JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

転生したら飼い猫だった件 (転生編)4

2022-12-23 14:02:24 | 日記

ーーあれから数日が過ぎた。

ーー人間は我が三毛猫の雌だと知っても扱いを変えることはなかった。

ーー食事も、水も十分に与えられ、虐待せれることもない。

ーーもっとも、新しい飼い主とやらは毎朝決まった時間にでかけ、だいたい決まった時間に帰ってくる。なので我と向かい合うのも、朝出かける前の時間と、帰ってきてからの数時間ーー。

ーーそれも、我の食事の用意と、汚してしまった物の片付け、あとは我の身体を暖かな布で拭いてくれたり、頭や身体を撫でたり…。

 ………。

ーー人間よ、それでよいのか?

ーー我は別に良いのだぞ。

ーー美味な食事を与えられ、新鮮な水を与えられ、暖かでふわふわの寝床を与えられ…。

ーーじゃが、人間になんの得があるというのか…。

ーー人間と暮らすということはもっと、飢えや痛みが伴うものと思うておった…。

ーーだが、待てよ。

ーーあの、公園に現れた同胞…。

ーー公園から消え、しばらく立って現れた同胞は毛艶もよく、動きも軽やかになっていたあの同胞は…。

ーー人間に名を貰い、食事・水を饗され、撫でられたり、抱かれたりと、愛情を注いでもらっている、と申していたではないか…。

ーー我はそれで人間に夢を見た。

ーー結果、その夢はこれ以上ないほどの虐待で裏切られた…。

ーーじゃが、今の状況雄は…。

ーー我は、今は飼い猫なのか…。

ーー部屋を見回す。

ーー静かだ…。

ーーここには我を脅かすものはなにもない…。

 ………。

 

■ ■ ■

 

ーー我は物音で気がついた。

ーーいかん、我は暖かな布の敷かれた箱に入り、眠り込んでしまっていたようじゃ…。

ーーこの音は…。

ーー女が帰ってきた音か…。

「ミケちゃん、ただいま」

ーーこれこれ、そんなに不躾に我を見るでない。

ーー我はそっぽを向いた。

ーーそっぽは向いたが、人間の気配には気を配っておる。

ーーいきなり物を投げつけられたり、我のいる箱を蹴飛ばされてはかなわんからな…。

「ミケちゃん、いい子にしてた?」

ーー一旦、我の許を離れた女が、我の箱を覗き込んだ。

ーーおおッ。

ーーか、顔が変わっておる。

ーーこの女は朝と夜では顔が変わるのだ。

ーー朝、起きると我の食事の水の支度、あとは我のトイレのチェックをしたあと鏡に向かう。そこで顔に何をを塗りたくったり、パタパタしたり、なんちゃらして、顔を変えてしまうのだ。

ーーで、帰ってくると元の顔に戻す…。

ーー人間とは変わったことをする生き物なのだな…。

ーーだが、我を虐め抜いたあの人間はやっておらなんだから、顔をパタパタする人間は我らを虐めぬ人間なのか…。

ーー解らぬ、人間という生き物が我には解らぬ…。

「ーーいい子にしていたミケちゃんには、コレです」

ーー人間が空になった皿を下げたあと、新たな皿に目新しい食事を盛り付け、我の前に差し出した。

ーーな、なんと。

ーーコレは特級おやつ”チュール”ではないか?

ーー公園にいたときは、ごくたまに、少量しかもらえんかった幻のおやつ…。

ーーチュール。

ーーこれ、我がもらっていいの?

ーー全部?

ーー我は人間を見上げた。

「赤ちゃん用のチュールだよ。栄養がたくさんあるからいっぱい食べてね」

ーー我は目の前に差し出されたチュールを食した。

ーーうまいッ!

ーーこの人間に関わってから、我はうまいものしか食しておらん。

ーー我は、本当に飼い猫になれたのか…。

ーーこの人間は、本当に我を虐めたりはせぬのか…。

ーーチュールは美味いが、我の心は晴れん。

ーーこの何不自由のない生活が、この人間の気まぐれであったなら…。

 

 ■ ■ ■

 

ーー残念ながら、我の予感は的中してしまった…。

ーー昨日の夜から、我は食事を与えられなくなった…。

ーー水は少しはもらえるが…。

ーー気のせいか…人間の様子も沈んでおるような…。

ーーそうか、もう我に飽きてしまったのか…。

ーーそれもよい、我を虐めさえしなければ…。

ーーなんなのだ、この心に荒む寒風は…。

ーー我は、人間になんて、なんの期待もしていなかったもんね。

ーーそしてこれからも…。

ーー我は人間に掴み上げられ、ゲージに入れられた。

ーーそうか、我はあの公園に帰るのだな…。

ーーだが、感謝しようぞ人間。そなたは我を虐めることだけはせなんだな…。

 

■ ■ ■

 

ーー予想に反して我が連れて行かれたのは、あの”病院”という場所であった…。

ーー人間はしばし椅子に座り、ケージの端から手を入れ、我を撫でたり声をかけたりしておったが…意味はあまりわからんかった。

ーーただ「ごめんね」という言葉は聞き取れた。

ーーやがて、人間は扉を開け”先生”と呼ばれる人間の前に我を引き出した。

ーー先生は我の身体を色々触り、人間と何やら小難しい話をしておったが、やがて我を抱き上げ、並んだ檻の一つに我を入れ、そっと扉を閉めた。

ーーここは…。

ーーここは、我が最初に意識を取り戻した場所。

 ………。

ーー我はどうなるのだ?

 

■ ■ ■



最新の画像もっと見る

コメントを投稿