『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』、ギレルモ・デル・トロ、マーク・グスタフソン共同監督。2022年、116分、米。原題は、『Guillermo del Toro's Pinocchio』。
原作は、カルロ・コッローディ、『ピノッキオの冒険』(1883/伊)。
12月9日からNetflixで配信されているけど、遅ればせながら劇場で鑑賞。
ストーリー的にはとてもすっきりと、まとまっていたように感じた。
ピノッキオのストーリーは、時代に合わせて、また映画化される度に少しずつ改変されるが、こちらもギレルモ風のピノッキオ。
時代設定も第一次世界大戦頃に変更されている。
ギレルモ・デル・トロ監督と言えば、造形の妙が注目され、SFやホラーのイメージがある。こちらの作品も個々のキャラクターや世界観は独特で、少し気味悪くもあり、いわゆる「かわいい」キャラは出てこない。
ピノッキオさえも、洋服を着た「人間風」ではなくて、松の木目や裂け目もそのままの、いかにも「人形」といった造りだ。
ただこれが、大きな意味を持っているようだ。
丹精を込めて作られたのではなく、悲しみと怒りと絶望と、そして酒に朦朧としながら作られた、未完成の人形。
原作のようにピノッキオは「人間の男の子」になるのではなく、そのままで、ありのままで、愛情や友情、思いやりとともに生きて行く。
作中の誰しもが、「これが標準」という価値観を目指すのではなく、ある意味異形のまま生きて行く。「良い子」はいても、「普通の良い子」はいない。そんな世界観を表すのに、デル・トロ監督のピノッキオは最適役ではないだろうか。
怪奇な世界で、どストレートに愛を語る。「ダーク・ファンタジー」と言うと、観客を驚かす、また奇をてらうような印象もあるけど、これはそういう作品ではなかった。むしろ「驚かないで」と言い聞かせてくるのだった。
ラストシーンは最高だった。
好きなラストシーンのマイ・ベスト5に入るかも(ランクを付けていないので感覚ですが)。後味の良い映画って、やっぱりいいなあ。
第80回ゴールデングローブ賞最優秀長編アニメーション映画賞、第95回アカデミー賞最優秀長編アニメーション映画賞、受賞。
ちなみに2008年にデル・トロ監督が、「ダーク・ファンタジー化したピノッキオ」の企画を発表してから、約14年。
美しいストップモーション・アニメを作り上げてくれた、監督とスタッフの皆さん、そして出演者の皆さんに感謝です。表現された愛も素晴らしいけど、作り上げた愛と情熱にも感謝。
予告編 - Netflix
職人技の舞台裏 - Netflix
ピノッキオ役のグレゴリー・マン君の声がめちゃかわいい。↓透明感とはこのこと?
狂言回しのクリケット(コオロギ)役はユアン・マクレガー。↓
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