釋超空のうた (もと電子回路技術者による独断的感想)

文系とは無縁の、独断と偏見による感想と連想と迷想!!

及び釋超空のうたとは無縁の無駄話

25. 『いふことのすこし残ると立ち戻り・・・』

2011-08-21 07:54:14 | 釋超空の短歌
『 いふことのすこし残ると 立ち戻り、
    寂しく笑みて、いにし人はも 』
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作者は何十年かぶりに友人に会った。
この懐かしい友とのひと時が過ぎ、別れぎわに友人が何か大事なことを伝えたかったらしい。

実は、作者とこの友人は今生では、もう二度と会うことはないかも知れないと二人は知っていた。
しかし、二人はそのことには何も話題にあげなかった。

別れぎわに友人は何を作者に伝えたかったのだろうか。
立ち戻った友人は、しかし『寂しく笑みて』結局なにも言わなかった。
そして作者も強いて問いもせず、友人をそのまま見送った。

***
私はこのうたに人生の機微を感じる。

この世で、人は他の人といろいろと語りあう。
しかし、人生におけるもっとも肝心なことは結局は語らない。
いや、語ることは不可能なのだ。その肝心なことを万言の言葉をもってしても他人に語ることはできないのが人生というものではないか。

この世を生きるということは、そういう意味で孤独であるといえる。

人は一人で生まれ、一人で死んでいく。
そして人は、結局、他人には決して理解できない「思い」をもって死んでいく。

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私はこの掲題のうたをよむとき以下の『供養塔』のうたの一つを連想する。

  『ひそかなる心をもりて、をはりけん。命のきはに言ふこともなく』

人は、「命のきは」でさえも、親であれ親友であれ子であれ、結局、誰にも『「なにも言ふ』ことのできない孤独な存在でもある・・・そう私は思う。