モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

フジバカマ(藤袴)白花の花

2009-10-12 08:17:40 | その他のハーブ
(写真)フジバカマ白花の花


秋の七草の一種「フジバカマ」の基本種は赤紫の花だが、「白花のフジバカマ」もある。

「フジバカマ」の特色は、モミジのように葉が三裂しているので、良く間違えられる近縁種の「ヒヨドリバナ」 「サワヒヨドリ」等と区別しやすい。

基本種の「フジバカマ」は中国が原産地で、乾燥させると生乾きの段階でその茎・葉から桜餅のサクラの葉のような香りがし、その香りは蘭にもひけをとらないので“蘭草(らんそう)”“らに”などと呼ばれた。
その起源は、紀元前9~7世紀頃の記述がある『詩経』までさかのぼれると言う。

日本にも古くから伝来したようだが、記録に登場するのは『日本書紀』(720年)が初めてで、庭で遊んでいた後に允恭(インギョウ)天皇の后となる女性をからかうために、ブユを追い払うために蘭を所望したという。

11世紀初頭に書かれた紫式部の『源氏物語』では“30巻目が藤袴”であり、中将が玉鬘(たまかずら)に忍んだ恋を伝える花として「蘭(フジバカマ)」を差し出している。

いづれも男女の最初の出会い、思いを伝える花として描かれている。現在ならばバラのような存在なのだろう。

山上憶良(660?-733)が『万葉集』で秋の七草を詠んでいるが、「藤袴」がでてくるのはこの一首だけであり、奈良時代以前に薬草として日本に伝来し、薬草園そして貴族の庭から広まって行ったのだろう。
ちなみに、万葉集での秋の七草は、萩の花141首、尾花19首、葛花22首、撫子の花28首、女郎花14首、藤袴1首、朝貌の花5首が詠われている。

そして、Eupatorium japonicumと命名したツンベルクが江戸に来た頃には、関東以西の河原などに野生化して広まり、日本古来の植物という情緒を創りだしていたのだろう。

しかしこの「フジバカマ」は、いまでは河川がコンクリートで護岸工事されるようになり、準絶滅危惧植物となっている。園芸店で「ヒヨドリバナ」などが「フジバカマ」などで売られているので葉が三裂しているか確認するとよい。

(写真)白花フジバカマの葉と花
        

フジバカマ(藤袴)白花
・ キク科ユーパトリウム属(和名ヒヨドリバナ属)の耐寒性がある多年草。和名のヒヨドリバナ属はヒヨドリが山から下りてきてなく頃に花が咲くのでつけられたのが由来。
・ 学名は類似を含めて二つある。日本の種に関しては、ツンベルクが命名したEupatorium japonicum Thunb.1784 。原種に関しては、Eupatorium fortunei Turcz.1851。和名がフジバカマ(藤袴)、中国名が蘭草。
・ 原産地は中国。日本、朝鮮半島にも生息。
・ 草丈1m、葉は3深裂でこの点が長楕円形の1枚葉のヒヨドリバナと区別される。
・ 開花期は8~10月。基本種は枝の先に淡い赤紫の小粒がつきこれがはじけて白っぽい糸状のしべが現れるが、この種は白花。
・ 肥沃で湿り気の土壌を好む。
・ 甘い香りを生かしてポプリ、入浴剤として利用する。
・ ユーパトリウム属には毒性がある品種があるので食しない。

        

属名の「Eupatorium」は
小アジアの ポンタス(Pontus)の王ミトリダテス六世エウパトール(MithridatesⅥ Eupator 132BC - 63BC)に捧げられた名で、彼はこの属のある植物から抽出した毒を服用していたといわれる。
ミトリダテス六世は、兄弟を全員毒殺して王位を奪った歴史があり、政敵からの毒殺を恐れ日頃から毒薬を飲み耐性を身に着けていた。
ローマ帝国との争いに敗れたミトリダテス六世は、毒薬を服用したが耐性があったために死にきれず部下に命じて殺させたという。
また、世界初の解毒剤とされる「ミトリダティウム(Mithridatium)」を開発していたことでも知られ、彼の死後ローマ帝国に伝わりネロ帝の侍医であったアンドロマコス(Andromachus)によって改良され、後に万病薬「テリアカ(Theriaca)」として発展することとなった。
確かにこの歴史物語は、塩野七生著『ローマ人の物語Ⅲ』に書かれていた。

種小名:fortuneiは
スコットランド生まれのイギリス人のプラントハンター、フォーチュン・ロバート(Fortune, Robert 1812-1880)の名前に因む。
彼は、中国からチャノキをダージリンに持ち出し紅茶を生産する重要な働きをする。また1860年10月に始めて日本を訪問し、ユリ、キクなどをヨーロッパに紹介した。

命名者
Thunberg, Carl Peter (1743-1828) 1784命名
1775年(安永4年)8月にオランダ商館付医師として長崎・出島に来日。翌1776年4月、商館長に従って江戸参府を果たし徳川家治に謁見した。
ツンベルクは、わずかな江戸滞在期間中に、日本の桂川甫周、中川淳庵らの蘭学者を指導し日本の植物学発展に貢献した。

Turczaninow, Porphir Kiril Nicolai Stepanowitsch (1796-1863) 1851命名
ウクライナの植物学者・公務員、赴任地バイカル湖周辺での植物収集を行いこれらをまとめる。


<参考>「フジバカマ」同様ユーパトリウム属の花
ユーパトリウム・チョコレート(Eupatorium rugosum ‘Chocolate’)

ユーパトリウム・コエレスティヌム(Eupatorium coelestinum)



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4 コメント

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見事な美しさです。 (kazuko)
2009-10-12 23:28:28
白いフジバカマ。あるのを知りませんでした。初めて見ました。たとえようもなく、美しいです。フジ色のフジバカマは我が家の定番の大好きな花で、地味なイメージがありますが、こちらは全然違いますね。たとえようのない美しさと、物悲しさを感じます。色がないってこんなことなのですね。・・・古典の内容も楽しく拝見しました。有難うございました。
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白いフジバカマ (キャスパー)
2009-10-13 05:02:32
香りが意外といいのに驚きです。
本当に、桜餅の葉の香りです。
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こちしは、 (きよみどす)
2009-10-13 05:53:03
去年、ピンクっぽいフジバカマの苗を植えて
今年は白とピンク色(?)の二つを堪能しています。
花束を今、ドライフラワーに仕立てているところです。
去年してみたら、(白で)以外といい感じで香りもして
良かったので、、、、。
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きよみさん (キャスパー)
2009-10-13 16:34:58
乾燥させてお風呂に入れると、湯上り後は桜餅肌になるそうですよ??
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