前回までは漢文漢籍などに寄り道したが本来に戻り平安貴族の雅な文化などが紹介されている清少納言の枕草子を全巻読破しようとする第一回目だ。作者の宮仕え中の見聞や体験をもとに書き記した、皇族の女性たちの文学活動として歌会日記の編纂などの作業を行うサロンの華麗な様子が生き生きと描かている。
清少納言が離婚後に一条天皇の中宮定子に出仕し宮廷生活を送ったが、作者自身の高い教養と天性の勝気で明るい性格から厚い信頼を受け華やかで充実した宮廷生活を送った。「枕草子」は作者清少納言による原本が存在しなくて、多くの人の手を経て書き写され後世の人達が加筆・推敲したためにさまざまな伝本が存在するという。最古のものは鎌倉中期の「前田本」でその他「堺本」などが写本として現存するという。
話が展開し、淡く愁いをおびた女性像を描いて有名なマリー・ローランサンの詩文集で「これを(枕草子)書いたのは、とても女性らしい女性で、十七世紀のフランス貴婦人たちにかなり似ています」と載っている。
芸術は洋の東西を問わず通ずるものがあるという事か。
春はあけぼの。やうよう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる・・・の冒頭は、つとに知られる名文。