「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

貝原益軒に学ぶ⑦「心学に志す人は、日新の工夫を用ふべし。

2021-04-13 12:30:34 | 【連載】道の学問、心の学問
「道の学問・心の学問」第四十八回(令和3年4月13日)
貝原益軒に学ぶ⑦
「心学に志す人は、日新の工夫を用ふべし。日に新にすとは、昨日のふるき悪をあらためて、今日あたらしく善にうつり、けふは昨日にまさりて新しくなるを、日に新にすといふ。」
                          (『大和俗訓』巻之一)

 『大和俗訓』は、益軒が漢学の素養の無い市井の人々の為に、世の中の真理について、当時の和語を用いて解り易く説いた書で、「為学」上・下、「心術」上・下、「衣服・言語」、「躬行」上・下、「応接」、の全八巻から成る。学ぶ事の意義と学び方、心の持ち方、衣服と言葉の有り方、日々の実践躬行の留意点、人に如何に応対するか、と日常の具体的な在り方を解り易い言葉で説いている。これらを読むと、自ずと日々の自分の有り方が正されかつ当時の日本人の倫理観の高さに感動を覚える。岩波文庫にもあるので是非、一読をお薦めする。

 巻之一「為学」上の中で益軒は「日新(にっしん)の工夫」を強調している。

「心学に志す人は日新の工夫を心掛けて実践せねばならない。日に新たにするとは、昨日までの古い悪を改めて、今日は新しく善に移り、今日は昨日より優れて新しくなる事を、日に新にする、と言う。この様にする事が出来るならば、今日改めて是としたなら、昨日までの過ちは非であると覚る事が出来る。この様に日々勤めて止まないならば、日一日と心の工夫が進んで、月々に異なり、更には年々同じである事が無い。一日進めば一日の効果が生まれ、一月には三十日の効果があり、一年には三百六十日の効果があり、三年経てば千日の効果が生じて、徳に進んで善に移り行くならば、その楽しみは極まりなく、手が舞い足を踏み鳴らす程の喜びが生じるであろう。この様に日々進んで行く事が出来るならば、君子=人徳の高い人物となる事は間違いない。もし、今日は昨日に変わらず、今月は前月に異ならず、今年は去年に同じであるならば、日に新にする力が無くて、いつまでも愚かな人間のままで世を終ってしまう事となる。それでは何と口惜しい事ではないか。」

 江戸時代の藩校には会津藩の様に「日新館」と銘打ったものがある。「日新」の出典は『大学』にあり、シナの聖人である湯王が洗面用の水盤に「苟日新、日日新、又日新」(苟(まこと)に日に新に、日日に新に、又日に新たなれ。)と刻み、自戒の言葉としていた事に拠る。

 私達は、人生を惰性で生きるのでは無く、日日少しでも向上させて行く在り方を求めるべきだと思う。それが「道」を求める心=求道心である。その為には、与えられた時間に節目を付けて、反省し改善して行く試みを絶やさない事が重要である。私が特に重視しているのは、正月元旦と一月である。誕生日が一月三十一日と言う事も有って、この間の一月は反省を重ねて大いなる抱負を生み出す時と定めて来た。更には、月初め、週初め、一日の始まりである朝、と改善点を具体的に照射する営為を自分に課している。


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