本来なら“用件を早く言わんか”と蹴り倒すところだが、相手は老人--しかも、あの“実”の持ち主とあっては、邪険にするわけにはいかない。一輝は老人の話を聞く態勢に入った。
--ワシは人間でいることに疲れた…この姿で心地よさそうな家の庭や縁側(えんがわ)で休んどったら、警察官というのがやって来ての…もう、大変なことになった…。
そのときの情景を思い出したのか、老人はまた溜息を吐き、言葉を続けた。
--逃げても、逃げても…あやつらめは増援だとかと言うて、なんぼでも増えよる。
さも心外な目に遭ったかのような老人の口調に、一輝は呆れた。
見知らぬ人間が、自分の家の庭に無断で侵入してきたら、不法侵入で通報するのが当然であった。
そのような面倒なことは、一輝でもしない。
--従ってワシは、どこへでも違和感なに入り込める、猫になることにした。
老人の言葉に、一輝は思わず溜息を吐いていた。
人間が猫になれるのなら、一輝も猫になっている。
そして氷河に膝枕をさせ、全身を撫で、揉ませ、一緒に風呂に入り、あーんなことも、こーんなことも…そこで一輝は気づいた。猫になどなってしまったら、入浴した先の、あーんなことや、そーんなことが出来なくなってしまうではないか、と。
--なにを考えておる、お前さん、そんな邪(よこしま)な考えでは、仙術は極められんぞ。
一輝の心中を見ぬいたかのように、そう口にし、老人は肩を落とした。
--オレが、なにを考えたというのだ。
“ワシは猫になることにした”などと真顔で口にする人間に、物思いを批判されるいわれはない。
--お前さんは、氷河とかいったか…あの金髪の、見目麗しい青年に邪心を抱いておる。隙をみては押さえ込もうと、常に考えておるではないか。
老人の言葉に、一輝は目を見張った。
--キサマ…オレの精神(こころ)を…。
一輝は敵の精神を操り、崩壊させる鳳凰幻魔拳を使う。その一輝の精神を読み取るなどと--。
一輝は目の前の老人に警戒心を抱いた。
「続く」
--ワシは人間でいることに疲れた…この姿で心地よさそうな家の庭や縁側(えんがわ)で休んどったら、警察官というのがやって来ての…もう、大変なことになった…。
そのときの情景を思い出したのか、老人はまた溜息を吐き、言葉を続けた。
--逃げても、逃げても…あやつらめは増援だとかと言うて、なんぼでも増えよる。
さも心外な目に遭ったかのような老人の口調に、一輝は呆れた。
見知らぬ人間が、自分の家の庭に無断で侵入してきたら、不法侵入で通報するのが当然であった。
そのような面倒なことは、一輝でもしない。
--従ってワシは、どこへでも違和感なに入り込める、猫になることにした。
老人の言葉に、一輝は思わず溜息を吐いていた。
人間が猫になれるのなら、一輝も猫になっている。
そして氷河に膝枕をさせ、全身を撫で、揉ませ、一緒に風呂に入り、あーんなことも、こーんなことも…そこで一輝は気づいた。猫になどなってしまったら、入浴した先の、あーんなことや、そーんなことが出来なくなってしまうではないか、と。
--なにを考えておる、お前さん、そんな邪(よこしま)な考えでは、仙術は極められんぞ。
一輝の心中を見ぬいたかのように、そう口にし、老人は肩を落とした。
--オレが、なにを考えたというのだ。
“ワシは猫になることにした”などと真顔で口にする人間に、物思いを批判されるいわれはない。
--お前さんは、氷河とかいったか…あの金髪の、見目麗しい青年に邪心を抱いておる。隙をみては押さえ込もうと、常に考えておるではないか。
老人の言葉に、一輝は目を見張った。
--キサマ…オレの精神(こころ)を…。
一輝は敵の精神を操り、崩壊させる鳳凰幻魔拳を使う。その一輝の精神を読み取るなどと--。
一輝は目の前の老人に警戒心を抱いた。
「続く」