『 谷々に、家居ちりぼひ ひそけさよ。
山の木の間に息づく。 われは 』
***
以前に書いた早川考太郎によると、釋超空の民間伝承探訪の旅は無茶な冒険に近いものだったそうだ。
ときには、山道に行き暮れて野宿するようなことは度々あったらしい。
上記したうたは、もしかしたら、そのような野宿でのうたかも知ない。
大きな樹の下の草むらに野宿した作者は、真夜中ふと目覚める。
谷々の遠い向こうには月明かりで村の家々が三々五々と散らばって、かすかに見える。
蝋燭の灯だろうか、まだ人の起きているらしき家も少し明るく霞(かす)んで見える。
なんという「ひそけさ」だろう。
自分の息だけが意識にあがってくる。
まるで生きているのは自分だけのようだ。
だが、この深い山の他の生きものたちも、今の自分と同じように息づいているに違いない・・・作者の今や覚醒した意識は、その生きものたちの遠い気配を感じはじめた。
作者の、この鋭敏さは・・・人間というより、おそらく野生動物の鋭敏さに近いような気が私はする。
山の木の間に息づく。 われは 』
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以前に書いた早川考太郎によると、釋超空の民間伝承探訪の旅は無茶な冒険に近いものだったそうだ。
ときには、山道に行き暮れて野宿するようなことは度々あったらしい。
上記したうたは、もしかしたら、そのような野宿でのうたかも知ない。
大きな樹の下の草むらに野宿した作者は、真夜中ふと目覚める。
谷々の遠い向こうには月明かりで村の家々が三々五々と散らばって、かすかに見える。
蝋燭の灯だろうか、まだ人の起きているらしき家も少し明るく霞(かす)んで見える。
なんという「ひそけさ」だろう。
自分の息だけが意識にあがってくる。
まるで生きているのは自分だけのようだ。
だが、この深い山の他の生きものたちも、今の自分と同じように息づいているに違いない・・・作者の今や覚醒した意識は、その生きものたちの遠い気配を感じはじめた。
作者の、この鋭敏さは・・・人間というより、おそらく野生動物の鋭敏さに近いような気が私はする。