医大生・たきいです。

医大生的独言。

【キミスイ】「君の膵臓をたべたい」ヒロインがもつ膵疾患の鑑別を考えてみた

2016-05-16 22:07:55 | 読書感想文

筋トレ後の風呂ほど気持ちいいことはありません。医大生・たきいです。





君の膵臓をたべたい
住野 よる
双葉社


話題作の「君の膵臓をたべたい」。ちょっと前から泣けると話題の作品。しかし医療関係者的にはおやおや、と思うところは多々あって、それを指摘する声も。

この作家さんのデビュー作『君の膵臓をたべたい』(キミスイ、と略すようですね)は、実のところ私にはあまりピンと来ませんでした。いわゆる「難病もの」だっただけに、医学生として「突っ込みどころ」を色々見つけてしまい(失礼、)十分に作品に入り込めなかった覚えがあります。
【本】また、同じ夢を見ていた(住野よる) より引用―トリおんな(22)の医学生日記

一応医学生のわたくしも「突っ込みどころ」にはいくつか気が付きましたが、そんなことは気にせず
号泣しました。

GW期間の混んでいる新幹線の中で。今思うと完全にヤバい人だった。文系人間の本領を発揮しました。まだ先がある女の子の死って無条件に泣きます。石田衣良の「美丘」とか。俺って医者に向いてないんじゃないか、とかいろいろ思うところはありますがそのへんはさておき、心が洗われる作品ですのでまだ読んでない方は是非お手に取ってみてくださいませ。そしてまだ読んでいない方はこの先読まない方がいいかもしれません。

「また、同じ夢を見ていた」も気になりますね。今度読んでみよー。本著の作者の住野よるさん、今気になる作家です。

また、同じ夢を見ていた
住野よる
双葉社








さてさて、キミスイの膵疾患って一体何?というのは医学生であろうとなかろうと気になることかと思います。因みにわたくしもド文系の母に「これって何ていう病気なの?」と聞かれ「分からん」と答えました。笑

文学作品への冒瀆のような気もするけれど、ここはひとつ推理を始めてみようかと。

まず最初の「突っ込みどころ」としては、膵疾患ってそんなに若い人がなるの?っていうことです。例えば、日本膵臓学会が最近出してた論文をチラ見してみると、膵臓癌の若い患者群は40歳未満(※)に設定されていました。しかも3万超えの症例数のうち、40歳未満は1.5%に過ぎません。女子高生の膵臓癌の症例とか超激レアに違いありません。超激レアだからこそ小説になる、っていうのはあるかもしれないけど。
※Clinicopathological Characteristics of Young Patients With Pancreatic Cancer: An Analysis of Data From Pancreatic Cancer Registry of Japan Pancreas Society.Pancreas. 2016 May 11.


さておきまずは患者である「君の膵臓をたべたい」のヒロインを簡単にプレゼンテーション。

17歳女性
【主訴】「私は、あと数年で死んじゃう。(p.18)」身体的症状については特に記載なし。
【現病歴】
 13~15歳時にある膵疾患を指摘され、「余命数年」とかかりつけ医より説明を受け通院中である。「ちょっと前まで判明した時にはほとんどの人がすぐ死んじゃう病気の王様だった。」と本人は自身の抱える疾患について認識しており、現在は病について受け容れられている様子である。症状の訴えは特になく、定期通院で治療継続でフォローされている。ただし治療の内容に関しては不明。
【既往歴】
 糖尿病合併?
「リュックの中には、数本の注射器と、見たこともない量の錠剤、使用法の分からない検査機器」(p.106)
「数本の注射器」とは、インスリン自己注射のことか。
「見たこともない量の錠剤」とは、旅行のために大目に持っていただけか。
「使用法の分からない検査機器」は筆者には見当つかずだが、簡易血糖測定キット? 確かにケースに入っていると見た目はゴツいように見えるかも。
【生活歴】家族4人暮らし。
【家族歴】小説本文上特に記載なし

普通の医者はまずは「主訴」から疾患を推定していくけれど、今回は「臓器」から疾患を想起しなければいけないところが難しいところか。腹部CTの画像とか見たいけどあるわけない(笑)。CTの読影しないと先に進めない小説とか嫌ですしね。本文上は症状の言及がほとんどないけれど、ヒロインは自身の体調について強がっているだけという可能性はある。物語上、本疾患に対する対症療法は進歩したのだそうで、治療介入により症状がほとんど抑えられているとのこと。正直ここがマジかよって感じではあるし、治療の副作用も特にないっていうのも、使っている薬をさらに想定しづらくなるわけで絞り込みにくい。

さて、既に答えが出ない予感がプンプンしておりますが闘って参ります。鑑別疾患しらみつぶしには、ご存知VINDICATE+P。もしやPsychogenic?と逃げたくなってきましたがそれでは記事になりません。経過が長いことから、血管性病変、感染症等は考えにくく、
  ・腫瘍性
  ・慢性炎症
  ・内分泌疾患
あたりを主に考えてみましょうか。糖尿病の合併は怪しいとわたくしは読んでいるのだけれど、いずれかのグループに属する膵疾患により2次性糖尿病を続発したしても大きくは矛盾しなさそう。

<鑑別疾患>
#1 膵癌
合う点>極めて予後不良なこと。教科書的には早期診断が難しいことがその原因とされていて、前述の論文(※)でも40歳以下の群では見つかったときには既に進行癌のケースがさらに多いとのこと。
合わない点>原則的に高齢者の疾患。初期には症状が出ないことも多いだろうけれど、診断から数年経って何も自覚症状がないなんていうことはあるか。腹痛、背部痛、黄疸とかはあってもよさそうなもの。それに化学療法開始していて外来受診だけなんてことある?

#2 膵嚢胞性疾患
予後不良なものとしては、主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍あたり。
合う点>画像所見が我々の手元にないから捨てきれないところ(笑)。
合わない点>IPMNの好発は高齢男性、MCNの好発は中年女性。

#3 慢性膵炎
合う点>膵疾患であるところ(笑)
合わない点>アルコールも胆石も関係なさそう。女性だし特発性だと良心的に解釈しても、この年齢と経過で非代償期まで進行しているとは考えづらい。

#4 自己免疫性膵炎
合う点>ステロイドによる治療がうまくいっていて症状が抑えられているとすれば、元気そうにしているヒロイン像とは矛盾しない。苦しいか。笑
合わない点>治療開始しているならばすぐに死ぬ病気ではない。

……他にもあるのかもしれないけど、よくある疾患の典型例では決してないことは明らか。そもそもそんな病気あるの?という疑問が拭えません。先天性の疾患になんかあったりするのかね。身体疾患がはっきりしなければ精神科疾患を考え始める、までありえる。



【結論】キミスイの疾患、ぼくには分かりません
ギブアップです。どなたかご教示お願いいたします。






(本当はこんな暇なブログ書いていないでレポート仕上げないといけない人(笑))

千葉と東京の境目がよく分からない

2016-05-15 23:59:59 | グルメ

混雑していて座れない夜の下り列車、ドアの隅に体をもたれかけながらあと何分で着くとひたすら考え続ける。この時間の進まなさには絶望感が漂う。こういう感覚他にもあった、そうか、術野で何やっているのかさっぱり分からなくなってしまった時のオペの見学と一緒だ。電車の窓にうつる自分は大層不機嫌な顔をしているが、オペ室でもマスクで顔が隠れているとはいえこんな顔しちゃっているのかもしれないと少々反省したわけです。医大生・たきいです。





錦糸町で用事があって、錦糸町に昔住んでいた人に「錦糸町で外せない飲み屋を教えてくれ」とLINEで尋ねてみると、隣の亀戸まで一駅電車に乗りなさいと指示を受ける。分かりました。


開店後割とすぐに行ったのだけれどすでに待ちの人が。食べログも3.6点とある。これは期待が持ててきた。一緒に列に並ぶ男は大学の違う後輩で、明日眼科の試験とか言っているので待ち時間には試問を始めた。私自身酒を飲みながら先輩からポイントを教えてもらいながら勉強を教わっていた時間がこれまでの勉強で一番効率が良かったので(笑)、少しでも後輩にも還元できると嬉しいものだ。


焼く。忙しそうにしている店員さんから、「この店火事になるから火はすぐ氷で消せ」との指示が店の中で何度も飛ぶ。排気の設備が攻めている分危ないとみた。


珍しい部位のお肉もいただいて、また一週間頑張る精をつけたのでありました。





(錦糸町って千葉だと思っていた人(笑))

手持ちのファイルでまさかの再会

2016-05-14 23:59:59 | 医大生的生活

去年書いたブログ「伝統の一高二高定期戦」のアクセスが上がっていて、どうも検索流入が増えたっぽい。なるほど、今年もめでたく開催されたようですが、今年は我が母校が惜しくも敗れたとのことで早速各方面で肩身の狭い思いをしております。対戦成績31勝31負9分らしいですが流石の伝統であります。来年はなんとか都合をつけて観に行こうかな。医大生・たきいです。




東医体の任務が無事に終了しました、とあちこちで言って回っているものの、実はここだけの話まだ自分の仕事が遅いせいで引き継ぎが少々残っている。膨大な資料の整理をして後輩に渡す予定。ファイルは重すぎて添付できないのでUSBに入れて手渡しという原始的方法を取らざるを得ない。圧縮するのもダルいくらいいろいろあるわけだ。いやはや本当に大変な仕事をしてきたものだ。

昔の資料を漁る。10年近く前の資料なんてもはや削除して引き継いでもいいんじゃないかと思いながらも、過去の先輩方の苦労の陰が浮かぶWordファイルの山を開いてみるのはちょっとワクワクする。すると、どこかで見覚えのあるお名前が。よくよく見ると、何年か前の病院見学でお世話になった先生ではありませんか。それも一番運営がキツいと噂されるあの競技。「この業界狭すぎ」と言われて久しいけれど、まさかこんなところでお会いするとは思いませんでした。

こういうお仕事は1年1年の密度がものすごいので、「○年前」だなんてそうそう容易く語れるものではないのだけれど、大きな時間軸で当時はまだ学生だったあの先生と現在とを繋いでみる。すると案外結構あっという間に時間が過ぎる気がして。あっという間に自分も医者何年目とか名乗っているのかもしれない。残された時間であんなに立派な先生に自分もならないといけないのかと思うと急に不安になってきたけれど、先輩方が歩んでこられた道をこれまでは自分も一歩一歩着実に進んでこれたのではないかと少しは自信を持ってもいいのかもしれない。なんて思いながら、自分が作った資料も引き継ぎファイルに加える作業に戻った。






(チャリ鍵紛失して困っている人(笑))

りんごとアップル

2016-05-13 23:59:59 | 医大生的生活

レジさんに微笑みかけたつもりだったのに、「なんだその人を馬鹿にするような目は」と返されて辛くなりました(笑)。医大生・たきいです。




ileusとイレウス。この疾患を表す言葉は欧米圏と日本とでアルファベットなのかカタカナなのかの違いがあるだけのように思う。ところが、欧米圏で言うところのileus=麻痺性イレウスということらしく、カタカナのイレウスの方が包含関係としては大きな集合ということになるんだそうだ。こういうのって歴史的な背景から教えてくれたら忘れずに記憶に残るんだろうけれど、とりあえず今のところはへーっという感想を抱く。



ここから先はなかなか共感してもらえない話。「りんご」と「アップル」、指し示すものは同一であるはずだが、言語が変わるだけで味のイメージが変わってしまうのは私だけか。どうも「アップル」と言われると砂糖が加えられているかのような印象となる。アップルパイという名詞が諸悪の根源か。アップルジュースというのもいろいろ加えられていそうな気がする。だからこそ“100%”という前置きが時に必要となってくるわけだ。おっと、りんごでも同じことではないかというツッコミで議論が崩壊しかけている気がするがここは気にしない。対して「りんご」と言われると新鮮なイメージが頭に広がる。アップルを丸かじりするのはなんだか気がひけるけれど、りんごならば喜んで丸かじりしたくなる気がする。

私自身、英語を日常で使う経験が乏しすぎて直観として混乱してしまうのかもしれない。「アップル」という単語を自由自在に使えていないという可能性はある。アップルという単語で躓いているようではお先真っ暗だが笑ってはいられない英語力である気はする。

まさかりんご―アップル関係がイレウスーileus関係と等しいということはありやしないだろうが、外国語は意外な意味を持っていることが少なくない。私にとって外国語はあくまでも外国語、独りよがりにならず謙虚に向き合っていきたいものである。そうした姿勢を持っておかないと誤解してしまうことがあるので。






(あまり外科系にときめかない人(笑))

女子校の肩揉みサービスと東大美女の件

2016-05-12 23:59:35 | 医大生的生活

久々に筋トレしたら、部屋に帰って横になってから再び立ち上がれず二日連続の寝落ちと相成りました。医大生・たきいです。





今ネットで話題の「東大美女がフライトのお供企画が中止」というやつ。テレビでも放送されていて、それには東大美女たちのお顔にぼかしが入っておりました。ぼかしが入ると余計に趣向を勘違いしてしまいそうです。そういうお店なのかと。笑



高校3年の秋頃、友達と他校の文化祭回りをしてーーそれが浪人した原因だという話しもあるがーー女子校がやってた模擬店の食品を買ってくれたら肩揉みサービス!という企画にホイホイ釣られた記憶がある。若いお姉さんが親切にしてくれるというだけでビジネスとして成り立ってしまうものなんだと思う。

とはいえこの企画にはネットを中心にかなりの批判が集まったのだそう。性を商品として売るとは何事か!と言われたら企画側はこのご時世反論できなさそうだ。今でも女子校の肩揉みサービスってやってるのかな…。

今回企画が取り下げられた一番の原因は、ネットの普及ということに尽きるのではないかという気もする。ネットがなかった時代にはちょっとした「失言」は見過ごされなかったことにさせられていたはずだ。それがいまや、知らなくてもいい人にまで話が広まってしまうのだ。誰だって他人の価値観に共感できないことはあるだろうけど、認められない考え方を潰そうとしても仕方がない。自分が関わらなければいいだけではないか。そういう人もいるんだね、と心の中でだけ冷たい視線を送ってやれば事足りる話である。

発信者側の愚かさだけが取り沙汰されているが、受信者側は氾濫する情報にのみ込まれているということはないか。






(熊本の焼酎3本目に突入した人(笑))