氷河は激情に駆られるまま、師に渾身の拳を放っていた。
だが、その拳はゆるりと持ち上げられた師の掌に吸い寄せられるよう収まっていた。
「うっ、凍気をとめた!」
信じ難い光景に氷河は瞼を見開いた。
「あまいぞ、氷河…D.D(ダイヤモンド・ダスト)は私がお前に授けたもの、それに…この程度の拳ではこの先、通用しない…必ず殺される!」
師の掌中から自身の放った以上の小宇宙の迸るのを目にし、氷河はその場で凝固していた。
今だかつて、これほどまでの小宇宙は体験したことがなかった。
「――ならば、いっそのこと師である私が引導を渡してやる」
今まで片手で拳を受けていた師の両腕が合わされようとしているのを、氷河はただ見つめていることしかできなかった。
それは師の纏う黄金の聖衣と青味を帯びた小宇宙の綯い交ぜとなった美しい光景だった。
「おお、あの形は? 両腕のパーツが重なり水瓶の形を成した」
氷河はその幻想的な姿に心を奪われていた。
「――その水瓶の口からとうとうと煌きながら迸るあれは…」
極寒の夜空を彩る幻想的な光の波に、氷河は恐怖しながらも魅せられていた。
「オーロラ・エクスキューション!」
裂帛(れっぱく)の気合とともに発せられた技に氷河は吹き飛ばされていた。
オーロラの波に羽のように翻弄されながら、氷河は母と見た故郷の光景を思い出していた。
氷に閉ざされた海に視線を据え、母は氷河に父の力によるよう口にした。
あれは、父である城戸光政の願い――聖闘士となり地上に降臨した女神を護り、この世の正義と平和を護る願いを、氷河に託したのではないか。
死の間際、氷河はそれに気づいた。
――DOCVIDANIJA。
轟沈する船の甲板から母に告げられた、最後の言葉。
闇に覆われてゆく意識の中、氷河は瞬を星矢を紫龍を、そして黄金の矢で胸を射抜かれたまま横たわる女神の姿を思い浮かべた。
――さようなら。
もう会うことのない人々を思い浮かべる氷河の頬に一筋の涙が伝っていた。
――そうだ…その涙というものをまだ持っていたことによってお前は負けたのだぞ、氷河!
意識が途切れる間際、殺生谷で己の胸を拳で貫いたときの一輝の言葉が聞こえたような気がした。
「続く」
お久しぶりです。
いつもクリックしてくださる皆さん、ありがとうございます。
クリックするたび、また更新してないか、しょうがねーな…。
などと思いながらもまた来てくださる…。
本当にありがとうございます。
これからもアリシア続けていきますのでよろしくお願いします(ペコリ)
だが、その拳はゆるりと持ち上げられた師の掌に吸い寄せられるよう収まっていた。
「うっ、凍気をとめた!」
信じ難い光景に氷河は瞼を見開いた。
「あまいぞ、氷河…D.D(ダイヤモンド・ダスト)は私がお前に授けたもの、それに…この程度の拳ではこの先、通用しない…必ず殺される!」
師の掌中から自身の放った以上の小宇宙の迸るのを目にし、氷河はその場で凝固していた。
今だかつて、これほどまでの小宇宙は体験したことがなかった。
「――ならば、いっそのこと師である私が引導を渡してやる」
今まで片手で拳を受けていた師の両腕が合わされようとしているのを、氷河はただ見つめていることしかできなかった。
それは師の纏う黄金の聖衣と青味を帯びた小宇宙の綯い交ぜとなった美しい光景だった。
「おお、あの形は? 両腕のパーツが重なり水瓶の形を成した」
氷河はその幻想的な姿に心を奪われていた。
「――その水瓶の口からとうとうと煌きながら迸るあれは…」
極寒の夜空を彩る幻想的な光の波に、氷河は恐怖しながらも魅せられていた。
「オーロラ・エクスキューション!」
裂帛(れっぱく)の気合とともに発せられた技に氷河は吹き飛ばされていた。
オーロラの波に羽のように翻弄されながら、氷河は母と見た故郷の光景を思い出していた。
氷に閉ざされた海に視線を据え、母は氷河に父の力によるよう口にした。
あれは、父である城戸光政の願い――聖闘士となり地上に降臨した女神を護り、この世の正義と平和を護る願いを、氷河に託したのではないか。
死の間際、氷河はそれに気づいた。
――DOCVIDANIJA。
轟沈する船の甲板から母に告げられた、最後の言葉。
闇に覆われてゆく意識の中、氷河は瞬を星矢を紫龍を、そして黄金の矢で胸を射抜かれたまま横たわる女神の姿を思い浮かべた。
――さようなら。
もう会うことのない人々を思い浮かべる氷河の頬に一筋の涙が伝っていた。
――そうだ…その涙というものをまだ持っていたことによってお前は負けたのだぞ、氷河!
意識が途切れる間際、殺生谷で己の胸を拳で貫いたときの一輝の言葉が聞こえたような気がした。
「続く」
お久しぶりです。
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