モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

デンチゼラニウム(Pelargonium denticulatum 'Fern Leaf')の花

2014-05-21 21:18:52 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真)ペラルゴニウム・デンチクラートマ 'フアンリーフ' の花
 

“名は体を表す"とはよく言うが、ペラルゴニウム・デンチクラートマ‘ファンリーフ’(Pelargonium denticulatum 'Fern Leaf') は、“ギザギザ歯の葉をしたゼラニウム”“シダの葉のようなゼラニウム”“松の香りがするゼラニウム”というのが通称で使われていて、花が咲かないでも姿・形・香りを楽しめる一品だと思う。

原産地は南アフリカケープ地方で、今では絶滅の恐れがあるそうだが、春から初冬にかけてピンクの花を緑色の葉がまるでレースとなり、このレースの隙間越しに見ることが出来る。

採取者マッソン、命名者ジャカンにある疑問
南アフリカのケープからこの原種を1789年に英国に送ったのは、キュー王立植物園の公式プラントハンター第一号のフランシス・マッソン(Masson, Francis 1741-1805)で、二回目の南アフリカ探検の時だった。

そして、この植物に「Pelargonium denticulatum Jacq. 」という学名を1797年につけたのは、神聖ローマ帝国皇帝でマリーアントワーネットの父、フランツ一世の御用医者ジャカン(Jacquin ,Nikolaus Joseph von 1727-1817)だった。

ジャカンは、命名するに当たってPelargonium denticulatumをどこかで熟視しているか実物を手に入れてスケッチをしているはずだ。というのはジャカンが1797年に出版した「シェーンブルン宮殿の庭園にある珍しい植物の記述とイラスト」には、Pelargonium denticulatumの植物画が記載されている。(下の植物画)

(写真)Pelargonium denticulatumの植物画
 
(出典)Nicolao Josepho Jacquin著 「Plantarum rariorum horti caesarei Schoenbrunnensis descriptiones et icones, vol. 2: t. 135. 1797.(シェーンブルン宮殿の庭園にある珍しい植物の記述とイラスト)」

ウィーンのシェーンブルン宮殿の庭園には確かにこのペラルゴニウムが存在していたようだが、ジャカンはこれを描いた痕跡がないという。
上図のような見事な絵をジャカンは描かせているが、何処の花を見て描いているのだろうか?

キュー王立植物園にはマッソンが南アフリカから送った実物が1821年までは確実に生育していたということを1822年に「Geraniaceae 2」を発表した英国の植物学者で園芸家のスイート(Sweet, Robert 1783-1835)が証言している。ということは、キュー王立植物園のペラルゴニウムを見て描いたのかもわからないが、これも証拠がないそうだ。

スイートは、キュー王立植物園の貴重な植物を横流しして不当な収入を得ていたとして告発された人物である。
現代風に言えば、膨大な費用をかけて宇宙探検をして手に入れた火星の土、月の石などの資源を横流しするのに近いのかもしれない。スイートは無実であったが、この頃、南アフリカなどから手に入れた貴重な植物を横流しすることが常態化していたのだろう。

一方でマッソンにもキュー以外のスポンサーを内緒で持っていたというダブルスポンサー疑惑がある。モーツアルトのパトロンでもあった裕福なジャカンはマッソンの秘密のスポンサーだったのだろうか?
であるならば、ジャカンが描いたペラルゴニウムの出処がわかりやすい。

いつの時代でも富とか地位とかセンスとかを本人に代わって表現してくれる“モノ”が求められてきた。大航海時代以降は新世界の珍しい花卉植物もこの仲間入りをし、プラントハンター、ナーサリー(圃育園)などの新職業が登場し、食糧・薬草・香辛料・建材・燃料など経済的に有用という尺度だけでなく、観賞価値(美しい、珍しい)でのビジネスが誕生した。これが今日での園芸につながっているのだが、マッソン、ジャカンが活躍していた18世紀末は、王侯・貴族・僧侶など裕福な階層の庭園の花形として贅を競っていて、美術品などでの盗難品を隠し持つ誰も持っていない一点物を求める欲望が、最前線のプラントハンター、ナーサリーを蔽っていたのだろう。

ヒノキに似た葉
しかし、この葉の形を良く見るとどこか懐かしく、山里の林が目に浮かぶ。そこには杉やヒノキ、どんぐりの実がなるコナラ・クヌギ、ブナなどが生えているが、ヒノキの葉の形を思い浮かべる。
日本人がこの植物に名前をつけるなら、“ヒノキの葉”のようなゼラニウムという名前が使われたのではないだろうか?

(写真)ヒノキ Retinispora obtusa Sieb. et Zucc.
 
出典:京都大学シーボルト&ツッカリーニ「日本植物誌」

ヒノキは日本原産であり江戸時代までは多くの植物は国外持ち出し禁止となっていたので、この当時のヨーロッパではあまり知られていなかった。

このヒノキをヨーロッパに紹介したのは、オランダ出島商館の医師シーボルト(Siebold, Philipp Franz (Balthasar) von 1796-1866)及び、横須賀製鉄所の医師として来日したフランス人のサバティエ(Savatier, Paul Amedée Ludovic 1830-1891)が1800年に日本で採取しヨーロッパに持っていったとなっている。しかし、シーボルトが来日したのは1823年~1828年なので1800年採取という時期はこれは無理だろう。またサバティエの場合は、1866年から1871年まで日本に滞在したのでこれもおかしい。
シーボルトがオランダに戻りツッカリーニと共に「日本植物誌」を出版したのが1835~1870年で、その中で1847年にヒノキの学名がChamaecyparis obtusa Sieb. & Zucc.として紹介され、これが学名として認められた。
50年前にPelargonium denticulatum(のこぎりの歯)と命名されていたので『ヒノキに似た葉を持つペラルゴニウム』という名前は付けられない。

(写真)Pelargonium denticulatumの立ち姿
 

ペラルゴニウム・デンチクラートマ 'ファンリーフ'
・フウロソウ科ペラルゴニウム属の耐寒性が弱い多年草。
・原産地は南アフリカケープ地方南西部の湿った地域で、現在では絶滅の恐れがあり希少性でレッドリストに載っている。
・学名はPelargonium denticulatum 'Fern Leaf' で 種小名のdenticulatumは鋸歯(きょし=ノコギリの歯のような切れ込みがある)を意味し、園芸品種名の'Fern Leaf'はシダの葉を意味する。
・英名では、葉の形からtoothed-leaved pelargonium(歯状の)、fern-leaf geranium(シダの葉)、葉からの香りからpine-scented geranium。日本の流通名ではデンチ・ゼラニウム、デンタータ・ゼラニウムで流通し、ギザギザした葉の形状が歯に似ている様子を名前としている。
・開花期は3月下旬か11月でピンクの小花を咲かせる。
・草丈100㎝、葉からは松の葉の香りがする。
・水はけの良い肥沃な土壌を好み、夏場には風通しの良い半日陰で育てると良い。
・3年ぐらいで株が老化するので、梅雨時にさし芽を作るか、花が咲き終わる夏場に株をカットする。

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スノーフレーク・ゼラニウム(Pelargonium graveolens 'Snowflake')の花

2014-05-06 06:11:21 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真)Pelargonium graveolens 'Snowflake'の花
 
日本での流通名のスノーフレークゼラニウム(学名:Pelargonium graveolens 'Snowflake'、ペラルゴニウム・グラビオレンス"スノーフレーク")は、香りゼラニウムの仲間であり葉に特色がある。
明るい緑色の大き目の葉からはローズの香りがし、3月頃まではその葉に白い斑が入っていた。

この白い斑入りを雪の結晶が葉に舞い落ちた様と見て"スノーフレーク"(雪片、せっぺん)と名付けたようだが、陽の光が強い四月ともなると淡雪が溶けるがごとく消えてしまった。ここまでを含めて"スノーフレーク"と名付けたとしたら素晴らしいセンスだ。

ピンクの花はちょっと大きめで、全体の姿としてはバランスが取れていて美しい。

スノーフレークの親に当たるPelargonium graveolensは、バラの香りがするのでローズゼラニウムとも呼ばれ、葉・茎を蒸留して精油を精製するのに使われる。
特に、アフリカ東岸にあるマダガスカル島からさらに東方のインド洋上に浮かぶ火山島レユニオン島(旧、ブルボン島)は高品質な精油が取れるので知られており、この精油をゼラニウム・ブルボンと呼ばれている。

このフランスの海外にある県レユニオン島は、現在の我々が享受しているコーヒー、バラ及びローズゼラニウムで重要な品種を産出している。
外界から隔離された島という環境が限りなく原種に近いコーヒーのブルボン種を守り育て、余計な品種が入ってこなかったがゆえに近代のバラ、ティーローズの一方の親となるブルボン・ローズという自然交配種を生み出し、原種に近いローズゼラニウムがあったところとして知られている。

外界からの新規参入がなく進化もせず古色蒼然としているものを“ガラパゴス化”といっているようであり、日本独特の規格である携帯電話もガラケイ(ガラパゴス携帯)などと呼ばれている。
しかし、植物の世界では、原種及び原種に近いものが生き残っている価値ある状況が考えられるので、マダガスカル島、レユニオン島など実に素晴らしい。

(写真)Pelargonium graveolens 'Snowflake'の立ち姿
 

スノーフレーク・ゼラニウム
・フウロソウ科ペラルゴニウム属の耐寒性が弱い多年草
・学名は、Pelargonium graveolens 'Snowflake'。南アフリカ原産のPelargonium graveolensの園芸品種。
・チョコレートミントゼラニウムと同じように、葉に白い斑入(ふいり)になるところからSnowflake(雪片)と命名された。
・しかし、葉に不規則に入る斑は消えてしまった。夏時期の強い日差しに当たると薄くなったり場合によっては完全に消えてしまい、夏のあと日差しが弱くなってから新たに伸びた葉には斑が出来るという。
・大きく丸く広がった明るい緑色の葉からはローズの香りがする。
・開花期は春から夏で明るい緑の大きな葉に似合うピンクのやさしい花が咲く。
・草丈30~60cm
・枝の老化を防ぐために、開花後の初夏から秋に収穫を兼ねて剪定を行い、地面から5~10cm残して切る。

【付録】江戸時代から珍重されるようになった斑入り(ふいり)
淡雪のように溶ける“斑入り”というのが気になったが、本来は緑であるところが、突然変異で変色する現象を“斑入り”と呼んでいる。病気や害虫で変色することもあるが、これで出来た白斑などを斑入りとは呼ばない。

園芸的には、突然変異で出来た新しい品種の誕生であり珍重されているが、この価値を見つけたのは江戸の園芸マニアだったようだ。当時のヨーロッパだけでなく現代でも斑入りを気持ち悪いと感じる人がいるだろうから、相当なマニアックな審美眼だったのだろう。

江戸時代は日本の園芸が発達し、世界最高水準ではないかといわれているが、珍しい品種としての“斑入り”は特に珍重され、1829年(文政12年)には江戸四谷大木戸住まいで五百石を拝領した旗本、水野 忠暁(みずのただとし、1767-1834)が自ら集め栽培していた斑入り植物1000種を解説する植物図鑑「草木錦葉集」を出版した。

この図鑑の植物画を描いたのが関根雲停(せきね うんてい、1804-81877)で、ボタニカルアートとしても素晴らしいので、シーボルトの日本植物誌にも含まれているカノコユリを例示しておく。

(ポストカード)関根雲停作 スカシユリ
 
出典:牧野ミュージアムショップ


(写真)シーボルトがヨーロッパに持って言ったギボウシ(Hosta undulata)
 

水野忠暁が活躍していた頃の1823年に長崎出島オランダ商館の医者としてシーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold, 1796 - 1866)が来日した。
シーボルトは多くの日本の植物をヨーロッパに紹介したが、その中に斑入りの植物も入っていてヨーロッパでも注目され栽培されるようになったという。

鎖国でガラパゴス化していた江戸の園芸はいつか正面から取り上げてみたいと思っているが、ここまでたどり着くだろうか・・・・・。

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ロバースレモンローズゼラニウム(Pelargonium 'Rober's Lemon Rose’)の花

2014-04-18 07:58:07 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真)Pelargonium 'Rober's Lemon Rose’の花
 

ローズゼラニウム(Pelargonium graveolens)の園芸品種ロバースレモンローズゼラニウム(Pelargonium graveolens Group 'Rober's Lemon Rose’)は、肉厚のグレーが入った緑の切れ込みがある葉に特色があり、レモンローズのスパイシーな香りがする。形としてはトマトの葉に良く似ていて料理に使うことが出来るという。
花はピンクで、夏場を風通しの良い半日陰で過ごさせると四季咲き性を発揮する。

この'Rober's Lemon Rose’の由来は、1940年代にカリフォルニアのErnest Roberが作出したので'Rober's Lemon Rose’と呼ばれ、南アフリカ原産のローズゼラニウムと呼ばれるPelargonium graveolensと、ペッパーミントゼラニウムと呼ばれるPelargonium tomentosumのハイブリッドとも言われる。

ローズゼラニウムは、香水の原料として使用されているほどいい香りがするが、ロバースレモンローズゼラニウムの香りは刺激が強く良くない。窓辺において蚊の忌避剤的な使い方が似合いそうだ。
(写真)Pelargonium graveolens
 
(出典)commons.wikimedia

原種であるローズゼラニウムを南アフリカで採取したのはフランスの植物学者で、属名+種小名の二つで植物名を記述するリンネの二名法の熱心な支持者だったアントワン・ゴウアン(Antoine Gouan 1733-1821)といわれる。

(写真)トマトの葉に良く似ているロバースレモンローズゼラニウム
 

ロバースレモンローズゼラニウム
・フウロソウ(ゲラニウム)科ペラルゴニウム属の耐寒性が弱い多年草
・学名:Pelargonium Graveolens Group 'Rober's Lemon Rose’
・南アフリカ原種のPelargonium graveolens L'Her.の園芸品種
・1940年代にカリフォルニアのErnest Roberが作出したので、'Rober's Lemon Rose’と呼ばれる。
・草丈40~60cm 幅:40cm程度で、切れ込みが強い緑の葉は、トマトの葉と良く似ている。
・日当たりが良く水はけの良い土壌。夏場は風通しの良い半日陰で育てる。
・花色はピンク、パープルで四季咲き性。

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チョコレートミントゼラニウムの花

2014-03-30 20:56:53 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真)Pelargonium tomentosum 'Chocolate-mint'の花
 
チョコレートミントゼラニウムは、チョコレートミントの香りがするペラルゴニウムではなく、ミントの香りがし、且つ、グリーンのベルベットのような手触りの葉にチョコレート色の斑が入るのでこのような名前がつけられた。
花は、上2枚、下3枚の淡いピンクの花弁で、暖かい春風に誘い出されてちょっと早めだが咲き始めた。

この花は、南アフリカ・ケープ地方の半日陰で湿った川岸などで生育するPelargonium tomentosumの園芸品種で、原種の花色は白、葉にはチョコレート色の斑模様がないが、ミント系の香りがするのが両者に共通している。

(写真)Pelargonium tomentosum
 
(出典)Plants For A Future

原種Pelargonium tomentosumを南アフリカ・北ケープ地方で採取したのは、ドイツから1826年に南アメリカ・ケープに来た Drege、Johann Franz(ドレージュ、ヨハン・フランツ1794-1881)で、1826年から1834年にヨーロッパに戻るまでに、南アフリカの植物を多数採取し、これを正確に記述したプラントハンターとして知られているという。

ドレージュの残した地理情報をGoogle Earthに入力すると、北ケープ地方の黄色のピンが刺されたところでPelargonium tomentosumを採取したことがわかる。


(写真)チョコレート色の斑入り葉


チョコレートミントゼラニウムの特徴
・ペラルゴニウム属の耐寒性が弱い多年草。冬場は軒下か室内に。
・学名は、Pelargonium tomentosum 'Chocolate-mint' 。英名はPeppermint-Scented Geranium、日本での園芸品種名がチョコレートミントゼラニウム。
・南アフリカケープ地方が原産地のPelargonium tomentosumの園芸品種。原種のペラルゴニウム・トメントスームは、南アフリカ、ケープ地方の川筋の半日陰の湿った所で成育し、葉からはペパーミントの香りがするハーブ。
・草丈40-60cmで、横にも同じぐらい以上で広がる。
・開花期は春から晩秋と長く、淡いピンクの小花が咲く。
・葉は明るい緑色の切れ込みがありチョコレート色の斑入りという特色がある。
・葉からはミントの香りがするので寄せ植えするとこの香りが楽しめる。
・日当たりが良く風通しが良く、水はけの良い土壌を好む。

・Pelargonium tomentosumの採取者:Drège、Johann Franz(ドレージュ、ヨハン・フランツ1794-1881)
・Pelargonium tomentosum の命名者:Jacquin, Nicolaus(Nicolaas) Joseph von (1727-1817)
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ペラルゴニウム・エンジェルアイズの花

2014-03-16 07:39:14 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真)ペラルゴニウム・エンジェルアイズ
 

花が少ない時期には、このぐらいインパクトが強い花が室内を明るくする、と思いペラルゴニウム・エンジェルアイズ(Pelargonium 'Angel Eyes ')を購入した。通常は種か苗を購入し、育てるのが楽しみなのだが、時間がないのでショートカットで満開の花卉を購入してしまった。

エンジェルアイズの花びらサイズは2cm程度で、外側が薄いピンク、中が濃いピンクのバイカラー。鉢一杯にこの小さな花が咲き、センティド・ゼラニウムのような濃い目の端がチリチリした緑の葉があでやかなピンクの色を支えている。
ペラルゴニウムは一季咲きだが、このエンジェルアイズは四季咲きに改良されているので11月頃まで楽しめるという。

値段は3000~4000円で、冬場の花卉としてシクラメン、クリスマスローズなどと同程度のランクに属し、ペラルゴニウムが冬場の花卉の仲間入りになったみたいだ。

このエンジェルアイズは、ドイツ、ドレスデンにあるPAC Elsner という会社が開発した商品で、PACというロゴマークが鉢に添付され、国際的に商標登録されたブランドとして確立しているという。
このPAC Elsnerの簡単な歴史を見ると、1889年にWilhelm Elsner I世によってドイツ、ドレスデンに設立された会社で、最初はジャガイモ・野菜・バラを栽培していたが、1923年からはペラルゴニウムの育種が始まる。1964年に制定した商標マークPACは、力を入れているPelargoniums, Anthuriums and Chrysanthemumsを意味し、国際的な花卉(=観賞用の草花)の育種に重点をかけるようになる。

最初の“P”ペラルゴニウム(Pelargonium)は後述するとして、二番目の“A”、アンスリウム(Anthurium)は熱帯アメリカ原産のサトイモ科の一つの属で、和名ではベニウチワ属と呼ばれ花と見間違う団扇のような苞(ホウ)と葉を楽しむ観葉植物としてこれからもっと人気が出てくるだろう。
(写真)Anthuriumアンスリウム
 

三番目の“C”、クリスアンセモンマ(Chrysanthemum)はキクを意味する。
キクの原産地は中国ではないかといわれており、中国のキクが西欧に渡ったのは1789年であり、日本のキクはイギリスのプラントハンター、フォーチュン(R.Fortune 1812-1880)が1860年及び1861年に来日し、キクの品種を大量に集めロンドンに送り、ここから西欧でのキクの人気が高まり、今ではバラ・カーネーションと並び世界三大花卉のひとつとなっている。
キクに関してはこちらを参照

PAC Elsnerはゼラニウム、ペラルゴニウムに早くから取り組み、今ではこの専門育種園として世界的に高評価がされているようだ。

このゼラニウム、ペラルゴニウムはちょっとややっこしい。この原因を作ったのがイギリス・キュー植物園の公式プラントハンター第一号、フランシス・マッソン(Francis Masson 1741-1805)だ。マッソンは南アフリカ喜望峰に二回派遣されて行っている。第一回は1772-1774年、第二回は1785-1795年で合わせて102種のゼラニウムを採取しロンドンに送った。

そして、あまりにも大量のゼラニウムが送られてきたので、南アフリカ原産のゼラニウムを独立させてペラルゴニウムという新しい属にしたのがフランスのアマチュア植物学者レリチェール(L'H ritier de Brutelle 1746~1800)だった。

通常は四季咲きはゼラニウム、一季咲きはペラルゴニウムという栽培上の特色があったが、PAC Elsnerは、この区分けをもあいまいにする四季咲きのペラルゴニウムを作ってしまった。

(写真)ペラルゴニウム・エンジェルアイズの立ち姿
 
ペラルゴニウム・エンジェルアイズ
・フウロソウ科ペラルゴニウム属の耐寒性がない多年草
・学名:Pelargonium 'Angel Eyes '
・原産地は南アフリカだがドイツ、ドレスデンのPAC Elsnerで作出された園芸品種
・3月から11月まで開花する四季咲き性
・草丈は20~40cmで、横から見るのが美しい。ハンギングなどにも向く。
・土が乾いたら葉・花にはかけないで根元からたっぷり水をやる。
・気温10℃以下になったら室内に取り込む。
・花が咲き終わったら、梅雨前に全体を軽く切り戻す。晩秋に全体を3分の1に切り戻す。

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ペラルゴニウム・シドイデスの花

2009-07-16 08:48:12 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真)ペラルゴニウム・シドイデスの花


この花は、ブログ仲間の方からいただいた。

ロゼット状に根だした灰緑色の葉、そこから伸びる長い花穂、その先にいくつかのつぼみがついていて、2cm程度の濃い紫色の小花が咲いた。
写真を撮ろうと思ったら風に吹かれて散ってしまっていたので、室内に取り込み風に当てないようにして育てている。

原産地は南アフリカのケープ地方での原種系のペラルゴニウムであり、園芸品種のように人の手が入っていない味わい深いところがある。

砂岩の多い草原で乾燥した乾いた空気のところが自生地のようであり、日本の夏の高温多湿には弱いところがあるので、夏場は風通しの良い半日陰で育てた方が良さそうだ。ということは、地植えよりも鉢植えの方が適している。

この原種の発見者はわかっていないが、命名されたのが1824年であり、キュー王立植物園のプラントハンター第一号、フランシス・マッソン(Francis Masson1741-1805)がロンドンにもたらした多数の南アフリカ原産のゼラニウム(後にペラルゴニウムに属名を変更)の中には入っていなかったのかもわからない。

この「ペラルゴニウム・シドイデス」のユニークなところは、南アフリカの原住民ズール族が扁桃腺、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症の薬草として使われてきたというところにあるという。

この効果の再発見は、1920年代にイギリス人のチャールズ・スティーブンズ(Charles Stevens)によってなされた。彼自身がわずらっていた結核が、原住民の療法士からもらったこの植物の根だし汁で完治したという。

新型インフルエンザのワクチンが話題になるが、「ペラルゴニウム・シドイデス」もその薬効としてインフルエンザ対策に役に立ちそうであり、また脚光を浴びているようだ。

(写真)「ペラルゴニウム・シドイデス」の立ち姿
        

ペラルゴニウム・シドイデス
・フウロソウ科ペラルゴニウム属の半耐寒性多年草
・学名:Pelargonium sidoides DC. 。属名のペラルゴニウムは“コウノトリ”を意味する。種小名のシドイデスは、Sida rhombifolia(和名キンゴジカ、金午時花)の葉に似るので名付けられたというが、似ているとは言いがたいので疑問が残る。
・南アフリカに自生する原種系のペラルゴニウムの1種。石の多い砂地の草原に自生する。
・草丈30-50cmで、根元からロゼット上に灰緑色の葉が伸び、長い花穂とあいまって美しいコウノトリの姿を形作る。
・開花期4-8月で、濃紫色の小花を咲かせる
・日当たりの良いところで乾燥気味に育てるが、夏場は半日陰で育てる。


命名者DC.
スイスの植物学者ドゥ・カンドル(Candolle, Augustin Pyramus de 1778-1841)であり、彼に関しては、「ノアザミ」のところで記載したので参考にされたい。

この品種の命名者になったのは、若かりし頃パリで『ゼラニュウム論』を書き南アフリカのゼラニュウムを“ペラルゴニウム”に代えたレリチェール(L'H ritier de Brutelle 1746~1800)と親友であったことも影響していよう。

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シェルブラントローズ・ゼラニュウム(Shrubland rose Geranium)の花

2009-05-17 07:55:14 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真) シェルブラントローズ・ゼラニュウムの花


雨の日は、目が覚めるような鮮烈な赤も似合う。

「ローズセンテッドゼラニウム(Rose-scented Geranium)」の園芸品種で、潅木のように茂るので「シェルブラントローズ・ゼラニュウム」と名付けられたのだろう。

確かに、葉とその茂り方は決して美しくない。
葉はくすんだ緑色となり、スモッグに汚染されたような汚れを感じさせる。しかし、頭上に抱く花は2-3cmと大きく、鮮烈な赤でいかなる光にも負けない強さがある。

大株になるようだが、鉢植えで育てているので、開花後か秋に強剪定をして丈をつけるようにしている。水遣りは乾いたらたっぷりと与え乾燥気味に育てる。そして何よりも太陽が大好きなので冬場でも陽に当てるようにする。

ただし、梅雨の雨、夏の直射日光には弱いのでこれらを避ける場所に移動させる。ということなので鉢植えが適している。

「ローズセンテッドゼラニウム」の由来
この「ローズセンテッドゼラニウム」の原種は、南アフリカケープ地方で採取されイギリスのキュー王立植物園に送られ、そこの責任者であったエイトン(Aiton, William 1731-1793)によって1789年にPelargonium capitatumと命名された。

フランシス・マッソンが南アフリカケープタウンで第一回目の採取活動をしたのが1772―1775年であり、このときに採取してイギリスに送った植物サンプルに入っていた可能性が高い。これらのサンプルを見てエイトンが命名したのだろう。

そして、「ローズセンテッドゼラニウム」の園芸品種の元祖は、1989年にフランスの海外県の一つであるレユニオン島に育っていたという。レユニオン島は不思議な島で、近代のバラの元祖のひとつでもある「ブルボンローズ」も、そして「コーヒー」でも元祖となる幻のコーヒーがあるという。
フランスの園芸は一日にして出来上がったわけではないことが良くわかる。

(写真)  シェルブラントローズ・ゼラニュウムの葉と花
        

シェルブラントローズ・ゼラニュウム(Shrubland rose Geranium)
・フウロソウ科ペラルゴニウム属の耐寒性がない多年草
・学名は、Pelargonium capitatum. Aiton 'Shrubland Rose' 。英名は、ローズセンテッドゼラニウム(Rose-scented Geranium)の園芸品種‘シェルブラント’。
・原産地は南アフリカ、ケープ地方。
・日当たりの良いところ。夏場は涼しいところ。冬場は、耐寒性がないので、軒下か室内。
・乾燥気味で育て、乾いたらたっぷり水をあげる。梅雨の時期は雨のあたらない風通しの良いところで育てる。
・成長期の肥料切れに注意。
・開花期は、5月~初夏。センテッドゼラニウムにしては大型の真っ赤な花を咲かす。。
・葉はローズの芳香を放つ。
・花が終わった梅雨前または秋に10cm程度を残した強剪定をする。
・4~5年で株が老化するので春か秋に挿し木で増やす。

         

命名者 Aiton
ローズセンテッドゼラニウムは、1789年にエイトン(Aiton, William 1731-1793)によって命名されていて、フランシス・マッソンが南アフリカから採取した植物を送ったキュー王立植物園に送った相手がエイトンであり、採取者不明となっているが、マッソンが送ったものかもしれない。

最近のコレクター
Arsène, Gustave (Gerfroy) (1867-1938)
Nicolas, (Léon Marie Joseph) Gustave (1879-1955)
1911年メキシコの Pueblaにある 2160 mの高地でローズセンテッドゼラニウムを採取。
採取者は、フランスの修道士・植物学者でメキシコで活動したギュスターブ兄弟。メキシコにもあったという驚きがあるが、高地ではケープ同様な地中海性の気候環境があるところなのでなるほどと思う。

属名について
ゼラニウムという名前は1753年リンネによってフウロソウ科の1属としてつけられた属名。1787年にフランスの植物学者レリティエール(L'Héritier de Brutelle, Charles Louis 1746-1800)によって南アフリカ原産の品種とその園芸種であるゼラニウムはペラルゴニウム属に改められる。

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レモンローズ・ゼラニウム(scented geranium Lemon Rose)の花

2009-05-04 07:35:58 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
(写真) レモンローズ・ゼラニウムの葉と花


葉とその香りを愉しむセンテッド・ゼラニウム。

花が豊富な今日ではわかりにくい感覚でもあるが、暗く寒いヴィクトリア朝時代(1837-1901年)のイギリスでは、冬場の緑は貴重であり香りは豊かさを演出する。豊かな家庭では、ゼラニュウムをポットに植え暖を取れる室内・温室でその葉と香りを愉しんだ。だから数多くの園芸品か開発され、またたく間にヨーロッパに広まっていった。
豊かないまに感謝しつつもそぎ落とされたシンプルな魅力を持っているセンテッド・ゼラニウムは見失ってはいけないものを教えてくれる。

特に、レモンローズ・ゼラニウムは、明るい黄緑の葉からレモンのような香りがし、今年芽生えた枝の先に淡いピンクの1㎝程度の小花をつける。その花は、あまりにも小さいので葉に溶け込んで目立たないが、良く見ると控えめで清楚な美しさがある。

玄関先・窓際におくとその香りが漂い、いい一日が始まりまた明日が来る。時代は華やかになっていってもそこには基本である素朴さが残っている。

(写真) レモンローズ・ゼラニウムの葉と花
        

レモンローズゼラニウム(scented geranium Lemon Rose)
・フウロソウ科ベラルゴニューム属(和名テンジクアオイ)の耐寒性がない低木。
・学名はPelargonium graveolens'Rober's Lemon Rose'。
・英名はscented geranium Lemon Rose、和名がニオイゼラニウム、ニオイテンジクアオイ。
・センテッドゼラニウム、ニオイゼラニウムという名前は、250種ほどあるテンジクアオイ属のうち葉に芳香或いは刺激臭がある低木類の総称をいう。
・原産地はアフリカ南部。
・日当たりの良いところ。夏場は涼しいところ。冬場は、耐寒性がないので、軒下か室内。
・乾燥気味で育て、乾いたらたっぷり水をあげる。梅雨の時期は雨のあたらない風通しの良いところで育てる。
・成長期の肥料切れに注意。
・開花期は、5月~初夏。淡いピンク系の小花が咲く。
・葉はレモンの芳香を放つ。
・花が終わった梅雨前または秋に10cm程度を残した強剪定をする。
・4~5年で株が老化するので春か秋に挿し木で増やす。

ゼラニウムという名前は1753年リンネによってフウロソウ科の1属としてつけられた属名。1787年にフランスの植物学者レリティエール(L'Héritier de Brutelle, Charles Louis 1746-1800)によって南アフリカ原産の品種とその園芸種であるゼラニウムはペラルゴニウム属に改められる。
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ヘーゼルナッツゼラニウム(hazelnut geranium)の花

2009-04-07 08:06:23 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
センテッドゼラニウム或いはニオイゼラニウムと呼ばれる香り豊かなゼラニウムの開花の季節になった。四季咲き性がないので春だけの花だ。

(写真)ヘーゼルナッツゼラニウムの花


いつも一番に咲くのが、ヘーゼルナッツゼラニウム。

柔らかいうす黄緑の葉、ピンクの入った赤の花びら、そして、ヘーゼルナッツのような香りがするので、ヘーゼルナッツゼラニウムと呼ばれている。

花びらは、上に2枚、下に3枚の不整斉花で1cm程度の大きさ。
ゼラニュームは南アフリカが宝庫であり、陽射が強く乾燥した冷涼なところが適地となる。
夏場は、風通しの良い半日陰の方が株をいためない。

この南アフリカのゼラニウムを多数発見してヨーロッパにもたらしたのは、あのキュー植物園のプラントハンター、マッソンであることは言うまでもない。

ゼラニウムに関するショートストーリーは以下を参照してください。
その65:喜望峰⑪ 南アフリカからの贈り物 ゼラニウム物語 No1
その66:喜望峰⑫ 南アフリカからの贈り物 ゼラニウム物語 No2 -Final

(写真)ヘーゼルナッツゼラニウムの立ち姿
        

ヘーゼルナッツゼラニウム(hazelnut geranium)
・ フウロソウ科ペラルゴニウム属(和名テンジクアオイ)の耐寒性がない低木。
・学名はPelargonium × concolor Sweet。 英名はscented geranium hazelnut、和名がニオイゼラニウム、ニオイテンジクアオイ。
・センテッドゼラニウムは、250種ほどあるテンジクアオイ属のうち葉に芳香或いは刺激臭がある低木類の総称を言う。
・原産地は南アフリカ。
・日当たりの良いところ。夏場は涼しいところ。冬場は、耐寒性がないので、軒下か室内で管理。移動しやすい鉢植えが望ましい。
・乾燥気味で育て、乾いたらたっぷり水をあげる。梅雨の時期は雨のあたらない風通しの良いところで育てる。
・成長期の肥料切れに注意。
・開花期は、4月~初夏。鮮やかな赤系の小花が咲く。
・葉は、黄色が入った黄緑の葉で芳香を放つ。
・花が終わった梅雨前または秋に10cm程度を残した強剪定をする。
・4~5年で株が老化するので春か秋に挿し木で増やす。

命名者、ロバート・スイート(Sweet, Robert 1783-1835)は、英国の植物学者・園芸家・鳥類学者で、16歳からストックウエル、フルハム、チェルシーなどの庭師として働き、「英国の花園」など英国の庭で栽培する植物の本を執筆出版した。それらの本には、エドウィン・ドルトン・スミス(Edwin Dalton Smith 1800-1866頃)による美しいイラストが描かれているので知られている。

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ジンジャーゼラニュウムの花 と ゼラニュウムの小話④Final

2008-05-12 07:45:26 | ペラルゴニウム&ゼラニウム
「ゼラニュウム」を『ペラルゴニウム』に改名した男とその時代の物語

庭で育てているペラルゴニウム6番目で最後のジンジャーゼラニュウムの花が咲いた。
先に咲いたシナモンゼラニュウムに近い花色だが、
ピンクの色が薄く、花びらは1.5倍くらい大きい。

上の花びら2枚に描かれた濃い赤紫の網状の線は、
古代の洞窟に描かれた線画のようでもあり
携帯電話に表示される受信の記号のようでもあり
自然がつくるアートは素晴らしい。

(写真)ジンジャーゼラニュウムの花


『ペラゴニウム』は
1772年から南アフリカからイギリスのキューガーデンに大量のゼラニウムを
送ったのはフランシス・マッソン(Francis Masson1741-1805)で
ゼラニュウム小話①でふれたが、これが遠因で名前を変えることになった。

それまでは、ディオスコリデスが名付け、リンネが学名として採用した
“鶴を意味するゲラノス(geranos)”を語源とする“ゼラニュウム”であったが
南アフリカから入ってくるゼラニュウムが膨大なので、
新しい属名を作りペラルゴニウム(Pelargonium)と名づけた。

この属名を変えたのがレリティエール・ド・ブリュテル(L'Héritier de Brutelle, Charles Louis 1746-1800 )
フランスの裕福なアマチュア植物学者で判事だった。
アマチュアとプロの線引きは、職業としなかっただけだと思うが業績は十分にある。

レリティエールは、1787-1788年に『ゼラニュウム論』を書き
それまでのゼラニュウムを3つに分けて
南アフリカから入ってきたゼラニュウムをペラルゴニュウムに変更
それ以外のクレーンズビル(cranes bill)をゼラニュウム(ギリシャ語のgeranos鶴を語源)
高山植物をエロディウム(ギリシャ語のerodiosサギを語源)
とした。

ペラルゴニウムという名は、ギリシャ語のペラルゴス(pelargos)からきたものでコウノトリを意味する。

ツル・コウノトリ・サギと名前のつけ方はいい加減のようではあるが、
区別することが重要で、この区別が浸透していないというのも現実だ。
特に、園芸品種が多いためさらにわかりにくくなっている。

ペラルゴニウムの花の特色は、7本のおしべと上が2枚下が3枚の花びらで、
上2枚には網脈のようなしみがついていて春だけの一季咲きとなる。
ゼラニュウムの場合は、10本のおしべを持った整斉花で大部分が北半球の耐寒性がある植物からなる。

レリティエールは、フランス革命後も治安判事を務めていたが1800年に暗殺された。
原因はわかっていないが、彼のそれまでの業績とかかわっていたのだろう。

トピックスとしては、
レリティエールは、自分の著書の植物画を描く挿絵画家を探していて、
王立植物園博物館で絵画技師をしていた若き画家を発見し、この人間を育てた。

1789年に、友人から預かった植物標本をフランス革命の破壊から守るために
イギリスにこれをもっていった。
この時、若き画家も連れて行き銅版画技術を学ぶ機会を与えた。
絵から輪郭線を取り除く技術で、これにより上品なグラデーションが可能となった。
この若き画家は、あの官能的な美しい『バラ図譜』などを描いた
ピエール・ジョセフ・ルドゥーテ(Pierre-Joseph Redoute 1759-1840)であった。

ボタニカルアートの頂点でもある彼の絵は、レリティエールと出会ったことにより
科学的な植物解剖学の知識を教えられ、これを表現する技術をイギリスで学び
リアルを切り取る写真では表現できない官能的な美を生み出した。

しかし、レリティエールは、イギリスから帰国後投獄され釈放後に暗殺された。
友人の植物標本は、この採集に協力したスペインから権利を主張され返還請求があったが
これからも逃れるためにイギリスに持っていったことがかかわっていたのだろうか?

南アフリカからペラルゴニウムを大量に採取したプラントハンターのマッソンにしろ
暗殺されたレリティエールにしろ
“Catch the roots”は、命がけだった時代があったのだ。

命まではとられない今日、
命がけでやれる或いはやりたいコトを持っているのは素晴らしい。
“命がけでやれ!”とか“命をかけてやります!!”とか誰も言わなくなったが、
決して死語にはなっていないのだろう。

人類・地球の未来を創って来たのは、このような命をかけた人たちだった。
足を引っ張ってきたのもそうだが・・・・。

(写真)花と葉


ジンジャーゼラニュウム(Ginger Geranium)
・フウロソウ科ベラルゴニウム属(和名テンジクアオイ)の耐寒性がない低木。
・学名はPelargonium x nervosum ‘Ginger’。英名はGinger Geranium。
・原産地はアフリカ南部。
・日当たりの良いところ。夏場は涼しいところ。冬場は、耐寒性がないので、軒下か室内。
・乾燥気味で育て、乾いたらたっぷり水をあげる。梅雨の時期は雨のあたらない風通しの良いところで育てる。
・成長期の肥料切れに注意。
・開花期は、5月~初夏、ピンク系の小花が咲く。
・葉は縁にギザギザがありさらにウエーブが入っている。

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