JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

真冬の怪談 (聖闘士学園へようこそ・)

2014-04-08 04:19:00 | 一輝・氷河ss
「ねぇ、氷河を知らない?」
 瞬は氷河の部屋を訪れ、同室者に問いかけた。
 先ほど氷河に一緒に風呂に入るよう誘われたが、瞬は入浴を済ませてしまった後だった。それを言ったときの表情のうかなさが、瞬には気にかかっていた。
「城戸なら風呂へ行ったよ、さっき城戸さんと部屋を出て行ったぜ」
 古賀という同室者は、どうでも良さそうに答えた。
 机の上には参考書や教科書・ノート等が散りばめられているから、たくさんの課題が出たのかも知れないが、瞬はそんなことは気にはしない。
「城戸って、どの城戸?」
 瞬や、星矢やら“さん”はつかない。
 部屋に入り、机の上に広げられている教材と、古賀との間に顔を潜り込ませて問いかけた。
「一輝さんだよ、あんたの兄ちゃん、最近、金髪君となかがいいからなー」
 なんでもないことを発せられ呟かれた言葉に、瞬の額に青筋が浮かんでいた。
 実際、兄と氷河のことなど、この同室者に取ってはどうでも良い事無の間も知れななかった。
 が、瞬には違った。
 兄と、氷河が仲睦まじい――それは、水と油が融合するより困難なことなのだ。

 原因は並べて兄にある。
 その兄と、氷河が風呂――。
 あり得ないことに、瞬は身体を震わせた。
 同室者の物といげな呼びかけなど、もう瞬は聞いてはいなかった。



 春、桜の季節となりましたが、“真冬の怪談”良かったら読んでやってください。

経費削減SS (一輝と猫2)

2013-04-25 22:02:00 | 一輝・氷河ss
「いや、この猫が勝手に…」
 一輝は懸命に身体を舐めている猫を、視線で指した。
「どこの世界に、自分からビールを被る猫がいる?」
 氷河が冷たい眼差しを、一輝にむけた。
「17階のベランダに、忽然と猫が現れた、などと口にする輩に言われたくないわッ」
「本当にいたんだッ」
 氷河はビールの滴る猫を抱き上げた。
「あッ、オレのビールが…」
 猫から滴るビールと、倒れた缶を、一輝は見比べた。
「オレのビールではない、来客用に、オレが買い置きをしてあるビールだ」
 氷河は一輝に背を向けた。
「キサマッ、どこへ行く」
 猫を抱いたままリビングを出て行こうとする氷河に声を掛けた。
「風呂だ、濡れたままでは可哀想だろう」
「そうかな」
 風呂と聞いて、身体の舐め方に必死さが加わったような猫を見、一輝は嗤った。
「当たり前だろう、風邪でも引いたらどうする気だ」
 氷河が猫の額に、唇を付けた。
「あッ、キサマ――何の真似だッ!」
 自分とてご無沙汰な行為に、一輝は瞼を見開いた。
「なにをしようがオレの勝手だ、そんなことより、ビールを零した場所を拭いておけ」
 氷河は猫の鼻に口付けながら、一輝に背を向け歩き出した。
「――この…」
 一輝は氷河が背を向ける直前、鼻に口付けられながら、猫が自分を見、目を細めたのを見た。
――浴槽ごと、叩きのめしてやるッ。
 この不死鳥の聖闘士を愚弄した輩の末路を見せてやろうと、一輝は拳を握りしめた。
 だが、思っただけであった。
 そんなことをすれば氷河は兎も角、マンションの持ち主である城戸沙織の不興を買うに決まっているからだ。

☆矢「経費削減・番外編・一輝と猫」

2013-04-24 23:32:00 | 一輝・氷河ss
 一輝はその猫を見つめていた。
 猫は陽当りの良いリビングのソファの、ど真ん中で微睡(まどろ)んでいる。熟睡してはいない。うっすらと片目を開け、リビングの入口に立つ一輝を見つめている。
 いや、観察しているのだった。

 一輝は、この猫と相性が悪い。
 
 元々、この猫は氷河が拾ってきたものであった。
 
 氷河はベランダにいた、とほざいたが、この部屋は17階の、隣の部屋とベランダは完全に独立しているマンションだ。鳩や隼が舞い込むのならまだしも猫などが、絶対に迷い込むわけが無いのだ。

 だが、氷河が嘘をつく理由がないのも、また事実であった。
 
 このマンションは賃貸だがペットは飼って良いのだと、氷河は賃貸契約書をめくりながら、そう口にしている。
 ならば、氷河が一輝に遠慮などする訳がないのだ。

――まったく、何なのだこの猫は。

 一輝は冷蔵庫からビールを取り出し、猫の真横に腰を下ろした。
 
 猫は縄張り意識が強い生き物だが、自分に好意を抱いていない人間が間近に座れば、逃げるものだ。
 それを、この猫は上目遣いに一輝を見つめながら、微動だにしない。

――この、猫めがッ!
 一輝は腕を伸ばし、猫を捕まえようとし、その腕が空を切ったのに、唇を歪めた。
 別に、猫を捕まえようと思ったわけではなかった。

 
 始めてこの猫と出会った時の衝撃を、一輝は忘れたことがなかった。

 その日、一輝は出先から帰り、マンションのドアを開いた。
 扉を開いたのと、氷河の珍妙な叫び声を聞いたのが、同時だった。
 叫び声を放ち、廊下に出てきた氷河の姿に、一輝は目を見張った。
 氷河が全裸だったからだ。
 ずぶ濡れの氷河は、天敵一輝の帰宅にも気づかない程、取り乱していた。
 闘えば一輝には負け続けてはいるが、氷河も聖闘士であった。
 それも、聖域では黄金聖闘士と闘い抜き、ポセイドンの海底神殿では海闘士(マリーナ)と、冥界では冥闘士(スペクター)とも闘い抜いた男であった。
 その氷河が応戦の気配も見せず、何者かに追い立てられたかのように廊下に踊りててきたというのは、只事ではなかった。
  
 一輝は氷河を跨ぎ、浴室を覗いてみた。

 そこにいたのが、この猫だった。
 
 泥水に飛び込んだような色合いの猫が、一輝を見つめていた。

 一輝は猫と、珍しく入浴剤の投入されている湯船を見比べ、風呂に入ることにした。
 
 たかが猫一匹、何を恐れるのだと思いながら、一輝は湯を浴び、浴槽に浸った。
 その間、猫は椅子に座ったまま、微動だにしなかった。
 一輝は浴槽に浸り、湯で顔を洗った。
 その時、浴槽に顔だけを出した氷河が、椅子から微動だにしない猫を指さし叫んだのだ。

――バカッ、一輝ッ…ソレは猫の汚れだ、と。

 考えてみれば、吝嗇家の氷河が、来客でもないのに入浴剤など使うわけが無いのだ。
 
 外出から帰り、汗を流すつもりの入浴で、猫の汚れを全身に浴びてしまったことに一輝は肚を立てた。
 捕まえて、ベランダから放り出そうとした一輝の腕から掻い潜り続けた猫であった。

 あまりの猫の素早さに、一輝は光速の拳を繰り出し、それでも、この猫を捉えることが出来なかった。

 思いつきのまま伸ばした腕が、猫に触れられるとは思ってはいない。
 だが、ソファのど真ん中から、忌々しい猫を退かすことはできた。

 一輝はプルトップを開け、ビールを喉に流し込んだ。
 
 猫は少し離れた場所で一輝を見つめていた。

――羨ましかろう。

 一輝は猫に向かい、ビールの缶を掲げてみせた。

 どんなに悪賢い猫でも、ビールのプルトップを、自分で切ることは出来ない。第一、この美味いアルコールを、猫は飲むことができぬのだと、一輝は猫の前でビールの缶を振ってみせた。
「どうだ、猫め、欲しかろうが?」
 一輝は猫の口元にビールを近づけた。
 その時、猫の手が動いた。
 目にも留まらぬスピードでビールの缶をはたき落とされ、一輝は目を見張った。
 目を見張りながら、一輝は見た。
 一輝から缶をはたき落とした猫が、ビールの着地点目指して飛んだのを。
「ゲッ」
 一輝は目の前でビールを被った猫を見詰めた。
「あッ、キサマッ!」
 一輝は腰を浮かせた。カーペットや床を汚すと、氷河に何をいわれるか解らないからだ。

「何を騒いでいる? 一輝」
 寝不足らしい氷河がドアを開けたのを目にし、一輝の動きが凍り付いた。

「あっ、お前、猫に何をしているんだ?」
 ビールにまみれた猫に氷河は慌てた。
 猫は懸命に、自分に降り掛かっビールを舐め続けている。
 そこに、騒ぎを聞きつけた氷河が顔を出したのだ。
 
「続く」

 

聖闘士学園へようこそ 【番外編】 (おまけ)

2013-02-20 23:34:00 | 一輝・氷河ss
――一体、なにが悪かったのか…。

 放課後、氷河は一人の生徒に声を掛けられた。
「付き合ってくれ」
 何組の生徒だったか…確か佐藤という名の生徒にそう言われ、氷河は佐藤の後に続いた。
 氷河たち青銅聖闘士たちは、女神である城戸沙織から「学園内での人間離れした行動は、くれぐれも慎むように」と言われていた。
 言われてはいたが、身についてしまった力はどうしょうもなかった。
 生徒たちが身につけている身体能力と、青銅聖闘士たちのソレではあまりに違いすぎた。心臓が悪いなどと、もう学園内で誰も信じる者のいない嘘を吐き、体育の授業は参加していないが、少しの行動で、その力量がバレつつ有る。
 大勢の中からわざわざ自分を指名したのは、何か重い物を運んで欲しいのだろう、ぐらいにしか考えていなかった。
 氷河は佐藤に続き、資料室に入った。
「城戸…」
 資料室に入り、脚を止めた佐藤の言葉を氷河は待った。
 石膏か、大量の資料を何処かへ運ぶのかと思っていた。
「好きだ、城戸」
「好き?」
 氷河は眉を顰めた。何が好きなのかと、氷河は周囲を見回した。
「お前が、好きだ」
 振り返った佐藤に真顔で言われ、氷河の顔色が変わった。
「好きって――」

 好き――。
1,好くこと。
 ①気に入って心がそれに向かうこと。その気持。
 ②ものずき。
 ③好色。色ごのみ。
 ④風流の道に深く心を寄せること。数奇。趣味――。
 氷河の脳裏に、様々な意味が、浮かんでは消えた。
「付いて来たってことは、オレの告白を受けたってことだよな?」
 肩を掴まれ、氷河は大きく瞼を見開いた。
「――付き合うって」
 何処かに一緒に行くことなのでは? などとは聞けない。
 そんなことを言ったら、氷河の外見も相まって、日本語に対する理解が足りないと思われる。
 古文に続き、そのような屈辱に耐えることはできない。
 たが、付き合ってくれとは…日本語の多彩さに、氷河は頭を抱えたくなった。
「ここまで来て嫌だとは言わないよな?」
 両肩を固定され、近づいてくる佐藤を見つめながら、氷河は己の置かれたのっぴきならない状況を悟った。
 大体、氷河は男なのだ。
 男にこういう感情を抱くのは、あのアホだけだと思っていた。
「ちょ、ちょっと、ま――」
 目の前に迫った佐藤の顔面を直視しながら、氷河は佐藤を蹴り飛ばそうか、投げ飛ばそうか迷った。
 だが、氷河の日本語に対する理解の足りなさがこの自体を招いてしまったのも、また事実であった。
「鳳凰幻魔拳」
 小さくガラスが割れた音と、頬を掠めた衝撃に、氷河は目を見張った。そうしながら、全身から力を失った佐藤の身体を支えた。
「このバカ者がッ」
 扉を開くと同時に怒声を叩きつけた主を、氷河は見つめた。
「一輝…」
 思わぬ助けに、氷河は気の抜けた声を出した。
「なにが『一輝…』だ、このウスラバカがッ!」
 一輝は氷河が身体を支えている佐藤の身体を毟り取り、床に叩きつけた。
「お前、そんな乱暴な」
 佐藤は聖闘士とは違うのだ。そんなに粗雑に扱っては、怪我をさせかねない。
「黙れッ、キサマという奴は、ろくに知りもしない人間について行くなと教わらなかったのか」
「教わった」
 確かに、小さな頃から母に『知らない人に付いて行ってはいけませんよ』と、言い聞かされていた。
「なら、なぜ、こんなアホの後にフラフラと」
 氷河は佐藤の身体を蹴飛ばした。
「お前、そんなに乱暴をするな。目を覚ましたらどうする?」
 また、好きなどと口にされたら、どう対応して好いのか解らない。
「フン、このバカは当分目覚めん、幻魔けんを掛けてやったからな」
 さらりと発せられた言葉に、氷河は目を見張った。
 ただの生徒に、幻魔拳――。
 一瞬、氷のように表情を消し去った、沙織の顔が見えた気がした。
「キサマ、また『付き合ってくれと言ったら、ついてきた』といわれ続けたいのか?」
 一輝の言葉に、氷河は首を振った。
 そんな面倒なことはゴメンであった。
「そうだろう、大体、お前は日本語も、人間も未熟なのだ、キサマはアホだ、自分のことが全く解っとらん」
 一輝に人間的にどうかなどとは言われたくはないが、今は反論する気にはならなかった。
「いいか、これからは知らない人間に付いて行くな。解ったかかこのバカ者が」
「解った」
 氷河は項垂れた。
 釈然とはしないが、一輝に危機を救われたのは事実であった。
「これに懲りたら、いつもオレの目の届く所にいろ」
「解った」
 なんとなく、氷河は頷いてしまった。

 以来、一輝に対し、頭が上がらない日々が続くということに、このとき、氷河は気づいていなかった。

END

 ちょっと前にやった「聖闘士学園へようこそ番外編」のおまけでした☆

聖闘士学園へようこそ 【番外編】 (4)

2013-01-25 23:29:00 | 一輝・氷河ss
 借りた本を本棚に戻し終えたとき、小宇宙の片鱗を感じた氷河は背後を振り返った。
 そこに、黒い影を見出し、氷河は眉を寄せた。
 黒い影は悲鳴を上げる鈴木を小脇に抱え、図書室を出ようとしていた。
 黒い影とは一輝であった。
「ま、待てッ」
 氷河は階段を駆け上がる一輝を追いながら叫んだ。
 学園に編入する青銅聖闘士たちはアテナである城戸沙織に『くれぐれも人間離れした行動は慎むように』といわれていた。
 それが、コレであった。
 いくら小柄とはいえ、自分とそう年の変わらない少年一人を小脇に抱えたまま階段を駆け上がるとは、常軌を逸した暴挙としかいいようがなかった。
「な、なにを――」
 屋上のフェンスに駆け上った一輝の姿に、氷河は瞠目した。
 一輝はその腕に、暴れ足掻く鈴木のベルトを掴み、高々と掲げていたからだ。
「た、助けてッーお兄様ッ」
 自分を追ってきた氷河の姿を見出し、鈴木は悲鳴を上げた。
「なにが『お兄様』だ、この惰弱者が」
 一輝がベルトを持った腕を振った。
「止めろッ一輝、泣いているじゃあないか」
 自分に向い腕を伸ばし涙を流す鈴木の姿に、氷河は訴えた。
「美しい兄弟愛、というわけか」
 一輝が嗤った。
「なにを、バカな――」
 鈴木が氷河を兄と呼んだからといって、本当の兄弟になるわけではない。
 氷河は日本へ向かう途中、船舶事故で母を失った。
 母を失い、言葉も、習慣も解らない異国の地で、氷河は心細い生活を余儀なくされた。
 鈴木もそうだ。
 これまで裕福な家庭で、肉親の愛情を一身に受け生活していた鈴木が、慣れない寮生活を強いられ、学園を辞めたいと漏らしていたのを、氷河は知っていた。
 その鈴木に『お兄様になって下さい』と請われ、断れる筈がなかった。


■ 続く■