弁護士の同級生からの情報を紹介します。
昨年の5~9月に、「日本弁護士連合会」(日弁連)が憲法の詩を募集していました(募集要綱についてはこちらをご覧ください)。
そして、大賞に選ばれた尾池ひかりさん(小学生)の詩『わたしのねがい』に、作曲家の谷川賢作(Wikipedia)氏が曲をつけて「憲法ソング」が完成し、さらに、12月1日開催の表彰式イベントで、現代詩を歌うバンド「DiVa」によって初披露されました(その映像がこちらで見られます)。
表彰式のレコーディング版(CD版)や楽譜も見られます。詳しくはくだんの日弁連のサイトをご参照ください。また、大賞作品以外の子ども達の詩もすばらしいので、ぜひこちらをご覧ください。
改憲を推し進めたい安倍首相がよくいうことは、「現憲法はアメリカの押しつけである」ということ…でも、その言葉こそ、押しつけの詭弁に他ならないと私は思っています。
自由民権運動の時代に作られた全国の民権結社は2,000を超えていましたし、全国で作られた私擬憲法は90にも及ぶといわれています。その中でも代表的な「五日市憲法草案」(千葉卓三郎起草)も、土佐の自由民権運動から生まれた「東洋大日本国国憲案」(植木枝盛(えもり)起草)も、イギリスの人権思想を反映した民主的な草案でしたが、明治政府による民権運動への弾圧とともに、一旦埋もれてしまいました。不運なことに、二人とも30代で夭逝(ようせい)してしまいましたし…。
千葉卓三郎は、10年もの学問遍歴の中で、蘭学・医学・国学・ロシア正教・儒学・キリスト教まで学んだ人です。ルソーの『社会契約論』・モンテスキューの『法の精神』・フランス革命時のロベスピエールの演説にも目を通し、くだんの憲法草案を作っています。そして、植木枝盛は、千葉との交流の後、草案を書き上げています。
一旦埋もれた植木の「東洋大日本国国憲案」は、昭和に入って憲法学者の鈴木安蔵によって発見され、敗戦直後に鈴木らが作った「憲法研究会」は、植木の草案をワイマール憲法・フランス憲法・アメリカ憲法などと比較しながら、9年にわたって研究を深めています。
そうしてできた憲法草案にGHQが注目しながら憲法草案を作成、日本国憲法が作られたというのが大筋だと、私は理解しています。しかも、植原悦二郎や吉野作造らの学者の文献が戦前にアメリカで出版されており、それを基にGHQが立案していたという事実も知られています。また、幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)元首相が、現憲法の立案、特に九条の成立に大きな役割を果たしたとされていることも、忘れてはなりません。
(以上は、映画「太陽と月と ―私たちの憲法の人々の情熱―」や東京新聞、地元の有識者から得た資料や情報を基にまとめています。)
こういう客観的事実には一切触れず、また、アメリカの押しつけの最たる例である原発や米軍基地、日米地位協定などは押しつけとは言わずに、憲法だけをアメリカの押しつけであると強調して繰り返すのは、国民にこの詭弁を事実であるがごとくすり込み、改憲に誘導しようとしているとしか私には思えません。早大教授の水島朝穂氏は、自民党の憲法九条の改案について、「真の狙いを正面から説明せずにごまかす『フェイク改憲』だ」と言っています(2018年3月31日付東京新聞朝刊より)。
今年は参議院議員選挙が、ひょっとすると衆参両議員選挙が実施されますね。小選挙区制という、ある意味でまやかしのような制度、でも、与党自民党にとっては好都合な制度を強い味方にして、安倍政権は目標に向かって邁進することでしょう。注意深く政権の言動を見守っていないと、国民は足元を救われてしまいます。政権の目指す改憲は、権力者にとって都合のよい憲法に変えるという、本来の憲法とは真逆のものへの転換だと、私は考えるからです。
『五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎』(くもん児童文学)は中学生向きですが、大人でも読みごたえありますよ、のtakuetsu@管理人でした。