ヨウイチが高校時代の頃のこと。
校内絵画コンクールをやるとのことで、
絵が上手い生徒たちは、
コンクールの最優秀賞を狙った。
絵が上手いヨウイチも例外やなかった。
更に、
絵画コンクールを誰が最優秀賞をとるかの賭け事まで行われていて、
実際上、
この賭け事の勝ち負けの方に、
お絵描き自慢の生徒たちの関心は集まっていた。
絵画のテーマは、
上野公園の西郷隆盛の像をどう描くかやった。
生徒たちは、
上野公園に行き、
必死に西郷隆盛像を描いた。
コンクールの発表日。
コンクールの最優秀賞はヨウイチが獲得した。
理由は、
みんな、
西郷隆盛像の前を描いたことに対して、
ヨウイチは、
西郷隆盛像の背後を描いたことが、
ユニークやったという評価が下されたからやった。
みんなが悔しがってた時に、
ヨウイチは得意げに、
「お前らが絶対西郷隆盛を前から描くと思って俺は裏をかいて、裏を描いたのさ」と言った。
生徒たちのひとりが、
「ヨウイチがパルムドールとるなんてびっくりだよ」と言うと、
ヨウイチは、
「お前、パルムドールはカンヌ映画祭の映画最優秀賞のこと。恥かいたな」と言ったので、
この生徒は、
「恥をかくことで恥を描くことを、新しい絵のテーマにするぜ。抽象画になるけど」と答えた。
別の生徒は悲しそうに、
「西郷隆盛を一番リアルに描いちょったのに、おいどんは悔しかぁ」と漏らした。
ヨウイチはこの生徒に、
「お前、神田の生まれのくせに、鹿児島弁を使うなよ」と言った。
そして、
絵画コンクールの掛け金をせしめたヨウイチは、
機嫌良く学校を後にした。
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