同じ言葉を繰り返し繰り返し呟く老人がいて
毎日のようにそれを聞く女がいるとして
その呟きは過去の幻影から生まれたのか
自分を守るための呪文のようなものなのか
同じ言葉を繰り返し繰り返し呟く老人のそばからは
周りの親しい人たちはすでに去り
誰もいないのだ
なぐさみに時折物を持ち
柔らかな言葉や笑顔を持って尋ねてくれるほどである
いくら一人で逝く身とはいえさみしいものだと老人は言うが
少し離れたところに座る女はただ黙って頷いている
役にも立たぬ女は
呟きを聞き
ただ笑って頷く。
決して近しく寄せ付けなかったその女だけが呟きを聞いてくれるのを老人は情けなく想った
なぜこいつなのだ。と。
心を寄せた女(ひと)ではないのだ?
と、苦々しく想うのだった
逆にその女はすぐにでも去れるのである。
去らない理由もない。
ただ
呟きを聞く人もない老人が
しょっちゅう呟くので
去るタイミングを逃しているうちに
その絶妙な距離感のその場所に
女は居着いてしまっただけなのだ。
理由など別にない。
人生とは不思議なものだなあと女は想い空を見上げました。
別に何の利得もなくても
呟きを聴いていることが何となく落ち着くと想うようになっていた。
自分というものに個人的に何の価値も見出されなくとも
孤独になった人の呟きを聞くという
ただそれだけが
日々の糧となった。
西の岬の果てにある
不思議な場所で。
こんな不思議な物語浮かんだけど
どんな曲を入れるのだ?(笑)
困っちゃう。