第４章 手術 １９．

１９．
　退院手続きや会計のため出たり入ったりしていると、廊下で元のルームメイト、Kさんに会った。看護師につき添われ、歩行訓練をしているところだった。同室だったときよりやつれて顔色も悪く、歩くのもやっとという感じだ。きっと抗がん剤治療を受けたのだろう。歩けないほど衰弱してしまうのが辛いと、Kさんがこぼしていたのを思い出した。

　荷物をまとめていると、テレビカードの度数が残っているのに気づいた。払い戻しできるようだが、さほどでもない。Kさんに使ってもらおうと思った。彼女の部屋に行くと、生憎不在。メモを添えてカードをテーブルに置いた。Kさん、さようなら。どうぞ、お元気で！　退院後も通院が続くから、また来ますね…。

　夫が来るまで気合を入れて推理小説に取り組む。どうがんばっても終えられそうにはないのだけれど…。と、やはり途中で夫が迎えに来た。う～～～ん、いいとこだったのに！なんちゃって。

　病院からの帰り道、１週間ぶりにマイカーの車窓から外の景色をながめる。今日も天気が良く、絶好の花見日和だった。桜は盛りを過ぎたかもしれない。退院できたことは本当に嬉しかった。でも、なぜか、空の青さが異様にまぶしく、桜の華やかさがうとましいくらいに感じられた。

　帰宅するとほっとして、力が抜けて、しばらく動けない………入院中手首につけていたピンクのリストバンドがそのままであることに気づき、外した。そのとき、この１週間持てる気力と体力をふりしぼって過ごしていたことに、私は初めて気づいたのだった。最初の告知からちょうどひと月が経っていた。


-------------- notice --------------
　これにて「第４章　手術」が終わりです。ご愛読に心から感謝しております。
　次回より「第５章　放射線治療」をお届けします。
　なお、５章に入る前に連載を少し休みます。再開後、引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

　重要な補足：「少し休む」って、どれくらいか未定です！　調子に乗って写真アップばかりしているうちに、肝心の闘病記がおろそかに...ストックがなくなってしまったのです　♪ただそれだ～け～よ～♪　
すみまっせ～ん