tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『アクト・オブ・キリング』

2014-05-15 22:17:24 | 映画-あ行
 裁かれる悪はどこなのか、観ている間中、焦点が合わなくて困った。

 虐殺者アンワルによる、自身の過去の相対化。次第にそれがあらわれてきて、それがこの映画の肝の一つなのは分かるけれど、それさえも吐き気を催す。どんな状況にせよ人間が崩れていくのを見て、心地よいわけがない。
 この映画をまだ観ていない人には、とりあえず観てと、言うしかないけど、ここには何かが決定的に欠けている。

 映画の意図に欠けているのか(わざと欠けさせているのか)、登場人物たちの精神や世界に欠けているから、結果として欠けているのか、よく分からない。とにかく目立つのは人為の俗悪さだけで、それが全編満ち満ちている。
 言ってみれば、天為や自然はどこへ行ったんだろうか。あるはずのものが(私はそう思うのだけど)ないので、あまりにもバランスに欠けて気持ちがわるいのだ。
 インドネシアの土地や、国を全く知らないので、何も言えない。


 観た翌日に、たまたまインドネシア経済の研究者に会ったので、この映画の話をしたところ、「インドネシアは何万という島で出来ているから、一つの国として見るのは誤りだ」と言われた(彼はこの映画は観ていない)。それでますます焦点が合わなくなった。


 ジョシュア・オッペンハイマー監督、共同監督クリスティン・シン、2012、デンマーク・ノルウェー・イギリス。