「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
さきはひはここにこそあれ一つ灯に 親子五人夕餉たのしむ
長野県上田市材木町 佐藤 暢一
私は喧噪な現実から常に平和を宝石のように拾い歩く人生の旅人を探求する。
けたたましい自動車のサイレン、電車の軋み、ペーブメントを往来する下駄、靴、そしてステッキのタクト......交通量の総音がジャズだ。
そうした雑風景な雰囲気をよそに、ここはまた時代から脱皮したようなちつぽけな世界がある。
繁華街に隣る狭苦しい裏通り!
百軒長屋のような、そこに住む人々は、羅宇やさん、バタやさん、紙芝居やさん...等、等、等、
だが、それはなんという和やかな、静かな人々の集いであろうか。
破れ障子から垣間見れば、貧しい灯の下に睦まじく語らいつつ夕餉をしたためている、あの敬虔な五つの影法師―
私は、そこに耐乏日本の在り方を凝視する。
(暢一)