ーーミケ…三毛…。
ーー我は三毛猫であるのか?
ーー三毛猫…。
ーー三毛猫の雄といえば、人間の間ではレア的な存在ではないか…。
ーーそれで、この人間も我を虐めぬのか…。
ーーそもそも我らの毛皮の模様で待遇が変わるのには納得がいかぬが、それでもあのような虐待を受けなくて良いのなら…。
ーー三毛猫バンザイッ!
ーー我は有頂天であった。
ーーだが、その幸せは、長くは続かなかった…。
■ ■ ■
「三毛猫の雌ですね」
ーー最初に、我が意識を取り戻した病院、とやらで「先生」と呼ばれていた人間の言葉に我は打ちのめされた。
ーー三毛猫の雌…。
ーー我はこの間までは立派な雄猫であったのに…。
ーーなんで、雌?
ーー我は男の娘になっておったのか…。
ーーあぁ…。
ーーこの人間は我が雌だと解ったら、どういう反応をするのだろう。
ーー三毛猫の雌は、珍しい個体ではない。
ーーならば、我は、我は、また…。
ーー嫌だ、もう、あのような目に遭うのは…。
ーー苦痛と飢餓と絶え間ない恐怖…。
ーー我は…我は…。
「それじゃあ、怪我はそう酷くはないので、この間の薬を飲ませて、ご飯で栄養をつけてあげて下さい」
ーー先生の言葉を聞きながら、女が我をケージに戻した。
ーーこの間は箱だから、元気になった今なら脱走の望みもあったが、今は頑丈なケージ…。
ーーコレでは脱走することもままならん。
「はい、解りました。あとは避妊ですね」
ーーこれは、女の声。
「そうですね…」
ーー頭上で難しい言葉が飛び交っているが、どうでもよい。
ーーあぁ、我はこれからどうなるのか…。
ーーどうしてこんなことになったのか…。
我は途方に暮れた。
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