釋超空のうた (もと電子回路技術者による独断的感想)

文系とは無縁の、独断と偏見による感想と連想と迷想!!

及び釋超空のうたとは無縁の無駄話

20. 『山深くわれは来にけり・・・』

2011-08-16 07:00:32 | 釋超空の短歌
『山深く われは来にけり。 山深く木々のとよみは、音やみにけり 』
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このうたの「とよみ」とは響動、つまり「どよめき」のことだそうだ。

人里離れた山々は、なにかの霊が棲む霊的な存在であり、その山々の中の樹々の暗がりは、夏の真昼であっても、そこに立てば、山の秘かな霊を肌に感じ、冷気が背中を走り慄然とするような気がする。

(ここで、私は昔読んだ『鬼の研究』(馬場あき子著)を脈略なく思い出した。
そもそも鬼も山に澄む霊的存在らしい)

そのような鬼が何処かで、ひっそりと棲んでいそうな鬱蒼とした山に作者は来た。
真昼だというのに樹々の翳(かげ)で山道は暗い。

突然風が吹き、その樹々がどよめいた・・・と思ったら突然風はやみ、あたりは又もとの静寂にもどった。 その静寂は、以前の静けさよりも、より深く、より暗く感ぜられる。

高い樹々の上から、鬼が、山の霊が作者を凝視している。