JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

24 (12) ~眠る鳥より~

2008-02-19 00:17:55 | ノンジャンル
「なんのマネだ」
 シャワーを浴び始めた一輝に氷河が声をかけた。
「シャワーを浴びているのに決まっておろうが」
 一輝が肩越しに氷河を省みた。
「バカッ、そんなことは後でやれ、でなければオレが出ていく」
 氷河はバス・タブから上がろうとし、そのまま突き倒され、浴槽に沈んでいた。
「あれほどの暴言を浴びせておいて、ただで済ませると思っていたわけではあるまいな」
 頬にかかった前髪を掻き上げる氷河を見下ろしながら、一輝もバス・タブに身を沈めた。
「バカッ、くるなッ!」
 氷河は脚をバタつかせ、波立った湯を一輝にかけ、追っ払いにかかった。その足首を一輝が軽々と掴み、引き寄せる。
 氷河はバス・タブで向き合い、互いの下肢を絡ませるような格好に頬を上気させた。
「いい格好だな、氷河…」
 一輝が唇を吊り上げた。
 以前の氷河なら、このぐらいの拘束は、楽に振り解くことができたのだ。
「だまれッ!」
 氷河は一輝を睨み据えた。
 かつての氷河は、聖闘士として一輝たちと肩を並べ、互いに命を預け、地上の平和と女神を護る仲間であった。だがその関係は互いの力が拮抗していればこそのことであった。
 今の氷河の僅かばかりの小宇宙では、そんな関係は望むべくもない。
「黙らん、お前がその生意気な態度を改めるまではな」
 一輝は氷河を胸に抱き、顎を捉え素早く口付けた。
 まさかの行為に呻いた氷河の、僅かに開いた唇から一輝の舌が入り込んだ。
 舌を絡め取られ、吸い上げられ、氷河は弓なりに身を反らせた。
 息苦しさに目が眩むまで口付けてから、一輝は氷河を解放した。

「つづく」



24 ( 11 )  ~眠る鳥より~

2008-02-18 03:01:14 | 原稿
「バカ、やめろ…」
 浴室に引きずり込まれ、氷河は焦った。
「だれがやめるか、その生意気な根性を洗い流してやる」
 一輝は氷河を押さえ付けたまま、シャワーのコックを捻った。
「いいのか、こんなことをしていて? 瞬がくるぞッ」
 氷河は熱い湯から逃れるようにして叫んだ。
「バカが、遊び呆けていて忘れたか、瞬は海外出張中だ」
 一輝の言葉に氷河の動きが凍り付いた。
 それで、このバカの強気な理由が解った。
「まずはこのタバコと酒の臭いからだ」 
 一輝は氷河の頭からシャワーを浴びせかけた。
「熱いッ、オレは喫ってないし、飲んでない」
 シャワーの熱さに肚を立てながら、氷河は喚いた。
「当たり前だ、このバカがッ」
 一輝が氷河をバス・タブに放り込んだ。
「やめろ、なにをッ!」
 氷河は叫び、バス・タブの縁に掴まった。
「お前の戯(たわ)けた根性を、身体ごと洗い流してやろうというのだ、この一輝様がな」
 一輝は手にした容器の液体を、氷河の頭に降り注いだ。
「やめろ、バカッ! それはボディ・ソープだろうがッ」
 氷河は湯に潜り、髪に付いたボディ・ソープを落としにかかった。
「何でも変わらん」
 一輝は氷河の髪を洗い始めた。
「バカッ、よせッ! 髪が痛むだろうがッ」
 氷河は暴挙から逃れようと身を捻った。
「髪も身体も変わらん、第一、髪が痛むなどというガラか」
 聖闘士だった当時、氷河は身なりなど気にかけたことがなかった。それでいて、そこにいるだけで威厳と高貴さを兼ねそろえていた。
 闘いの中、血と土煙に塗れていても白鳥星座の聖闘士は美しかった。
「うるさいッ!」
 氷河は一輝の腕を振り払った。途端、泡が目に入り、湯で目を洗い流した。
 なぜ、髪を洗うのにあの量のソープをまぶすのか、氷河には理解できない。
 いや元々、一輝は氷河の理解の範疇を超えた存在であった。
「何度も言うが、それが年上の…いや、オレに対する態度か」
 一輝は泡で覆われた氷河の顔にシャワーをかけた。
「うるさい、キサマなんぞに礼などとれ――」
 そこで、氷河は言葉を切った。
 氷河の抵抗で泡だらけになった服を、一輝が無造作に脱ぎ始めている。

「続く」

 ご無沙汰しています。
 なんか、猫が本棚の上から落ちてこないと更新しないみたいになっているので更新してみました。
 でも、日記で更新と言うのかどうか…。

 そういえば事件が…。
 実はプリンターの黒が昨年から出ません。
 年賀状を受け取った方は何でこんな色で住所を、と思われた方もいるかも知れません…。
 で、こうなると新刊…。
 オリジナルですがせっかく下書きが終わったのに、今回は誰も殺さなかったのに…(呪いか)
 以前に同じ状態で修理に出したことがあったので、保障は聞かないし(もう切れていますが)買ったほうが安いといわれそう…。
 最悪ワープロでやったりして…。

24  (10) ~眠る鳥より~ 

2008-02-12 00:29:31 | ノンジャンル
「なっ…」
 米俵のように担ぎ上げられた氷河の脳裏に、昼間の屈辱が甦っていた。
「よせ、やめろ、バカッ!」
 氷河は拳で一輝の背を殴りつけ、両脚をバタつかせ暴れた。
 だが殴ろうが膝を打ち付けられようが、鋼の肉体はびくともしない。
 やはり普段は飲んだくれていようと過去、最強の聖闘士といわれただけのことはあった。
「下ろせッ、耳まで遠いのか、この大年寄りッ!」
 圧倒的な力の差に肚を立てた氷河の喚きは、一輝の精神の地雷を踏み捲くった。
「氷河よ…」
 一輝は氷河を、嫌味なほど丁重に床に下ろした。
「なんだキサマ、こんなところで…」
 浴室の脱衣所に下ろされ、氷河は一輝から後退った。
「お前は、自分が置かれた立場が解らんようだな」
 一輝は壁に背をつけた氷河の服を掴み、一気に引き裂いた。
「なっ、なにを…」
 氷河は引き裂かれたシャツで胸元を覆い隠した。
「お前の言う『ジジイ』の、有り余る体力と持久力を見せてやろうと思ってな」
 一輝は踠(もがく)氷河の両手首を扼すとベルトを外し、ジーンズを引き下ろし、足元のジーンズを下着こと踏みつけたまま、氷河の身体を抱き上げた。
「わッ、バカ…それはビンテージで、高かったんだぞ」
 ネット・オークションで高額で落札したジーンズを無造作に踏みつけられ、氷河は肚を立てた。
 ジーンズだけではない、一輝がまるで包装紙のように破き捨てたシャツも、小遣い制の氷河にすれば高額なものであった。
「服の心配などしている場合か」
 一輝は唇を吊り上げ、背後で浴室の扉を開いた。

「続く」

 お久しぶりです。
 先日、我が家の「イクラ」が本棚から降ってきたと書き込んだのですが、今度はゲージに入ったままの「イクラ」が落ちてきました。
 しかし、ゲージに入った「イクラ」ごと本棚から叩き落すとは…。
 

24 (9) ~眠る鳥より~

2008-02-05 22:34:00 | ノンジャンル
「なんだ、そのなりは」
 腕を組んだままの一輝の指摘で、氷河は駅のロッカーに預けてあった洋服に着替えたのを思い出していた。
「まさか、カラオケに制服っていうわけにもいかないだろう」
 氷河は靴を脱ぎ、自らの部屋に戻るために一輝の脇をすり抜けようとした。が、その腕を力強い腕に掴まれていた。
「門限を破っておいて、なにもなしか?」
 一輝は氷河を傍らに引き寄せた。
「オレには門限なんかない」
 そんなことは聞いたこともない。
「ある、お前の門限は学業と行事を終えてから屋敷に帰り着いた時間だ」
「そんな、無茶な門限があるか」
 小うるさく横暴な一輝の言い草に、氷河は大きく息を吐いた。
「なんだ、その口の聞き方は、それが年長者に対する態度か」
「好きで年下になったわけではない」
 氷河は聖闘士であったとき、一輝との歳の開きは1年だった。短気で考えなしの一輝より、当時の自分のほうが、精神年齢ははるかに高かったのだ。
「なんだ、その言い草は」
 一輝は氷河の頬を指で摘み、引っ張った。
「やめろッ! 子ども扱いするな、このジジイッ!」
 氷河が病に罹らねば、そして甦ることがなければ、一輝との年の開きも、力の開きもここまでにはならなかった。
「以前(まえ)から気に障っていたが、オレはジジイではない」
 一輝は引いた頬に捻りを加えた。
「オレから見ればジジイじゃあないか、年を考えろ、年を」
 眉間の皺の濃くなった一輝の顔を氷河は見上げた。
「上等だ…」
 一輝は唇の端を吊り上げた。
 だがその笑みはいつもの余裕のあるものではない。心なしか、表情が引き攣っているような気がする。
「…確かに、年齢も上だが…体力はオレの方が遥かに上だ」
 そう口にした一輝に氷河は軽々と担ぎ上げられていた。
 
「続く」

 またまた、日記☆

 昨日、私の身長より高い本棚からイクラ「猫」が落下して来ました。
 超ショックです。
 一枚の座布団を争ってのギャー「もう一匹のうちの猫」との争いに負けてはたき落とされたらしいのですが(2重にショック)なんか物悲しい気分になりました。

24 (8) ~眠る鳥より~

2008-02-01 02:17:03 | プチ・原稿
 氷河は7時過ぎに屋敷に戻った。
 あれほど切望していたカラオケも、氷河が思ったほどには乗り切れなかった。
 普段は真面目な友人たちは、カラオケ店に落ち着くとすぐにアルコールをオーダーし、タバコを吸い始める者もあった。
 氷河は体調を案じる沙織や身の回りの大人たちから、健康に有害なものからは遠ざけられて育ってきた。
 歌の合間に教師や両親の不満をぶつけ合い、不正に録画したDVDの交換の約束などを愉しげに語らい合うクラスメイトたちに、氷河は違和感を禁じえなかった。
 聖闘士になるべく各世界から集められた兄弟たちは、学生生活を送ることがなかった。
 戦士として生き、闘う日常を歩んできた。
 聖戦が終わり氷河は病に斃れ、その後DNAを取り出され培養され、この世に生を受けた氷河は両親の愛の変わりに、逞しい星矢たちと可憐で神々しい沙織たちの愛に包まれながらハイスクールの寮で過ごしていた。
 だが以前、病を発病したのと同じ年に理由を知らされないまま氷河は日本に戻ってきた。
 日本に戻ってきて間もなく、氷河は人相の悪い男と出会った。
 その男は亡霊にでも出会ったような眸を氷河に向け、次いで険悪な表情を向けた。
 その視線で見つめられた瞬間、氷河の背に悪寒が走り貫けていた。
 初めて向けられる剣呑な視線に、氷河は戸惑いを覚えた。
 その男が屋敷に留まることになってから、氷河の平穏な日常に変化が生じた。
 満腹時の猛獣と同じ檻に入れられた草食獣のような居心地の悪さに、氷河は息苦しい毎日を送ることになった。
 そしてあの日、氷河は企業テロでも営利誘拐犯でもない異能力者たちに襲われた。
 ただ純粋にその生命を狙われ、氷河は裡(うち)に秘めていた小宇宙を覚醒させた。
 それは全盛期の白鳥星座の聖闘士から比べれば微々たるものに過ぎなかったが、氷河に過去の記憶を鮮明に甦らせるには十分な小宇宙であった。
 あの日から氷河の中には、2人の氷河が存在している。
 聖闘士であった氷河と、城戸氷河――。
 沙織はギリシャに帰還する前に、グラード財産を氷河に託すつもりでいる。
 いや、氷河だけにではなく一輝・紫龍・瞬・星矢に、それぞれの部署に強引に携わらせようとしている。
 氷河は当時、誰も通うことの適わなかった学校に通い、勉学のみに勤しみ、友と係わり、その年頃の少年としてゆっくり成長している。
 だが、ときに氷河の傍らを通り過ぎる人々の日常は、女神や聖闘士たちが己を捨て、命を懸け護った理想とは、相反するものが含まれていると、2つの記憶を持つようになってから氷河は思うようになっていた。
 氷河は2次会に行くというクラスメイトたちと別れ、家路についた。
 氷河は扉を開いたままの姿勢で凍り付いた。
 玄関の中央で腕を組み、仁王立ちしている一輝の姿に氷河は瞼を見開くことしかできなかった。

「続く」