釋超空のうた (もと電子回路技術者による独断的感想)

文系とは無縁の、独断と偏見による感想と連想と迷想!!

及び釋超空のうたとは無縁の無駄話

16. 『風の音しづかになりぬ・・・』

2011-08-12 07:21:53 | 釋超空の短歌
『 風の音しづかになりぬ。
   夜のニ時に 起き出でゝ思ふ。 われは死なずよ 』
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永井荷風が亡くなったのは1959年4月30日だから私が高校生のときだった。
その日の朝だったか、通学の駅舎の前で友人から荷風の死を知らされたことを今でもよく憶えている。

私は永井荷風という作家に特に関心があったわけはないだが、その死にざまには関心というか気になるものがあった。

私は永井荷風の小説は「墨東綺譚」だけしか読んでいない。
(もともと私は小説なるものは、せいぜい十指程度しか読んでおらず、その中の一つがこの小説。)

この小説のストーリー自体は私の好みではなかっが、ただ、この小説の文章の凛としたところや、その文章の底にかいま見える諦観みたいなものには惹かれた。そのためか、この小説は何度か再読している。

この小説の最後の箇所は今でも私のお気に入りの一つとなっている。
引用しよう。
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『花の散るが如く、葉の落るが如く、わたくしには親しかった彼の人々は一人一人相次いで逝ってしまった。わたくしも亦彼の人々と同じやうに、その後を追ふべき時の既に甚だしくおそくないことを知ってゐる。晴れわたった今日の天気に、わたくしはかの人々の墓を掃きに行かう。落葉はわたくしの庭と同じやうに、かの人々の墓をも埋め尽つくしてゐるであらう。 (墨東綺譚) 』
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上記した釋超空のうたは、私には永井荷風の死を連想させる。