私がこの場所へ居るのはあと4イニング・・・
4回攻守交替の僅かな時間、近くに居らしたお母さん方に集合していただき思い出一枚
一番前の笑顔が嬉しかった。
・・・これでもう大丈夫。
東兵庫大会 決勝進出を懸けて市立尼崎と村野工業との準決勝
村野工業が2回 東崎投手のヒットをチャンスメイクとし、
山本選手の全力疾走が内野安打先制タイムリーを生んだ。
3回 1番一針選手のヒットをきっかけに、好調の3番中根選手がヒットで繋ぐと
市立尼崎は竹中投手より小森投手へマウンドを託した。
その直後、村野工業は相手ミスから追加点をもらい2得点のリードを取った序盤。
イニング間に小さな流れが行ったり来たりする序盤だったが、
中盤戦は大きい流れが行ったり来たりやってくる。
互いに夢懸ける気持ち溢れる熱い中盤戦の戦いとなった。
2018 煌夏 第100回全国高校野球選手権 東兵庫大会準々決勝 市立尼崎vs村野工業~決勝進出を懸けて 序盤戦~
4回表 市立尼崎の攻撃
5番白石選手のレフト前ヒットに、6番森田選手の犠打
さらには7番佐藤捕手が四球を選び1死1、2塁をつくり
8番小森投手の初打席
小森投手の打球はショートへ
Wプレイで守って魅せた。
4回裏 村野工業の攻撃
私がこの場所に居るのはあと3イニング・・・
4回先頭は7番東崎投手を三振、8番山本選手をショートゴロに、
9番一柳投手をサードフライ 小森投手が仕切り直した。
5回表 市立尼崎の攻撃
一つ目の大きな波がやってくる。
先頭は9番中村選手をセカンドゴロに取るが、1番東野選手が四球を選び出塁
2番中田選手がレフト前ヒットで続く
1、2塁チャンスを広げ2番松田選手
松田選手のショートゴロに二塁フォースアウト
Wプレイを狙うも松田選手は残り1死1、3塁
ここで村野工業は一柳投手から東崎投手へバトンが渡った。
一柳投手には珍しく6四死球と苦しい場面もあったが、力投2安打無失点
背番号では無く、マウンドに立つ者がエース よく頑張った。
東崎投手との勝負は4番名田選手
3打席目4番の意地 4球目をライトへ運び2-1とした。
主将が届ける勇気 力をもらう。
続く5番白石選手が四球 2死満塁
6番森田選手への死球で2-2同点に辿り着いた。
がんばれ!
さらに2死満塁と続き、7番佐藤捕手のセンター前2点タイムリーで逆転!4-2
水田選手が勇気を届けにマウンドへ
2死1、3塁 8番小森投手
フルカウントまで粘るもファーストフライに取りスリーアウト
市立尼崎の逆転で空気が一変した。
が、しかし・・・
二つ目の波には村野工業が乗る。
「波やろう!」
お母さんがそう声を上げて下さった。
間近で見上げる赤い波は力強く綺麗だった。
この場所に居るのは、あとこのイニングだけ・・・ビデオに残しておこう
そんな気持ちでビデオを回し始めた。
1番一針選手のレフトオーバー2ベースヒットをチャンスにし、2番神澤選手の進塁打
3番中根選手の左中間へ2ベースヒットで4-3と迫る。
4番永田選手は死球で出塁し、5番高橋(憂)選手のセンター前ヒット!
繋がりを魅せ1死満塁
6番田口捕手がセンター前へ同点のタイムリー!4-4
7番東崎投手のセカンドゴロに併殺崩れの間、逆転のホームを永田選手が踏む。5-4
さらには8番山本選手のライト前タイムリーで6-4と突き放す。
この後、9番藤原選手を三振に取り長い長い攻撃が終わった。
凄い勢いで進む展開に、何がどうなって誰がどうしてというのも実はあまり記憶にない。
終わった時は放心状態で、後ろに居た3年生選手の汗だくの笑顔を見て、
涙が流れたことだけは記憶に残る。
そのくらい、甲子園を目指すってこんなに凄いことなんだと、
今さらながら感じた衝撃的な時間だった。
お互い懸ける大きな夢がある。
選手たちがこんなにも熱く強い気持ちを魅せてくれたことに本当に感動した。
特にスタンドに居た3年生応援プレイヤーたちは、もう一度この瞬間を見て
始まった夏の瞬間と、この瞬間の自分とでは心の置き方、
向き合い方が違うことを今一度気付いてもらえたら嬉しい。
市立尼崎の応援スタンドの中には残念ながら入ることはできないが、
市立尼崎の応援プレイヤーたちも、同じ感動を感じながら懸命に応援したに違いない。
夏が終わり、その後いろいろな場面で悩むことや前へ進みにくい時、
私にはこの12分間を何度も見返し、自分への勇気、やる気となっている。
これからも絶対に忘れない大事な時間、貴重な経験をさせていただいた。
村野工業が再逆転
逆転を信じ流れた真っ赤な波が力を貸してくれた・・・と今も信じている。
5回が終了し、私は決めていた通り一塁側市立尼崎スタンド近くへ場所を移した。
お互いの意地が詰まる5回の攻防に、まだドキドキした気持ち収まらない中
後半戦がスタートした。
3つ目の波は6回表 市立尼崎の攻撃にすぐやってくる。
先頭9番中村選手のライト前ヒット!
1番東野選手が送り、2番中田選の打球にミスを誘う。
中田選手の盗塁で1死2、3塁を作り、3番松田選手へ。
じぶんでは記憶がないけれど、この瞬間手が止まってしまっていたのだろう・・・
見返してもここまでの写真は1枚も残せていなかった。
松田選手が打席に立つこの瞬間からの記録を再び残し始めている。
松田選手の打球はレフトへ!再び同点の2点タイムリー!6-6
4番名田選手の打席 PBで二塁に進むと
名田選手は再び東崎投手を捉え、右中間へ特大の二塁打を放って魅せた。
市立尼崎が再々逆転 7-6
気持ちを整えて がんばれ・・・がんばれ
先輩たちも静かに見守っていた。
一年前の夏 彼らの目先の先には道才投手が居たな・・・と想い浮かべる。
続く5番白石選手が四球を選び1、2塁
がんばれ・・・がんばれ・・・がんばれ
続く6番森田選手のライトタイムリー!8-6
さらに続く7番佐藤捕手のレフトオーバー2点タイムリー!10-6
試合中、私はスタンドからグラウンドでプレイする選手には絶対に声援も含め声を出さない。
でもこの時、思わず東崎投手に「がんばれ」と声を出してしまいそうになる。
それをしてはいけない・・・
ふと我に返り
秋からずっと我慢して頑張って、ようやく掴んだエースナンバーなんだろ・・・と心で叫ぶ。
それを1番知っている監督さんが、打たれても打たれても今キミをマウンドから降ろさない意味が分かる。
最後まで絶対替えないだろうな・・・監督さんらしいなと、そう思った。
「あいつを降ろす時が負ける時」
後に監督さんが残された言葉を目にして、やっぱりなと思った。
敗れたら意味がない・・・そう考えて笑う人もいたかもしれない。
でもそれが厳しくとも、みんなの頑張りに寄り添う監督さんだ。
その心を感じて、がんばれ!と心の中で声をかけ、
私もどっしり気持ちを落ち着けて9回が終わるまで静かに見守ろうと思った。
この後、8番小森投手にスリーバントをさせずアウトをひとつ増やす。
9番中村選手の打席 村野工業のスタンド選手たちが静かに立ち上がった。
中根選手に驚いた。
この瞬間、どんな心があったかは知る由もないけれど・・・
中根選手らしい一面だなと感じた。
WPで三進するが、レフトフライで踏ん張った。
市立尼崎打線の凄さは、こことなれば一気にやってくる。
打者一巡、この回だけで5安打6得点を挙げ二度目の逆転
再び空気を大きく変えた。
6回裏 村野工業の攻撃
小森投手は仲間の強い気持ちに背中を押されるように、
力強く村野工業打線を次々と抑えていった。
1番一針選手をピッチャーゴロ、2番神澤選手をライトフライ
3番中根選手をサードゴロに。
大きな波がやってきた中盤
逆転に次ぐ逆転で10-6 今度は市立尼崎がリードを取った。
市立尼崎打線が再び猛威を魅せた終盤戦へ・・・続。
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