ぜひ球児のみなさんに読んで戴きたい・・・
野球人である前に人として・・・
技術より大切なこと・・・
それは人への思いやりの心を持つこと、人への優しさや礼儀。
そして、自分自身を鏡に写し、人として大事なことが何かを気付くことで、今以上に成長した自分がそこにある。
福島県にある私立高校野球部の監督さんの心の日記より~人として光る物を持てる野球選手に~
監督さんの承諾を得て全文をご紹介していと思います。
球児のみなさんには、一緒に夢追いかけている仲間や、同じ目標を持って日々がんばる同志たちに
皆が、ここに出てくるAくんのような人としての優しさを持ち日々を送ってもらいたい、
Bくんのような気付きが大事なことを感じてもらいたい、そんな気持ちでこの記事を書いています。
~監督さんの日記より~
今日は、Bチーム1試合目の主審をやりました。
さすがに2試合はできませんでしたけどね。
公務があることを言い訳に・・・
さて、私普段は立場場、公務優先のために日頃から毎日練習に行けるわけではありません。
なので、新入部員の顔も名前も一致しません。
(私自身が、声をかけて入部をしてくれた部員や古くからの知り合いのお子さんを覗いて)
なので今日のような日は、新入部員の顔と名前を一致させるとても良い機会なのです。
本当は、ゆっくり一人々と面談形式で話を聞いたりしてみたいのですが、なかなか時間が取れません。
前置きはこの辺りにしておきまして・・・
その1年生部員が中心になって編成しているBチームの主審をやったわけですが、
「おっ!」と目を引く部員が数名いました。
身体つきも例年になく大きいような気がします。
レギュラーは難しくても、Aチームに混ぜて試したくなるような部員も数名います。
私の持論ですが、「Bチームが強い時は、Aチームも強い」です。
知らず知らずのうちに競争意識のようなものが高まるのでしょうね。
過去の実績から言ってもそうでした。
そんなことを考えながら、それと同時に自分のアキレス腱の心配をしながら(笑)
主審をしていたわけですが、一人の新入部員のことを私は気になり、ずっと見ていました。
試合終了後、ミーティングが行われました。
次のようなことを言いました。
「初めてフルでしかも間近に君たちのプレイを観たわけだが、非常に楽しみだ。
君たちが力を付けて、Aチームに居る者達を脅かすような存在になれば、きっと、うちの野球部は強くなる」
その後、個人名を出して(背中に名前が書いてあるので言えました)
それぞれの良いところ、そして、これからどんな事を取り組んでいけば、益々、力が付いていくかという
アドバイスをそれぞれにしました。
「最後に今日の試合で最も先生が気になった1年生部員は、A君だ」
部員達は「えっ!」っていうような顔をしていました。
本人も「えっ!!」ってみたいな~(笑)
なぜなら、A君はこの試合中、ずっとバットボーイをしていた子なのです。
きっと部員達は、投打に活躍していたB君の名前が呼ばれるのだろうと思っていたはずです。
でも、私はB君のことは一切、触れませんでした。
さて、A君をなぜ、最上位で話をしたかと言うと、A君はずっとバットボーイしていたわけですが、
自チームの打者が打ったバットを取りに来ると同時に相手キャッチャーがそこに置いていったキャッチャーマスクを
必ず拾うのです。
ただ拾うのではなく、自分のユニフォームで拭いて渡していたのです。
「どうぞ」と必ず一言つけて・・・
最初の1イニングなら誰でもできるでしょう。
でも、A君は、それを1イニングから9イニング、約2時間、一度も欠かさずやり通したのです。
これは、なかなかできるものではありません。
1度くらいは、つい忘れてしまうかもしれません。
まぁ、9イニングやり通したということは、1度も試合に出場できなかったということでもあります。
つまり、野球のプレイ上での能力は低いのかもしれません。
確かに体ひ細く、小さいです。
でも、私の中では、30名近くいる新入部員の中で最も最初に印象に残った部員となりました。
さて、投打に活躍をしたB君のことをなぜ一度も触れなかったかというと、
試合前のことですが、部室からグランドに出ていくB君を見ました。
その時にB君は、ダラダラと行動していたのは言うまでもなく、
目の前に落ちていたボールに気付いたのにも関わらず、それを拾わず、素通りしたのです。
そのボールを拾ったのも、B君の後ろからダッシュで出てきたA君でした。
投打に活躍してチームの勝利に貢献したB君のことをミーティングに登場させなかったのは、
そんな背景がありました。
しかし、B君を登場させなかったら、彼の自尊心は傷ついたままになってしまうことを考え、
ミーティング終了後、個人的に呼んで、話しをしました。
納得していたようなので、今後のB君の行動に注目していきたいと思います。
A君のような人間性とB君のような高い野球センスを持ち合わせた部員(選手)を育てるのが理想です。
間違っても「野球だけうまければいいでしょう」なんて考える部員にはなって欲しくないと思っています。
私がこの野球部を創部した時にもその思いは強く「勝つだけで良し!のチームにはしたくありません」と公言してあります。
私学野球部は、それをスルーしがちです。
私は気を付けたいと思っています。
それで勝てなかったら、それでもいいのです。(甘い!と言われそうですが)
と同時に、私はこれからも地道に裏方の作業を嫌がらずやっている部員や野球プレイ以外の部分で
光る何かを持っている部員たちを見て評価をしていきたいと思っています。
2試合目、バットボーイのA君は、8番セカンドで出場の機会をもらいました。
(お昼を食べながら、前もってコーチに進言しておいたのです)
そのA君のところに3回打球が飛びました。
うち2回はエラーをしました(笑)
でも、それでいいのです!
体も小さく練習中もほとんど目立つことのない、たまに混ぜてもらったノックでは、
エラーばかりしていたA君に対して、チームメイトも自然に距離を置くようになっていたようですが、
この2試合目はエラーをしても何をしても
「大丈夫だ!気にするな!次!次!」
「さっき褒められたんだから、自信持って、やれよー!」
などと声をかけていました。
なんだか、久々にホノボノとした穏やかな気持ちで野球を観ることができました。
以下は、監督さんの選手に対しての想いです。
私的には、「こうあるべきだ!」というよりも「こうありたい!」と思っています。
スポーツですから、勝つことは大切です。
上手になることも大切です。
しかし、他の部分も大切だと思うのです。
どっちが大切!とは言えませんが…
出逢った野球部員が全員、プロ野球の選手になれるわけでもなく、野球で飯を食っていけるわけでもない。
部員のそのほとんどが、最終的には社会に出て社会人として働いて、生活をしていくわけですね。
だから、そこの礎を作ってあげるというか、自分軸を太くしてあげるというか、
そこが我々、高校野球の指導者の仕事だと思うのです。
確かに、勝って甲子園にも行きたい、できれば出逢った部員の中から大学や社会人、プロで活躍するような選手も育てたい。
でも、そこにばかり、重きを置くと、B君の怠惰を見逃すようになってしまう。
それではいけないと思うのです。
B君が社会に出た時に嫌な思いをしないように、人様に後ろ指をさされないようにするためには、
今、彼の前に立ちはだからなければいけないんだと思うのです。
そして何よりもA君のことのような子を闇に葬るわけにはいきません。
野球センスが無くても、彼のような子は、どこかで檜舞台に上がってもらうような演出をしてあげたいとも思います。
ただ、A君は、もっともっと野球の技術を向上させる努力をしなければいけないです。
ひたむきに…。
偉そうなことを書いてますが、甲子園常連校校の監督さんには
「勝てないことを理由に人間教育を盾に言い訳しているだけだ。」と言われそうですが、
そういう言葉は甘んじて受けまし、批判やら抵抗をするつもりはありません。
私自身、まだまだ未熟な身。
色々な方々のアドバイスやご助言を頂きながら、これからも部員や生徒と共に成長していきたいだけです。
私は、このような監督さんの想い、考え方、接しかたに共感しました。
彼らにとって、長い人生の中のこの3年間より、その先の人生の方が遥かに長いのは誰もが分かることですね。
だからこそ、この3年間の中で「人として」を身に付けて羽ばたいて欲しいという願いと想いが、私にはすごく伝わってくる
監督さんの言葉です。
勿論、高校球児が目指す目標を達成することも、達成するための努力も大切だと思います。
勝負事、勝つことで自信が生まれ、夢を叶えるために苦しい練習にも立ち向かう忍耐力を付けて欲しいのも、
これからの人生で、嫌な事をすぐ投げ出さない人間になるために必要なこと。
そして、人は人に支えられ生きていかなければいけない・・・
そのためには、人への思いやり、優しさは最も大切なことだと、私も監督さんと同じ考えです。
この監督さんとの出逢い、そしてこの文章(想い)と出逢いは、もう少し続く私の子育ての素を再確認できた
貴重な出逢いです。
とても長くなりましたが、最後まで読んで戴いたみなさん、ありがとうございます。