JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

24  (7) ~眠る鳥より~

2008-01-31 01:23:27 | ノンジャンル
「こら、待て氷河ッ!」
 門を乗り越えいくらも走らないうちに怒声が背を叩いた。
 だが氷河は止まらない。第一、止まれといわれて止まるバカはいない。
 頭の硬い一輝にはそれが解らない。
 氷河は走り出した勢いのまま、地下鉄の階段を駆け下りた。
「待たんか、コラッ!」
 雑踏を掻き分けながらの一輝を氷河は肩越しに振り返り、笑みを浮かべ、怒気も露な一輝を指差し「痴漢ッ!」と叫んだ。
 名門校制服を身につけた金髪碧眼の学生を追いかけ回す不審者の前に、駅員と腕に覚えのある男数人が立塞がった。
「氷河ッ!」
 スワンに仕掛けたの同じ罠に嵌められたのだと悟った一輝は、走り去る氷河を怒鳴りつけた。
 氷河は舌を出し走り去った。
 一輝は雑踏に紛れようとする氷河の背を睨み据え、目の前に立塞がった男たちを睨み据えた。
 この場から脱し、あのバカを取り押さえるには小宇宙を高め、男たちの間をすり抜ければよい。
 だが駅構内は人口密度が高すぎた。それに、監視カメラの存在もある。
 もし人並みはずれた速度で移動する一輝の姿が撮影され、公開でもされれば城戸沙織になにを言われるか解らない。
 それに、目の前に立塞がる男たちを避けて通るのは一輝のプライドが許さない。
「一輝様ッ!」
 暗黒ドラゴンの叫びと同時に一輝は走り出していた。
 一輝の前に立塞がり、周囲を取り囲んだ男たちはドラゴンの撒いた一万円札に意識を奪われ、不審者の存在など忘れ果てていた。
 一輝は足元に蹲り紙幣を掻き集める人間たちを飛び越え、小癪なバカを取り押さえるべく突っ走った。
 一輝は改札に入った氷河に腕を伸ばし、その動きを騒々しい警告音と改札機の両脇から飛び出した板に遮られていた。
 今度こそ駅員に取り囲まれた一輝を氷河が振り返り歩を止め、ポケットからパスケースを取り出して見せた。
 それで初めて一輝は周囲を見回した。
 周囲の人間は改札を通るとき機会に切符を通すなり、センサーにカードを翳すなりしていた。
 一輝はこれまでの人生で電車に乗ったことがない。
 氷河を追うことに気を取られていた一輝は、切符を買うことなど考えもしなかった。
 氷河は駅員に取り囲まれている一輝に手を振って、階段を悠々と下っていった。
――覚えていろ、氷河。
 屋敷に戻ってきたら目に物見せてくれると内心毒づき、一輝は駅員に促されるまま歩き出した。

「続く」

 どこが「24」なの? と思っている皆様、もう少しお付き合い下さい(汗)

■ 日記 ■
 
 あまり行動しないので書くこともあまりなかったのですが、先日…怖い思いをしまして…。
 本当に動かない私は「このままではいかん!」と思い立ちお散歩に行くことに。
 ウチの近くには『安倍川』という川がありまして、まぁとりあえず川まで行ってみようという軽い気持ちでお散歩に出発した。
 でも、いざ川までつくと橋が何本も架かっておりまして。
 もう一本向こうの橋まで行ってみよう、と歩いていき、またまたもう一本…。
 なんてことを続けているうちに、そういえば海が近いななんて思い出しまたまた歩く。
 で、歩いているうちに日が暮れまして…。
 冷静な皆さんはお気づきだと思いますが河口に向かっているうちに日が暮れたということは同じ距離を歩いて帰らなければならないということで…。
 もう、周囲は暗く足場は見えないわ改造原付とすれ違うわで中々ヘビーな体験をいたしました。
 加えて遊歩道を歩けばいいものを水量が少なかったので普通の靴で川原を歩いたので足は倍痛いし…。
 この次ぎのお散歩は検討したいと思います。
 でも、富士山は綺麗だったし綺麗な風景も楽しめたし、今度はデジカメをもって行きたいと思います☆

24 (6) ~眠る鳥より~

2008-01-25 00:58:48 | ノンジャンル
「やめろ、バカッ! 早く下ろせ!」
 氷河は脚をばたつかせ身を捻った。
「なんだ氷河…お前は昔からオレに抱かれるのが好きだっただろう」
 一輝は『抱かれる』に力を込めた。
「バカッ! 誰がキサマなんかに」
 衆人の前で仔猫のように軽々と持ち上げられ、全身を揺すられ、羞恥に氷河は目眩を覚えていた。
「氷河、降参するなら今のうちだぞ」
 氷河の耳元に一輝が囁きかけた。
「黙れ、バカッ! お前なんかクビ――」
 馘(クビ)にしてやるといいかけ、氷河は頭上高く持ち上げられていた。
「氷河、歩きたくないならこのまま車まで抱いていってやる」
 抱き上げられたまま1回転され、氷河は拳を握り締めた。
 この場を開放されたら、瞬に訴えて一輝をボディ・ガードから外してもらう。
 だいたい一輝がボディ・ガードなど、嫌がらせいがいの何者でもないのだ。
「城戸くん、可愛い…」
 普段は声をかけるのも憚(はばか)られるほど独特の雰囲気を醸(かも)し出している転校生の慌てふためく姿に、周囲を取り囲む女生徒の一人が笑みを浮かべた。
 発せられた呟きは邪気のないものであったが、その言葉は氷河の胸を抉った。
 氷河はその言葉に周囲を取り囲む人垣に目を向け、高々と掲げられた己の姿が携帯のカメラに収められるのを目にしうろたえた。
「可愛いそうだ、よかったな」
 一輝は腕を伸したまま、カメラに収めれれやすいように氷河の身体を持ち上げ揺さぶった。
「いい加減にしろッ! このバカジジイッ!」
 氷河は反動をつけ、一輝の顎を蹴り上げた。
 不意の一撃に一輝は氷河を抱く腕の力を緩めた。
 氷河は一輝を蹴り上げた勢いのまま1回転し着地した。
 周囲の歓声を背に、氷河は門を乗り越え高外に脱出していた。

「続く」

24 (5) ~眠る鳥より~

2008-01-22 02:15:11 | 原稿
「不審者だ」
 ゴミ箱で指され、その礼儀のなさにスワンは肚を立てた。が、それどころではないことにスワンは気付いた。
 騒ぎを見咎めた者、聞きつけた者がスワンたちを遠巻きに取り囲み、そのうちの何人かがカメラ機能搭載の携帯電話を手にし、自身に向けシャッターを切っているのを目にし、スワンは泣きたくなった。
「キグナス、お前…」
 スワンは氷河を睨み据えた。
 スワンは白鳥星座の聖闘士に何度も窮地に陥れられ、小バカにされてきた。
 新たに生を受けた氷河は失った力の分、性格の悪さに磨きがかかっていた。
「ねー、ねぇー、大丈夫? 警察呼んじゃう?」
 新月の闇の中、小動物の微かな動きさえ聞き分ける鍛え抜かれた暗黒聖闘士の聴覚は『警察』と言う言葉を、確かに捕らえていた。
『警察』などに通報されたら氷河の『イタズラ』が知れ渡る。
 名門校なだけに警察沙汰は御法度(ごはっと)なはずだ。
 そこまで考え、自身を窮地に落とし込んだ諸悪の根源を、なおも案じねばならない己の立場がスワンには悲しくなった。
「なんの騒ぎだ」
 生徒たちの背後から現れた一輝に氷河は眉を寄せた。
 一輝は氷河のボディ・ガードとして顔が知れ渡っている。
「授業が終わったらすぐに来るよう言っておいたはずだな」
 一輝が氷河の目の前に立った。
「オレは、用事があると言ったはずだ」
 氷河は拳を握り締めた。力では、一輝には適わない。
 一輝が姿を現した以上、スワンを不審者に仕立て上げることは不可能だ。
「カラオケは、用事とはいわんぞ」
「うるさい、オレは行くからな」
 有無を言わさぬ口調に、氷河の反感に火がついた。
「それで、スワンを困らせているのか」
 一輝が一歩踏み出し、その気に圧されるよう、氷河は一歩退いた。
 だが一輝の踏み込みのほうが深く、氷河は難なく両脇に掌を入られ持ち上げられていた。
「バカッ! なにを――」
 浮遊感に、氷河はもがいた。
「ほら、氷河ー高いたかいだ」
 幼児をあやすように身体を揺すられ、氷河の頬に朱が射していた。

「続く」


24 ~眠る鳥より~ (4)

2008-01-18 23:46:17 | 原稿
「叩きのめされたいのか」
 氷河の物言いにスワンが肚を立てた。
「やってみろ」
 氷河は冥(くら)い笑みを浮かべた。
 スワンだけではない、すべての暗黒聖闘士は氷河に危害を加えることはできない。
 捻じ曲がってはいても、一輝が氷河に向ける感情を全ての暗黒聖闘士が弁(わきま)えているからだ。
 その事実が氷河を無性に苛立たせていた。
 当時、己の行く手に立塞がる者は、自身の腕で退けることができた。 
 だが今は、グラード財団の組織力に守られ、一輝に守られ、暗黒聖闘士の自制に守られている。
 しばし、氷河はスワンと睨み合った。
「なにしてるんだ、城戸…」
 傍らからかけられた声に氷河は視線を転じた。
 今度の声は、耳障りなものではない。
「その人は?」
 ゴミ箱を手にした同級生の高木の問いかけに、氷河は不敵な笑みを浮かべた。
「知らない人なのに、一緒に来いって」
 氷河の返答にスワンは仰天した。
 氷河の通うのは有名私立校――。
 凶悪な事件の相次ぐ昨今、校敷地内への立ち入りは厳しく制限されている。
 が、ただ見張るだけと考えていたスワンは、敷地立ち入りに関する正式な手続きを取っていなかった。
「ちょっと、なんなんです」
 高木はゴミ箱を構えた。
「いや…オレは、怪しい者では…」
 ゴミ箱で威嚇する生徒を殴り倒し、氷河を連れ去ることはできる。
 だがそんなことをしたら、間違いなく大問題になる。
「どうしたの?」
 見知らぬ男と対峙している生徒たちに、箒(ほうき)を手にした女生徒たちが距離を取りながら声をかけてきた。
 そのうちの一人が携帯電話を取り出したのを目にし、スワンはうろたえた。

「続く」 


24 (3) ~眠る鳥より~

2008-01-17 02:37:31 | 原稿
 放課後、氷河は周囲の様子を窺いながら校門の裏手に回っていた。
 正門脇では一輝が氷河を確保せんと、てぐすね引いて待ち構えているに違いなかった。
 一輝は口にしたこともしなかったことも、心に抱けば必ず実行に移す厄介な男であった。
 氷河は今まで、カラオケというものを体験したことがなかった。
 氷河の通う有名私立校には、名門といわれる家の子弟が多い。
 登下校を車で、という生徒も珍しくない。
 その生徒たちにしてもカラオケやクラブなどには出入りしているのだ。
――1回ぐらい…。
 クラスメイトの口にするカラオケに、一度は行ってみたかった。
「なにをしている」
 不意に声をかけられ、氷河は文字通り飛び上がった。
「学業が終わったら帰るよう、一輝様に言われているのではなかったか」
 聞き知る声に、氷河は周囲を見回した。
「姿ぐらい見せたらどうだ、暗黒スワン」
 声以外の気配を立っている暗黒スワンに、氷河は言葉を叩きつけた。
「このぐらいの気配も感じ取れんとは――」
 言葉と共に頭上から降り立ったスワンの表情に浮かぶ嘲りに、氷河は柳眉を吊り上げた。
「ずっと、そこでそ見張っていたのか」
 氷河はスワンと、スワンの降り立った木とを見比べた。
「キサマの考えなど、一輝様はお見通しだ」
 スワンが唇の端を吊り上げた。
「それで木の上で烏(からす)のように見張っていたのか? 暗黒とはいえ、スワンの名が泣くぞ、それとも黒繋がりか?」
 氷河は大げさに肩を竦めてみせた。