「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

「良知」の言葉 第23回「常に快活なるは、便ちこれ功夫なり」

2023-09-02 10:39:10 | 「良知」の言葉
第23回(令和5年9月2日)
「常に快活なるは、便(すなわ)ちこれ功夫なり」(『伝習録』下巻十五)

 弟子の陳九川が病に伏していた時に、王陽明は「病の床での格物は難しいが、何か覚る所はあるか」と問いかけた。九川は「実践するのが中々難しいです。」と答えると、王陽明は「常に快活である事が病中での功夫だ。」と諭した。

 病床に在っても、常に快活さを失わずに居れば病気は自ずと快方に向かう。良知は天に繋がる生命力の自づからなる表れであるから、本来活き活きし、元気で活発なものなのである。病気に負けずに本来の快活さを失わない事、それが病床にある時の致良知なのである。それが出来るのは、自分の命と使命(生きる意味)についての深い考察を要する。

 実は、一年前の9月2日の早朝、私は生れて初めて救急車で病院に搬送された。数日前から血尿が出始め、夜中からそれが酷くなって、三十分おきにトイレに駆け込まざるを得なくなってしまったのだ。直ぐに緊急措置が施され、尿管を付けて尿道内の清浄が始まった。その日は金曜日だったので、週明けの5日に検査、6日に約3時間に及ぶ手術を受けた。尿道に極小の術具を入れて膀胱に固まった凝血と腫瘍を取り除く形での施術となり、切開はせずに済んだ。それ故、翌日には大部屋に移り、9日には点滴の管も外れた。ベッドの上では、バッグに入れていた1冊の新書を読む事のみが唯一出来る事だった。10日には売店に行って産経新聞を購入し、更に『ことわざ・故事・俗言辞典』を買って読み始めた。

 12日は日曜日だったので、家内から生活備品や差し入れと共に、LINEで連絡し指示した約10冊の書物も持って来て貰った。そこで、一日の「生活スケジュール」を作成し、時間帯ごとの読書やテレビニュース視聴計画も立て、充実した一日を過ごす事が出来た。16日には退院した。

 ところが翌日午後から血尿が出始め、夕方に家内に中央病院に運んで貰って再入院した。そして28日に漸く退院する事が出来た。この二度目の入院時も、生活スケジュールに則って、読書等に励む事が出来た。

 この間私は、「大丈夫、必ず回復できる」との信念を抱いていた。後で、福岡に嫁いでいる娘が私の入院を知って、「お父さんが死んでしまう」と言って大泣きしていた事を聞き、逆に驚いた。私には、使命ある限り天は私を生かし、健康を与えてくれるとの信仰がある。それ故、常に「快活」さを失わないでいられる。

 それから一年、今では完全に健康を回復し、自分に与えられた課題について日々取り組む事が出来ている。今朝は、王陽明の「常快活」の言葉が一入胸に響いている。


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