草の中に住んでる
コロボックルみたいな小人。
うちの庭にもいるのです。きっと。
小人さん一人で今日は
葉っぱの伸びたのと伸びたのを結わえて
大きな葉っぱを下げて
ハンモック作ってた。
お昼寝用かなぁ?
彼は一人で
ブツブツ言ってました。
さみしいの?
ちょっと上目遣いして
時々笑うのですね。
コロボックルには親戚のコロボックルがいました。
たまにお手紙が届くんです。
え?郵便屋さん?
違うんですよ。
時々小鳥が加えてきたり
時々カエルが首に結わえて来たり。
彼は今日もお手紙を小鳥が加えてきたのを受け取りました。
ハンモック作りがうまく行かなくて
今日は暑かったからちょっとクタクタだった彼は
半分不機嫌にお手紙広げました。
お手紙には
本が大好きな彼のために
本を今度送るからねと書いてありました。
彼は暑いのもハンモックがうまく作れないのも忘れて
その場でくるくる回りました。
嬉しい❢
嬉しい❢
嬉しい❢
彼はなかなか本なんて持てません。
彼の小さな小屋の中には
彼の着る洋服も持ち物も少しだけ。
本は昔何処かでもらった古いものが少しだけ。
彼は今度
庭に張られた蜘蛛の巣の上に
色とりどりの葉を貼り付けて
自家製キャンバスを作るつもりでした。
花びらを集めて石の上でこすり
絵の具を作って
絵を描きたいと想ってた。
彼は遠くの国に行ったこともなく
乗り物や生き物もこの近くの出会うものしか知らないです。
本にはそんないろんな物が載ってるのだよとお手紙には書いてありました。。
コロボックルの彼は泣き顔になりました。
「一体この人生にこんな事があって、バチなど当たらないものなのだろうかなぁ。」
本当なのかな?どうなのかな?
小さな頃
本当にたまに小さな本を父親から買ってもらった思い出が数回ある彼は
その時に味わった喜びや興奮がまた蘇るのを覚えました。
わあ。すごいことだなあ。
彼はいろんな絵が描きたかった。
見たことのない世界の向こう側のいろんなお家や
花や
海の中のお魚たちや。
何てワクワクするのだろうか?
本当に本当のことでなくてもいいなあと彼は思いました
このお手紙でこの瞬間
とてもワクワクして嬉しくなった
その事だけでももう幸せだったからです。
彼はその小さなお手紙を
小さな木の枝の間に挟んで
雨などに濡れないように大きな葉を上からかけました。
今度本を一緒に見に行こう
そう書いてあったお手紙が時々涙でにじみました。
嬉しくて嬉しくて
本をもらうことより
自分のことを
そんな本を持ったら?と想ってもらえたことだけが
彼の幸せでした。
物を持つとか持たないとか
そんな事は二の次三の次。
大切なことは
彼のことを心のなかで思い出してもらえたことだったのでした。
彼は嬉しくて
作りかけのハンモックにぶら下がり
意味もなくゆらゆら揺れました。
泣きながら笑顔で
揺れておりました。
今夜はきっと星がきれいだよ。
小人の目はキラキラ輝いて
星空のもと
今夜はきっとゆっくり眠れるね。