(写真)クリスマスローズ、「ヘレボレス・ニゲル」の花
クリスマスローズの原種の一つ、「ヘレボレス・ニゲル」。
白色にピンクが部分的にかぶっていて、時間・年数とともにこの色合いがまして赤みがかっていくという。
葉は、レザーのような皮質感がある濃い緑色でクリスマスローズの中でも特色があり美しい。
クリスマスの頃に美しい白の花を咲かせるので、“クリスマスローズ(Christmas-Rose)”と呼ばれている。しかしこのクリスマスの日は、古いユリウス暦のカレンダーであり、現在のグレゴリオ暦では1月6日になるという。
クリスマスローズの中では、早咲きであり日本では1~2月に開花し、寒冷地の高地では6月頃まで咲くこともある。
「H.ニゲル」の原産地は中部ヨーロッパの高地のアルカリ質の斜面であり、基本的にはアルペン植物(alpine plant)つまり高山植物と同じ性質を持っている。
一面に覆われていた雪が解け、その雪解け水が流れ落ち乾燥し始めた頃いっせいに開花する。だから、高山でないところでは11月から6月の間に開花する可能性を秘めているという。
H.ニゲルの亜種
また、「H.ニゲル」は交配種の親となり様々なクリスマスローズの新種が作出されていて、英国王立園芸協会には42種もが登録されている。
この「H.ニゲル」には二つの亜種がある。
・ 「Helleborus niger subsp. Niger」
・ 「Helleborus niger subsp. Macranthus」
(写真)H.ニゲルの亜種「Helleborus niger subsp. Niger」
そのうちの一つであるピンクの色が入った美しい亜種「Helleborus niger subsp. Niger」は、スイス、最南端のドイツ、スロベニア、北イタリア、クロアチア、オーストリアのアルプス山脈の山麓に生息し、イギリスの女性園芸家であるストラングマン・エリザベス(Elizabeth Strangman)が北ユーゴスラビアのブレッド湖周辺でこの亜種を採取した。
彼女は、「The Gardener's Guide to Growing Hellebores」の著者であり、ワッシュフィールド・ナーセリー(Washfield Nursery)に勤務し、数多くのクリスマスローズの交雑種を作出したハイブリッダーとしてもこの世界の第一人者でもあった。
1971年には、モンテネグロ(旧ユーゴスラビア)で、「H.トルカータス」の八重咲き変異種「イーニアス(Aeneas)」と「ダイドー(Dido)」を発見した。後に、イギリスの育種家ブラックソン・ナーセリー(Blackthorn Nursery)のロビン・ホワイト(Robin White)がこの「ダイドー」を交配種につかって、小輪多花性の八重咲き系統「パーティドレス・グループ(Party Dress Group)」を作出した。
H.ニゲルの逸話
この「H.ニゲル」はキリストの生誕日頃に咲くのでキリスト教徒では祝福された花でもあるが、古代ギリシャ時代には、悪魔よけの魔力がある植物と思われていた。
根には薬効があったので、これらのハーブを採取する薬剤師的な草根採取人“リゾトモス(rhizotomos)”は、ニゲルを採取する前に剣でこの植物の周りに円を描き、医学の神アポロンに祈りをささげる儀式を長々やってから採取したという。それだけ魔力を恐れていたようだ。
(写真) クリスマスローズ、H.ニゲルの後からの立ち姿
クリスマスローズ「ヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger.L.)」
・ キンポウゲ科クリスマスローズ属の耐寒性がある常緑の多年草。
・ 学名は「ヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger.L.)」。
・ 属名Helleborusの語源は、ギリシャ語で「殺す」を意味するHeleinと「食べ物」を意味するboraからなる。食べると危ない毒草であることを意味しており、根には強心剤・利尿剤の効果がある成分が含まれている。種小名のnigerは、「黒」を意味し、根が黒いことに由来する。
・ 英名でクリスマス・ローズ(Christmas-Rose)と呼ばれるのは、白花の原種「H.ニゲル」のこと。他にはウインターローズとも呼ばれる。和名は待雪草でスノードロップの和名も同じ。
・ ヘレボルスの原種の原産地は、ヨーロッパ、地中海沿岸、カスピ海沿岸、中国四川省までの北緯40~50度の地域に生育。原種は20種あり石灰質の土壌に生息する。
・ 「H.ニゲル」種は、イタリア、スロベニア、クロアチア、ドイツ、スイス、オーストリアなどのアルプス山脈の山麓の草原に自生する。基本的には高山植物と同じ。
・ 草丈15-20cmで、根元から手のような暗緑色の葉が生え、のこぎり状の切れ込みが縁にあり痛い。
・ 「H.ニゲル」の開花期は、クリスマスの頃12月下旬から4月で、2月頃が最盛期。日本では1―2月に開花する。花は下向きでなく横向きに開花するので結構目立つ。
・ 花茎は単一で先端に1~2輪のピンクの入った白い花をつける。花粉が落ちる頃には徐々にピンク・赤味が入る。
・ 花のように見える5枚の花弁は、花を保護する萼(がく)で、本来の花弁は退化して蜜を出す蜜腺となっている。
・ 葉は常緑・肉厚で全体的に丸みを帯びる。
・ 他の原種と異なり不思議なことに笣葉がない。
・ 受粉の仕組みは、先に雌しべが成熟しその後で雄しべが花粉を放出する。雌しべが受粉して種が出来るのが5月頃。
・ アルカリ性の土壌を好むので石灰を入れて酸性を中和する。また肥沃な土壌を好む。
・ 夏場は半日陰で育てる。
・ 「H.ニゲル」は過湿に弱く根ぐされしやすいので乾燥気味にし、乾いたらたっぷりと水をあげる。
・ 繁殖は株分けをする。種からの場合は発芽後1~2年後に開花。
・ 毒性があるので食しない。