メキシコのサルビアとプラントハンターの物語 No28
26. Salvia stolonifera Benth. (1840). サルビア・ストロニフェラ
(出典) Iris' Tuin
(出典)Robin’s Salvia
プリングルは、サルビア・ストロニフェラをメキシコ南西部のオアハカ州2500mのところで1894年6月23日に採取した。
このサルビア・ストロニフェラを最初に採取したのは、ロンドン園芸協会が1836年にメキシコに派遣したプラントハンター、ハートウェグ(Hartweg, Karl Theodor 1812-1871)であり、1837年にメキシコの南西部で発見し採取した。
学名の種小名“stolonifera”は、“匍匐し枝を生じる”という意味であり、草丈60㎝程度で匍匐性があり、直立の花序には濃い目のオレンジ色の美しい花が咲く。
ハートウェグは、珍しい花だけでなく、園芸的に価値のある花を採取した目利きだなと感心し、その後にプリングルなども採取しているが、園芸市場への導入はつい最近のようだ。耐寒性もあるので、日本に導入されれば人気となるサルビアだろう。
27. Salvia sessilifolia A. Gray ex S. Watson (1887) サルビア・セシリフォーリア
(出典) jstor plant sience
このサルビアを最初に発見したのは、パーマー(Palmer,Edward 1831-1911)であり、1886年2月にハリスコ州リオ・ブランコの峡谷の底で採取した。
プリングルは3年後の1889年2月に同じくハリスコ州グアダラハラでこのサルビアを採取している。
メキシコだけでなく、アフリカ東岸のインド洋上にあるマダガスカル島にも生息し、世界的に珍しい種のようだ。
ハーバード大学のグレー教授とグレー植物標本館の学芸員ワトソン(Watson, Sereno 1826-1892)が1887年に命名したが、学名として認められたのは、グレー達よりも早く1881年に発表した英国キュー植物園に勤務した植物学者ベーカー(Baker, John Gilbert 1834-1920)「Salvia sessilifolia Baker,(1881).」の方である。
ということまでしかわからない。
素晴らしいサルビアであるという紹介はあるが、チェックできた写真はわずかであり墨を塗ったように暗くて良くわからない。マダガスカルでは門外不出の植物であり、特定の植物園などでしか見られないようだ。
28. Salvia tehuacana Fernald (1905). サルビア・テワカナ
サルビア・テワカンを最初に採取したのはプリングルであり、1901年8月にメキシコシティの南東にあるプエブラ州テワカンの石灰質の丘で採取した。名前も採取したテワカンに由来してつけられている。
しかし、その後誰も採取していず、植物情報も皆無に近い。
メキシコの古代遺跡跡、テワカン・バレー
代わりに、プリングルが採取したテワカンは、メキシコ原産の植物の歴史を証明する面白いところで、アステカ時代の重要な食糧となっていたトウモロコシ、カボチャ、豆、アマランス、チアなどが出土した。アフリカが原産のひょうたんも出土しているので、古代ロマンの物語もありそうだ。
ひょうたんは不思議な植物だ。アフリカ原産で、耕作化されたのはアフリカとアジアの二つの流れがあるそうだが、テワカン・バレーで発見されたのはアジアに起源を持つものであり、モンゴロイドの大移動と共にアメリカ大陸に持ち込まれたのだろうか?
(地図)テワカン・バレーとオアハカ・バレー
(出典) PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)
(写真)テワカン・バレー風景
(出典) Photograph by WWF-Canon/Anthony B. RATH
テワカン(Tehuacan)市は、メキシコシティの南東、シェラマドレオリエンタル山脈のテワカン・バレーに位置し、1540年に建設されたメキシコでも古いスペインの植民都市だ。
このテワカン市があるテワカン・バレーは、写真のように乾燥した地域で、テキーラの原料ともなる品種があるAgave(アガベ、リュウゼツラン、竜舌蘭)、多肉植物のHechtia(ヘクチア)、サルビア、サボテンなどが生息し、その30%はここ固有の種といわれているほど貴重な植物が生息している植物相が豊かなところだという。
このテワカン・バレーには、紀元前9000年頃からの狩猟採集生活、紀元前1500年頃からの農耕生活の遺跡が発見され、そこからはメキシコ原産の植物の種などが出土した。半乾燥地のために遺跡の保存状態が良く、豊かな植物相のところでもあり、ここにある洞窟からメキシコ原産の植物が多数発見されている。
発見者は、アメリカの考古学者マクネイシ(MacNeish, Richard Stockton 1918 – 2001)で1960年代にトウモロコシの起源を探索する調査をテワカン・バレーで行い、コスカトラン洞窟(Coxcatlan Cave)から、トウモロコシ、カボチャ、いんげん豆、ウリ、ひょうたんなどを発見した。
世界三大穀物である小麦、米そしてトウモロコシはイネ科の植物であり、トウモロコシだけが祖先が良くわかっていない。メキシコ原産であることは間違いないようで、テワカン・バレーでの発見がこれを裏付けた。
アメリカ大陸に渡ったモンゴロイドは、文字を持たなかったがゆえに歴史には謎がある。アステカの四大食糧であるトウモロコシ、いんげん豆、アマランス、チア、それに、唐辛子、カボチャ、ココアなどメキシコ原産の重要な食糧になった植物の起源を後に整理しておきたいと思った。
26. Salvia stolonifera Benth. (1840). サルビア・ストロニフェラ
(出典) Iris' Tuin
(出典)Robin’s Salvia
プリングルは、サルビア・ストロニフェラをメキシコ南西部のオアハカ州2500mのところで1894年6月23日に採取した。
このサルビア・ストロニフェラを最初に採取したのは、ロンドン園芸協会が1836年にメキシコに派遣したプラントハンター、ハートウェグ(Hartweg, Karl Theodor 1812-1871)であり、1837年にメキシコの南西部で発見し採取した。
学名の種小名“stolonifera”は、“匍匐し枝を生じる”という意味であり、草丈60㎝程度で匍匐性があり、直立の花序には濃い目のオレンジ色の美しい花が咲く。
ハートウェグは、珍しい花だけでなく、園芸的に価値のある花を採取した目利きだなと感心し、その後にプリングルなども採取しているが、園芸市場への導入はつい最近のようだ。耐寒性もあるので、日本に導入されれば人気となるサルビアだろう。
27. Salvia sessilifolia A. Gray ex S. Watson (1887) サルビア・セシリフォーリア
(出典) jstor plant sience
このサルビアを最初に発見したのは、パーマー(Palmer,Edward 1831-1911)であり、1886年2月にハリスコ州リオ・ブランコの峡谷の底で採取した。
プリングルは3年後の1889年2月に同じくハリスコ州グアダラハラでこのサルビアを採取している。
メキシコだけでなく、アフリカ東岸のインド洋上にあるマダガスカル島にも生息し、世界的に珍しい種のようだ。
ハーバード大学のグレー教授とグレー植物標本館の学芸員ワトソン(Watson, Sereno 1826-1892)が1887年に命名したが、学名として認められたのは、グレー達よりも早く1881年に発表した英国キュー植物園に勤務した植物学者ベーカー(Baker, John Gilbert 1834-1920)「Salvia sessilifolia Baker,(1881).」の方である。
ということまでしかわからない。
素晴らしいサルビアであるという紹介はあるが、チェックできた写真はわずかであり墨を塗ったように暗くて良くわからない。マダガスカルでは門外不出の植物であり、特定の植物園などでしか見られないようだ。
28. Salvia tehuacana Fernald (1905). サルビア・テワカナ
サルビア・テワカンを最初に採取したのはプリングルであり、1901年8月にメキシコシティの南東にあるプエブラ州テワカンの石灰質の丘で採取した。名前も採取したテワカンに由来してつけられている。
しかし、その後誰も採取していず、植物情報も皆無に近い。
メキシコの古代遺跡跡、テワカン・バレー
代わりに、プリングルが採取したテワカンは、メキシコ原産の植物の歴史を証明する面白いところで、アステカ時代の重要な食糧となっていたトウモロコシ、カボチャ、豆、アマランス、チアなどが出土した。アフリカが原産のひょうたんも出土しているので、古代ロマンの物語もありそうだ。
ひょうたんは不思議な植物だ。アフリカ原産で、耕作化されたのはアフリカとアジアの二つの流れがあるそうだが、テワカン・バレーで発見されたのはアジアに起源を持つものであり、モンゴロイドの大移動と共にアメリカ大陸に持ち込まれたのだろうか?
(地図)テワカン・バレーとオアハカ・バレー
(出典) PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)
(写真)テワカン・バレー風景
(出典) Photograph by WWF-Canon/Anthony B. RATH
テワカン(Tehuacan)市は、メキシコシティの南東、シェラマドレオリエンタル山脈のテワカン・バレーに位置し、1540年に建設されたメキシコでも古いスペインの植民都市だ。
このテワカン市があるテワカン・バレーは、写真のように乾燥した地域で、テキーラの原料ともなる品種があるAgave(アガベ、リュウゼツラン、竜舌蘭)、多肉植物のHechtia(ヘクチア)、サルビア、サボテンなどが生息し、その30%はここ固有の種といわれているほど貴重な植物が生息している植物相が豊かなところだという。
このテワカン・バレーには、紀元前9000年頃からの狩猟採集生活、紀元前1500年頃からの農耕生活の遺跡が発見され、そこからはメキシコ原産の植物の種などが出土した。半乾燥地のために遺跡の保存状態が良く、豊かな植物相のところでもあり、ここにある洞窟からメキシコ原産の植物が多数発見されている。
発見者は、アメリカの考古学者マクネイシ(MacNeish, Richard Stockton 1918 – 2001)で1960年代にトウモロコシの起源を探索する調査をテワカン・バレーで行い、コスカトラン洞窟(Coxcatlan Cave)から、トウモロコシ、カボチャ、いんげん豆、ウリ、ひょうたんなどを発見した。
世界三大穀物である小麦、米そしてトウモロコシはイネ科の植物であり、トウモロコシだけが祖先が良くわかっていない。メキシコ原産であることは間違いないようで、テワカン・バレーでの発見がこれを裏付けた。
アメリカ大陸に渡ったモンゴロイドは、文字を持たなかったがゆえに歴史には謎がある。アステカの四大食糧であるトウモロコシ、いんげん豆、アマランス、チア、それに、唐辛子、カボチャ、ココアなどメキシコ原産の重要な食糧になった植物の起源を後に整理しておきたいと思った。