3日ほどきなこを見なかった。
今日H代さんを見送ってから
あ、ヨーグルトないなあ。と買いに行こうと車に乗った時
何となく左右をキョロキョロした。
どこにいるのかな
事故にでもあってないのか
台風怖かったのか
まさか迷子とかないよなあ。
ろくなこと考えない
うちのニャンコでもないのに何でだろ?
ヨーグルト買い車をガレージに入れて
もう暗くなった玄関先に行くと
そこにきなこが座っていて
私を見上げた。
「ばか。どこにいたのよ。」
ちょっとだけ泣きそうになった。
暗くなった時のきなこの目はまん丸で可愛かった。
「別に心配なんかしてないわよ。」
私は戸をピシャリと閉じて中に入った。
想いとは裏腹な行動をするもんだな。(笑)
戸を挟んできなこの影がそこにあった。
私はきなこに話した。
「素直な魂は得をするというけど」
「そこに真実があるのかどうかとか、そんなつまらんことだろ?」
「軽い言葉の裏に調子のいい企みとかね」
「無いといえば嘘になる。つまりね、何だよ。何かをお願いする、するとΕντάξει

ということだ」
「哲学的ねえ。つまりそういうことね。」
「そうだ。それでいいんだ。俺はそう想うよ」
きなこの影がこちらを向き直った。
私は手のひらを戸に当ててきなこの影に触れるようにしながら言った
「想ったより平常心だよ。」
「それでいいんだ」
「私はね、企みとかは向いてない」
「要らない。そんなものは山の狐や狸にくれてやればいい」
「いるの?」
「櫛来川の海の河口の辺りには狐の一族の縄張りがある」
「知らなかったなあ」
「近づくな。惑わされる。不要な感覚を覚えてしまう。そういうものとは距離を取れ。あやかしだ。本当のものだけ見ていればいい。」
「あやかし。」
「そう。あやかしだ。あやかしに踊らされるのは心に自信がないからだ。あんたはあんただよ」
きなこは今度は向こうを向いた。
きなこの背中の影が少し大きくなった。
「太陽が沈む時その赤い色は最大となる。太陽の形も大きく見えるものさ。実は同じものだ。騙されるな。」
「ふ~ん。そんなものなの?」
「心におそれがある時はちょっとした音にも敏感になり怖いものだろ?本当の大きさは違うものさ」
「うん。」
「ネコ族は騙さん。狐や狸達は真面目な顔をしてあやかしもするもんだ」
真面目な低い声できなこが話すから私は少し可笑しくなって
私はふふっと笑った。
そこできなこは
にゃ〜と一声鳴いた。
私は言った
「何も恐れもしない。私はそのまんまなのだから。それでいいと想うのよ」
きなこはもう何も言わなくなってた。
