先生は少ない選択肢の中、あえて上げてくれたんだろうけど、この時点で絶望的と理解した。したくないけど理解した。
シャント術やれば、延命はできるかもしれない。モカにとって辛い症状も一時は楽になるのかもしれない。でもそれも一時凌ぎにすぎないのだ。
放射線の予約待っている時間はないことくらい、とっくに分かってる。
「・・・もういいです。家でゆっくり過ごさせてあげたいです。」と言うのが精一杯。
ただ「少しでもモカの体がラクなように」したいと加えた。
すると「注射をしてゆっくり眠るように・・・という方法もあります」と暗に「安楽死」の提案。
・・・人によって色々な考えもあると思います。その子の症状にもよるだろうし、私は安楽死を否定はしません。
ただ、この時の私の心の声 「そうじゃなーくーてー!緩和ケアって意味でーーー!」
悲しいの通り越して、「いきなりソコに話いくかい!」と頭ん中で突っ込みを入れておりました。
日に日に弱っていく子。次々と違う症状が出てくる可能性だってある。ありとあらゆる痛みに襲われてるかと思うと可哀想で見ていられない。
それなら眠るように逝かせてあげるのも飼い主の務め。そう思う飼い主さんだっている。その選択は間違いじゃないと思う。
ただ、この時の私は、「モカが苦しくて辛くてに絶望しているか?」と問われたら「否」と答えていたと思う。この答えは今も変わらない。
2ヶ月あまり看病していてモカは「ただ、「今」を受け入れて、「今」を生きている」ように思えたから。
うーん、上手く言えないけど。人間みたく「どうして自分がこんな目に」とか「早く楽になりたい」とか思ってないと感じたからかなぁ。
そりゃ想像を絶する頭痛とか得体のしれないシビレとか、幻覚幻聴とかあるかもしれない。歩きたくても歩けないもどかしさも。
苦しくないわけない。ずっと看てるんだもん。キツい時だって分かってるつもり。
日に日に弱るモカを看てて「可哀想」と思う事もあるけども「たくましさ」を感じたり、「悟ったような瞳」を見て尊敬してしまう事があったくらい。
安楽死は、やんわりお断りして「痛みの緩和を考えつつ残された日を過ごす」事にしてモカに「もう病院はおしまいだよ。嫌な事はもうしないよ」と声をかけ家路についたのでした。
先生は「今週っぱいがヤマ」との事。
そういえば「インターフェロン投与」を提案されなかった所をみると、脳腫瘍には効かないとみて良いのか?
あ、ちなみにこれも遠回しにですが「献体」も提案されました。
猫の脳腫瘍っていうのは高齢の子に多いのでしょうか?MRI確定診断までいく数が少ないのかもしれません。
モカは若いし、きっちり診断が出たので今後の研究、治療の発展を考えれば亡くなった後に献体して役立てて貰うのも良いのかもしれない。
ただ、心情としては無理。生きてる子の前で、その子が死んだ後のこと。まして嫌いな病院で死んだ後にまで知らない人に頭切られるなんて
・・・さすがになんにも返答できずスルーしてしまった。