・1月13日
昨夜の様子が心配だったが朝6時30分頃、いつも通りむぎに起こされて起床。ちびむぎに朝ゴハンをあげてからモカのケージの布を外す。
・・・良かった、息してるね。昨晩から寝てる姿勢が一つも変わってない。少しの動きも出来ないくらい弱っている様子。
上に掛けた毛布も全く乱れてない所をみると、手足も全く動かないのか。
時々見せていた、伸びをするような動き(発作の一種かもしれないけど)それすら出来ないよう。
バッタリと横になったまま、目は開いてる。虚ろに見える。意識レベルも低そう。
「モカちん、おはよう。ホカペの上に行こっか?」と声をかけながら慎重に移動。そーっとそーっと。
叫び声をあげさせる事なく移動完了。ホッとする。ケージ内を確認すれども、オシッコした形跡は無かった。
寝かせて、しばらくの間ナデナデ。「調子どう?・・・良いわけないっか
そうだ、お水でもいかが?」なんて声かけたりして。
耳が反応してる所みると、「なんかどうでもいい事言ってるっぽいなぁ」とか思いながら聞いてたりして。
「ちょっと待っててね」と言いつつ、お水を準備。ぬるま湯を染み込ませたコットン、ぬるま湯を入れたスポイトの二つを用意。
その時に、以前購入してちょっと試して「効果ないなぁ」と、そのまま冷蔵庫に保管してあったフラワーレメディを思い出す。
何種類か買った中で、レスキューレメディを手にモカの元へ。「ちょっとでも楽にならないかなぁ」とか思いながら。
まず、ほんの一滴スポイトでお湯を口元にたらしてみる。・・・無反応。私も諦めが悪い。どう見ても舐める元気なんてないのに。
「やっぱり無理だよね」と思いつつ、濡れコットンで口元を拭う。レスキューレメディも一滴垂らし、そこをコットンで拭いてみたり。
相変わらず反応はほぼ無いまま。「もういっか?」とお水終了。コットンにはやっぱり茶色い汚れがついてた。
撫でながら、しばし様子見。時々目を閉じたり、なんとなく開いてみたりしてる。
あーあ、後脚がすっかり細くなって、こんなに縮こまっちゃって。脚しびれないのかなぁ?前脚は中途半端に伸びたまま、なんだか固まっちゃってないかい?でも毛並みは綺麗だよねぇ。とても病猫とは思えないくらいツヤツヤだよ。
私の強制給餌がヘタなせいで、いっぱいペーストこぼしちゃったから首元の毛がガビガビになっちゃったねぇ。これ拭いても取れなかったんだよ。
ん?でも、なんだかちょっと綺麗になってる。・・・そっか、病院で全身麻酔した時に看護師さんが綺麗にしてくれたんだねぇ。すごいね、至れり尽くせりじゃん。
朝、父ちゃんが出掛けて落ち着いた頃、輸液しよっかね。んー、でもお腹を下に寝られるかい?首持ち上げるの無理だし。どうしよっかねぇ。
なんて事を頭の中でつぶやいたり、声に出して言ってみたりしてた。
7時40分頃
モカの目がカッと開く。体がビクビクし始める。「あぁ、痙攣始まっちゃった」と焦る。私が初めて目にする痙攣発作。
昨日、病院で輸液指導を受けた際、先生に確認していた。「これから痙攣が出てくる可能性もありますよね?」
応えはイエス。目の前で発作を見たことが無かった私は念の為に対処法を聞いておいた。
普通は1分とか短い発作が単発から始まって、次にそれが1時間とか数十分置きの間隔で増えたりするらしい。
そんなにしょっちゅう発作が起きるのは、本人もキツそうで嫌だなぁと思った。その1分~2分の発作も長く大きい発作になると、いよいよ危ないらしい。
「念の為。あくまで念の為の、お守り代わりに発作止めのお薬下さい。」と言って、座薬を1つ貰っていた。
「座薬入れるタイミングはどれ位ですか?」と聞くと「2分待っておさまらなかったら入れて下さい」と言われた気がする。
あぁ、モカがガクガクしてる。待って、待ってね。1分・・・うんうん、キツいよね。もうおさまるからね。頑張れ。
・・・2分。・・・ん?おさまんない?!ちょっ!分かった、今、今、お薬入れるから。待ってね、待ってね!
動揺して袋の封がうまく破けない。モタモタしてるうちにモカの痙攣がひどくなってきてしまった。
シッポの毛が逆立ってタヌキのシッポみたいになってる。ここまで逆立った事今までで初めてって位。
そうこうしてたら失禁。初めて目にするモカの失禁。
やっと袋の封を切り座薬を入れる。早くっ、早く効いて!
痙攣はおさまるどころか更に激しくなる。「あぁ、もうだめかもしれない」
縮こまって固まってるはずの後脚が激しく動く。何もしてやれない。発作中は触っちゃだめって言うけど無理。両手でそっと触れる。
私の前腕にモカの後脚のキックが当たる。こんな風に蹴り蹴りされたのなんて、いつ以来だろう。
なんか涙出てきた。慌てて隣の部屋で寝てるダンナに声を掛ける。「ねぇ起きて!モカがもう行っちゃう!」
布団がモゾモゾ動く音がした。起きてくると思ったら起きてこない。なんでよ?こんな時に!
後で聞いたら私の声が何故か「ねぇ、むきがいたずらしてるよ」に聞こえたらしい。寝ぼけてたのか、はたまたモカのミラクル技なのか。
今にして思えば、この時ダンナは起きなくて良かったと思う。モカの苦しそうな姿を見ないで済んだ。
ダンナは身近でペットを見送った経験が無い。痙攣してる姿を見たら、きっとしばらくは精神的にショックで立ち直れなかったかもしれない。
麻痺してたとは思えない力で、後脚の蹴り蹴りが続いた。目は見開いたまま。3分・・・4分?
思わず頭を撫でながら「もう、いい。もう頑張るな。もう頑張らなくていいから」と言った。
それから少しして、急にモカの体から力が抜けた。手足がだらんとした。
え?!逝っちゃったの?!いや、発作が止まったのかな?! 動揺してすぐには判断できない。
モカの顔をみる。目は開いたまま。瞳孔が開いて黒目がまん丸、大きく見える。え?!それでも判断できない。
慌ててお腹に顔を寄せて、呼吸を確認する。・・・お腹は動かない。
「・・・あぁ。モカは逝ってしまった」
体を撫でるとまだこんなに温かいのにね。まったくもう、そんなに目を開けたままじゃあ、お目目が乾いちゃうじゃない。
まぶたに指を当てて目を閉じさせようとする。けど、うまく出来なくて指を離すと開いてしまう。しばらく指を添えて押さえていた。
お湯で濡らしたタオルで体を拭いてやる。ほーら、反対向きになっても、もう痛くないね。
固まってた脚も、ようやく伸ばせるね。前脚の汚れも綺麗にして。モカは綺麗好きなのに、寝たままオシッコやらウンチは嫌だったよねぇ。
オシリも綺麗に拭こうね。あぁ、脱力しちゃったから、しっかり入れたつもりだった座薬がポロッと出てきちゃってる。もう必要ないね。
まだシッポがタヌキだよ?もう逆立てる事なんかないんだよ?シッポの毛並みも整えて・・・
そうだ、仕上げはトリートメント効果?のあるウェットシートで拭いてあげよう。ほら、自慢の毛並みがツヤツヤだねぇ。
体はちょっぴり薄くなっちゃったけど、こうやって見ると元気な頃のモカそのものだよ。
お口周りもコットンで綺麗にしよう。これでようやく好きなフードがいっぱい食べられるようになったね。
強制給餌始めて以来すっかり嫌われちゃってたけど、もう抱っこしても良いかな?モカは膝の上とかお腹の上とかでフミフミするの好きだったねぇ。
久しぶりだぁ。もう、いっぱい撫でちゃえ。嫌なら元気な頃みたいに「あんっ」って鳴いてもいいけど、さすがにそれは無理か。
「モカ、よく頑張ったね。すごい頑張った。お疲れ様」
ガラスのハートだ。繊細だ。気弱だ。なんて散々言ってたけど、最後の最後のモカは本当に格好良くて男前だった。最高だった。
そうだ、ダンナを起こさないと。「ねぇ、モカが逝っちゃったよ」泣きながら伝えた。
慌てて起きてきたダンナに「抱っこしてやって」と言う。モカを膝の上に乗せたダンナ、男泣き。
「元気な頃、安心しきって脱力したまま膝の上で寝てるモカそのもの」の姿で、逝っちゃったのが嘘みたいに思えたって。
気づいたら8時半まわってた。今日は仕事にならない。私は慌ててお客さんにメール。以前から事情を知ってる方だったのが幸い。快く了承して貰えた。ダンナも仕事先に休暇の連絡を入れていた。そこでポツリと「本当に今日、休む事になるとは思ってもみなかった」と言った。
モカは聞き分けが良すぎて「今日しか休めないんじゃあ、今日旅立てば見送ってもらえるのかぁ!」って、うっかりな勘違いをしたのかも?なんて言って、ちょっと後悔してたよ。「そういう意味じゃなくって、1日ゆっくり一緒にいられるのが今日くらいかなぁ」って意味だったのに。
全く、早とちりのミラクルなんだから。さすがモカ。なんてね。
この日を出発と決めたり、ダンナが起きなかったり、(私が見る限り)初めての痙攣発作で潔く旅立ってしまったり。まるでモカがそうしようって計画してたみたいだ。ん?私がやる自家輸液が嫌ってのもあったのかな?
仕方なく覚悟を決めて用意してあった箱に、モカがよくフミフミしてたお気に入りのピンクの布を敷く。その上にモカを寝かせる。
「ポーズ決めて入ろうね」後脚、前脚をそっと曲げてまぁるく寝る格好にする。まだあんよもお腹も温かいのになぁ。ほらほら、また薄目開けてる。
ちゃんと寝なさい。ゆっくり寝ていいんだからね、と時々瞼を押さえる。ようやく閉じてくれた。
体の上には、これまたフミフミしがいのありそうなブルーの毛布を掛ける。これでフミフミ三昧だぞー。
ちょっと冷たくて嫌だろうけど我慢してね。と保冷剤をお腹のあたりに入れた。
箱に入ったモカの近くにちび、むぎが時々近寄って見てる。でも覗きこんだり、毛繕いしようとしたりはしない。
もしかしたら、猫同士でとっくにお別れの挨拶は済んでいたのかもしれない。
そうだ、今日は良い天気だし、随分長いこと2階に行ってないね。久々にお家探索しよう!箱に収まったモカを抱いて2Fへ。
「ここで日向ぼっこしたよねー。ほら、父ちゃんの椅子、ここも好きだったねぇ」「ランニングマシーンの上でゴロゴロするのは、モカの得意技だったね。ほら、久しぶりだね」「ここで夜は母ちゃんと一緒に寝たよねぇ。フミフミしたもんねー」ひと回りして階段を降りる。
モカは抱っこされながら階段を降りるの好きだったなぁ・・・
泣いて腫らして顔のまま、花屋で小さな花束を買ってきた。王子な感じのモカには黄色の花がよく似合う。棺の中に添える。
火葬業者に連絡を入れた。午後にできるとの事。本当はもっと一緒にいたいけど仕方ないね。予約を入れた。あと少ししか一緒にいられない。
予約時間近くなって、そろそろ出掛けようって頃、最後にもう一度だけと思って棺から出して抱っこした。もうだいぶ冷たくなってて手足は石みたいに固まってた。なんだかこの時になって「モカは旅立ってしまったんだなぁ」と実感した。
「さて、最後のお出掛けだよ」と言って出掛けた。火葬場に着いたら、控室で線香を焚いてくれてしばらくお別れの時間をくれた。
この頃には少し落ち着いていた。勿論うっかりすると涙は出て来てしまうけど。
「モカ、次のターンで待ってるからね。次回は丈夫で長生きできる体でおいでね」「次を楽しみにしてるからね!できたら分かりやすい毛柄で!」とナデナデ。
この場に来てまでモカに無茶振りするしょうもない飼い主。「次」は我が家とは限らないし「分かりやすい毛柄」ってなんでしょう?
うーん、今思うとモカにとっては迷惑な注文か?でも、この時は本気で言ってた。これで終わりにしたくなかったから。
2時間位かかるというので、一旦二人で家に戻り再び火葬場へ。運ばれてきたモカはすっかり白いお骨になって帰って来た。
ダンナと二人で骨壺へ。1個1個の骨がしっかりしていて「まだまだ若かったのにな」と思わずにはいられなかった。
小さな壺に収まったモカを連れて家に帰った頃には、もう日も暮れかかっていた。
さぁ、お家だ。もうこれでゆーーーーっくり休めるよ。
今、モカはリビング全体が見渡せる所にいる。もうケージに入る必要もない。みんなと一緒だね。
モカと一緒にいられて最高に楽しかった。私もダンナも最高に幸せ者だ。
大好きなモカ、本っっ当にありがとう!!!